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世界を歩きながら仕事する:移動を続けるデジタルノマド


先週は香港と深圳に行ってきました。日本に帰国した際の空港では、あまりにも荷物が少なすぎるということで税関検査場で止められてしまいましたが、今回の旅もとても刺激的で、学びのある時間になりました。
なんといっても10リットルのカバン1つで海外に行き、そのカバン以外は何も持たずに帰ってくる人間など、その日はおそらく僕以外いなかったと思いますので、さすがに止められても仕方ないかと思います。

世界一周に行った際も中身7キロのバックパック1つで世界を回りましたが、今回はその時よりもさらに荷物が小さく、少なくなっています。単純に荷物を減らすことで、移動がしやすい、フットワークが軽くなる、パッキングの手間がない、そしてLCCの荷物料金がかからないという多くのメリットがあり、これからさらに移動していくためにも、今よりもっと荷物を少なくしたいと思っています。

その世界一周から帰ってきて、もう数年が経ちますが、帰国後「世界中どこでも生きていけるようになりたい、そしてそうしなければならない」と強く実感しました。それ以降はいわゆる“デジタルノマド”のように、場所にとらわれずどこでも働ける人間になるために日々を過ごしてきました。まだまだ自分が思うライフスタイルには到底追いついておりませんが、コロナ禍以前の社会の常識ではなく、コロナ禍以降の社会の常識――いわゆるリモートワークを中心とし、出勤という概念を捨てて仕事をする生き方が、少しずつ形になってきたと実感しています。

そんなライフスタイルを多少なりとも送っていることもあり、平日・休日を問わず、仕事の都合(と予算)が合えばできる限り海外へ渡航するようにしています。なぜ僕が海外に行くかというと、単純に旅行が趣味で昔から旅をするのが好きだということもありますが、やはり日本以外の国の状況をこの目で確かめることがとても重要だと思っているからです。それは日本を客観的に、外から見ることでもあります。

日本はとても暮らしやすく、平和で安全で言葉も通じるので、生活に困ることはほとんどありません。そんな日本は個人的にも、また一般的に見ても世界で最も住みやすい国の一つだと思います。安くて美味しいご飯がどこでも食べられ、公共交通機関も整っていて治安も良い。本当に素晴らしいと思います。ですが、いつしかそのような便利さに身を置くことで、自分のサバイバル能力のようなものが失われていっているような実感も同時にあります。

もちろん現代の便利さを享受できているのは先人たちの知恵のおかげであり、この時代に生きていて本当によかったと思っています。何でもすぐに手に入り、どこでもご飯が食べられて、安全に雨風をしのいで暮らしていけるという現代は、人類史上かつてなかったことで、その点については感謝しきれないほどの思いがあります。ですが本来、人間はそのようにつくられてはいません。

現代病と言われるうつ病やがんなどは、便利なサービスや安価で食べられる食事の広がりから生まれたもので、そのような恩恵と引き換えに、自分の健康や本来の人間的な力を失ってしまっているのではないかと僕は思っています。私たちの祖先はこれまで約10万年の歴史のなかで移動を繰り返しながら生きてきました。1つの場所にとどまらず、自分たちの食べ物や生きられる安全地帯を日々探しながら暮らしてきたのです。そうした私たちには、移動を繰り返しながら生きていけるサバイバル能力が備わっており、同じ場所にずっと居続けるようにはできていません。

肥満や、遺伝が原因ではない糖尿病などの“現代病”と呼ばれる病気は、運動不足やカロリー摂取過多、さらにそのカロリー源となる食事が劣悪なものである場合など、便利さや美味しさと引き換えに自分を見失ってしまっている状態です。だからこそ、意識して本来の人間らしい姿に戻る必要があると僕は考えています。移動を繰り返し、自分に少しのストレスを与えながら日々を過ごす必要がある。そのうえで現代はグローバルスタンダードとなり、日本だけで物事を考える時代ではないと思います。

1980年から1990年頃、日本が過去最高に栄えた時代には「日本が世界一だ」という概念が存在していました。ちょうど僕の親やその親世代はそのような日本で暮らしていたので、「日本で買うよりアメリカで買ったほうが安い」「ヨーロッパでブランド品を買ったほうが安い」というような時代だったのだと思います。ですが、そのような時代はとっくに終わってしまい、日本が先進国だという概念も、正直いまはそうではないように思えます。これから私たちが生きていくためには、世界全体を基準にして、物事や人生の進め方までも考える必要があるのではないでしょうか。

