言語化の構造化
言語化・構造化は良く必要なスキルと語られているにも関わらず、あまりやり方について言及されていることがないので、これを機会に言語化を構造化してみました。
5000文字の長文ですが、言語化に関して苦労している、営業だから言語化大事だけどノリで売ってきちゃってる、など、他にも言語化に興味があると言う方がいれば、是非ご覧いただけると幸いです。
普段はセールスイネーブルメントに関して言語化するようにしていますが、営業にも深く関わる話になります。
言語化とは?
まず、言語化とは?をChatGPTに聞くと下記のような回答が返ってきます。
その通りですね。コミュニケーションを主体として、抽象的なものや複雑なものを言語で表現して相手に伝える、ということだと思います。
そしてもちろん言語化にもレベルがあります。この言語化のレベルを構造化して分けてみました(一応ChatGPTにもやらせてみましたが、うまく出てきませんでした)
下記が私が考える言語化のレベル分けです。(他にももちろん構造化の仕方はあると思います)
言語化のレベル分け
レベル1 原始的言語化
これは、「ヤバい」や「すごい」などの抽象度の高い形容詞を用いた言語化です。もはや言語化の意味をなしていないレベルとも言えます。
「この曲ヤバくない?」「ヤバいヤバい!」など、同じ環境にいて文脈が共通した状態であれば、一定通じる部分はあれど、基本的に文脈を知らない人に伝達するレベルの言語化ではありません。
レベル2 形容的言語化
このラーメンはコクがあって美味しい、などの形容的な言語化です。ヤバい、よりは一定限定的な形容詞を使うことによって、相手の思考のベクトルをある程度限定できるので、共感を呼びやすい言語化になります。
ただし、説得力があるレベルかというと、レベル1や2で聞き手に「それいいね!私も食べてみたい」と行動変容を作るのは伝説的グルメレポーターくらいかもしれません。
レベル3 修飾的言語化
キングダムを好きな人は多いと思いますが、意外と「なんで?」と聞くと理由が返ってこないことが多いです。「ヤバいから」「面白いから」などでは好きな物でも語ることが出来ないですよね。
例えば、「キングダムって、史実にある程度基づいた中国のストーリーで、武将が国取りをする物語なんだけど、リーダーシップやマネジメントに関して使えるノウハウがたくさん描かれていてめちゃくちゃ面白いんだよね、例えば、趙が攻めてきた時の……」などと話を具体例や説明で修飾していくことで、一段上の言語化が出来ますが、LV3はそのレベルになります。
これだけの説明が出来ると、相手が何も知らなくてもイメージ出来るレベルになります。
レベル4 分析的言語化
レベル4はとても難しい領域ですが、構造化をした上での分析的な言語化になります。レベル3まではある程度誤魔化しが利きますが、4からは利きません。
例えばレベル3であれば、「このマグロは今朝4時に大将が築地から仕入れてきたマグロで新鮮で美味しい」など、修飾的に話をすれば良かったのですが、レベル4ではそもそもマグロが新鮮であるとなぜ美味しいのか、他の魚と比較した場合どうなのか、などの周辺の知識を要した言語化になってきます。
レベル4は構造化が不可欠です。では、構造化とはなんでしょうか?
つまり無秩序な情報を一定の要素分解をすることによって、比較したりすることです。
キングダムを言語化・構造化しよう、となった場合、例えば同じ土俵で、ワンピース要素を抜き出して比較することが構造化につながります。「フィクション/ノンフィクション」「登場人物の数」「リアリティ」「舞台となっている国」「ターゲット年齢」などなど、いくつも要素が出せると思います。
このような分析的情報を落とし込むと言語化のレベルが上がります。例えば「僕はワンピースよりもキングダムの方が好きです。理由は2つあって、一つ目は私はあまりに度が過ぎたフィクションは好きではないので、キングダムくらいある程度史実に基づいている方が没入感が出てより面白いと感じるからです。もう一つは、"THEジャンプ"という感じのメインキャラクターが絶対死なないというのはあまり好きではなく、生きるか死ぬかわからない状態で感情移入することで、臨場感を味わえる物語の方が好みなのでキングダムが好きです」など。
レベル4の言語化が出来ると営業もやりやすくなると思います。
言語化しやすいものとそうでないもの
上に言語化のレベル分けを書きましたが、対象によって言語化しやすいもの、そうでないものが存在します。
X軸に直感性を置き、Y軸にその物が持つ情報量の多さをプロットしています。
①左下 直感的で情報量少ない
ワインやラーメン、音楽などが挙げられます。この象限に来ているものは、そのもの自体が持つ情報量は少ないです。
例えば、赤ワイン一杯が持つ情報というのはそこまで多くないです。なので、上記のレベル2までの言語化はある程度可能です。(このワインめちゃくちゃ飲みやすくて美味しい!など)ただ、レベル3や4に行こうとすると、周辺としての情報、つまりワインに関してのドメイン知識が相当必要になります。
「このワインはラズベリーのような香りがするので、ブルゴーニュ地方のピノノワールですね。もしこのワインが好きであれば、赤身の牛肉が合うと思います。」(※ググっているだけでワインの知識あまりないので浅くてすみません)
音楽のライターさんもアルバム1枚で何万字も書きますが、大体レベル3と4を行き来して、他のバンドや曲との比較や思い出話などで埋め尽くされているケースが多いかと思います。
②左上 直感的で情報量が多い
例えば、小説や映画などが挙げられます。もちろん作品にはよってしまうのですが、村上春樹の小説を思い出していただくと、その小説自体の情報量がかなり多いので、それ自体を言語化する難易度はかなり上がるイメージがつくかと思います。