そうしたこともあって、先週は香港と、香港から高速鉄道で15分ほどで行ける中国の深圳を訪れました。香港の物価は日本の1.2倍から1.5倍ほどという感覚でした。日本でもおなじみのミシュランを獲得し続けている「添好運」で飲茶を食べたり、100万ドルの夜景を眺めながら散歩をしたり、間違えて1か月後の予約を取っていたことにチェックイン前に気づいて、なんとか新しいホテルを見つけたり、、、そんなことをして過ごしていました。

深圳では電子機器を探しに行きながら街をぶらぶらしていましたが、日本ではなかなか報道されない中国の姿があって、とても新鮮で刺激的でした。街の規模や開発状況を見ると、完全に日本のどの都市よりも発展しており、街中を走るバイクや車のほとんどは電気自動車・電気バイクです。あれだけ多くの車やバイクが走っているのに街は驚くほど静かで、未来の姿がそこにあるように感じました。40年ほど前、この街は人口3万人ほどだったそうですが、2025年現在では1,500万人以上が暮らしています。この発展は、近年急成長したIT企業が深圳に本社を置き、IT企業での職を求めて中国全土から若者が集まってきたからです。平均年齢は32歳とも言われ、街には若者があふれていて、少子高齢化が進む日本の街とは比べものにならないほどの活気があり、これからの日本の未来を考えさせられました。

午前中はカフェで仕事をし、午後は街をぶらぶらするというスケジュールを毎日送っていましたが、どこにいてもパッとMacBookを開いてWi-Fiにつなぎ、仕事ができるのは僕にとって本当にありがたいことです。人類はこれまで移動を繰り返しながら生きてきた、などと話していますが、もしかしたらこれは僕自身の性格を肯定するために、どこかからデータや歴史の情報を引っ張ってきて言い訳をしているだけかもしれません。

これまでいわゆる“レール”から外れた人生を歩んできましたが、それはどうしても毎日同じ場所に通って同じような仕事をすることができなかったからです。いつもすぐに仕事を辞めてしまったり、自分の精神がおかしくなってしまったりして悩んできました。実際、就職したのは一度だけあるのですが、1日出勤したあとの翌日には出社できなくなりました。その後、もう一度アルバイトとしてスーツを着て出社し始めたこともありましたが、2週間通ったあとに再び精神的におかしくなってしまい、辞めることに。ご迷惑をおかけして申し訳ございません!

そんな僕はいつも「これからどうやって生きていけばいいのだろう」と考えながら職を転々とし、周りの方々にとても心配をかけてきました。いまも心配をかけているのは変わらないかもしれませんが、コロナ禍以降リモートワークという概念が社会に浸透し、初めて僕にとって大きなチャンスが訪れたのです。

「どこでも仕事ができる」と聞くと、SNSなどでよく見るような「ビーチやホテルなど好きな場所で好きなことをして生きていく」イメージを持たれるかもしれませんが、実際にはそんな生活をしているわけではありません。僕の仕事場は路上やカフェ、空港、地下鉄のホーム、そして電車や車、バス、飛行機といった移動中の空間がほとんどです。

移動にはお金がかかるので、ご飯は1日1食から2食に抑え、ホテルは1泊2000〜3000円ほどのカプセルホテルやホステルをまず探すようにしています。その他、マイルや各種ポイントなども意識して貯め、できるだけお金をかけずに移動できるよう日々考えています。一応いまは車も所有していますが、中古でかなり安く購入したキャラバンをDIYし、キャンピングカーにしたものです。日本を旅する際にホテル代がかからないように、そしてどこでも自炊ができるようにと改造しました。もちろんキャンピングカーの中で仕事をすることもあり、iPhoneのテザリング機能を使って仕事をし、ときにはオンラインミーティングまでこなします。

1日8〜12時間ほど画面の前に張りついている日もあるのですが、そういう日は画面を閉じた瞬間に自分がいまどこにいるのかわからなくなることもしばしばあります。ひどい時は、目が覚めたときに自分がどこにいるのかまったくわからなくなることすらあります。

このように、以前よりもさらに不思議な日々を過ごしている気はしますが、精神面は以前と比べると比較的安定しているように思います。移動していると精神が安定するのは、人間の本能なのかもしれません。結局、人は好きなことをしているときや、自分が心地よいと感じる状態に身を置いているときには精神が安定し、逆に自分の潜在意識が望んでいないことを無理に続けると、どこかで壊れてしまうのではないか、と最近は考えています。

社会の変化が早く、明日何が起こるかわからないこの時代、いつ移動ができなくなるのかはわかりません。できる限り移動できるうちは、この地球をできるだけ動き回りたいと思っています。また、移動し続けるなかで何かお伝えできる情報があれば、それもできる限り共有していければと思っています。


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