日本でいうと、国語の試験で試されているのはこの象限での言語化能力だったりします。他の情報(同じ時代の別の小説や文体など)を知っていると言語化しやすくなる傾向がありますが、なくてもいけるので、国語の問題として自己完結型での言語化を求められる形がワークしています。
③右下 非直感的で情報量が少ない
現代アートが典型例です。「石が置かれているだけ」、「棒が斜めに置いてある」などを言語化せよ、と言われてできる人はほとんどいないと思います。
現代アートこそ言語化するために周辺ナレッジがないとどうしようもないものだと思います。少なくともその作家の意図や歴史、想いなどは知っていないとだめでしょうし、出来れば周辺ナレッジまで充足していないと存分に言語化できないと思います。
https://note.com/tawara_mcc/n/nd865493cbd31
この非直感的なケースでは、レベル1や2は概ねスキップせざるを得ないケースが多いです。コンテキストが複雑すぎて、簡単な形容詞で表現できないことが多いためです。ビジネスと乖離が大きいので多くは割愛します。
④右上 非直感的で情報量が多い
政治やビジネスがここに来ます。「自民党ヤバい!」と言って「ヤバいよね!」となる人もあまり想像できないかと思いますが、複雑性によってレベル1と2はスキップした言語化がされることが多いかと思います。
ビジネスにおいても、一定の構造化が必要なので基本となる3Cなどのフレームワークや財務データなど構造化された指標によって語られることが多いかと思います。
エンタープライズセールスはこのレベルの言語化能力を求められることが多いです。顧客の課題を構造化して会話出来る能力は何よりのビジネススキルだと考えております。(※時に直感型で売り切る人もいるので必ずしも当てはまらないことがあります)
レベル3と4の作り方
レベルを上げた言語化のために可能な言語化の種類を列記します。
サマリーや説明
シンプルに起きた事象を要約するのも大きな力になります。起きた事件を明確に話が出来る、という能力はレベル3の大きな力になります。
例:円安に関してまとめて→
2023年に、日本円は大幅に下落し、数十年ぶりの安値を記録しました。この円安は、日本の低金利政策とアメリカの金利引き上げの対照的な政策が主な要因で、輸入コストの上昇により家計に負担がかかっています…
自身の経験や思い出
経験や思い出の話で修飾するのもレベル3の大事なスキルになります。
例:このとんこつラーメンめちゃくちゃ美味しいんだけど、去年の12月にフランスから来た友達と博多に行った時に、食べたラーメンとそっくりでさ…..
具体例
営業で言うと、事例の紹介がこれに当たりますね。エビデンスとも言えるレベル3用の大きな武器になります。
例:この機能を使うことによって、実際に12%工数削減につながると言う結果があります。具体的には、城北ネットワーク社での確認工数が….
比喩
比喩は一種の構造化なので、レベル4の言語化です。ワインで多用される方法ですね。「ベリー」「胡椒」「ねこのおしっこ」などなど色々な表現がされます。余談ですが、レベル4までいかないと実は記憶に定着しません。「ヤバいワイン」「おいしいワイン」だけでは次回に飲んだ時に脳内で区別ができないので一定構造化して記憶する必要があります。
構造化
レベル4の核とも言える手法です。上記にも記載したので詳細は割愛します。
営業として
実はレベル4にいかないとインサイトを与えることはできません。「このペンはめちゃくちゃ書きやすいです!実際に海外の友人にも試してもらったのですが、何よりも書きやすいという評判でした!」と言ってもなかなか買う気がしないと思います。
「鉛筆と比べても書きやすさは抜群ですが、正直、鉛筆の方が味が出るのでデッサンには向いています。一方で、金額がそこそこするのでビジネスパーソンとしての信頼は鉛筆よりこちらのペンの方が圧倒的に出ます。」など、明確なベネフィットを伝え、インサイトを与えられるのがレベル4の特徴です。
どう訓練すればいいか?
では、いったいどうやってレベル4の力をつけていくか、というところですが、これは練習と実践をし続けるしかないと思います。
要約
私も昔訓練しましたが、適当に難しい随筆などの本を買ってきて、章ごとに筆者が何を言いたいのかを要点として実際に本に書き込んでしまうというのを何十冊もやりました。このプロセスはとても役にたつプロセスだったと思います。
ロールプレイ
上記をやってもいいのですが、なかなかモチベーションが続かない方もいると思います。言語化が得意な人を見つけて、TOEFLのスピーキングで出るような問題を適当に出してもらって咄嗟に答える訓練も言語化の訓練になります。TOEFLでは「あなたが訪れた街で最も良かった街はどこですか?30秒考えて3分で説明しなさい」などの問題が出るので、咄嗟に上記を全て使って説明する技術が身に付きます。大体、そんな考えている内容ではないので、咄嗟に考えた適当なことも含めて話ができるようにはなります。
TOEFLのスコアメイクのために死ぬほどやりました。
好きなことを説明
実はこれが一番かもしれませんが、自分が好きな趣味、漫画でも、音楽でも、映画でも、好きな人と語り合うのが一番だと思います。本当に好き同士だとレベル4で殴り合うことになると思いますし、片方が知らない、コンテキストがずれている人同士でも、そもそも好きだけど言語化出来ていない、というケースも往々にしてあると思うので、アピールして自分の趣味に引き込む意味でも言語化をしてみるのはアリだと思います。
長文になってしまいましたが、言語化について書かさせていただきました。当社では、お客様の課題、営業とは、などあらゆることに対して言語化が好きな人たちが集まっています。もしご興味あればカジュアル面談でも是非お声掛けください!
https://amptalk.notion.site/4a1d80ebfbc845a188c2f694aa6b918b
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