100日後に年越すオレ 89日目「き:旧暦」
”いろは順”エッセイの三十八日目、本日は”き”です。
"き”で選んだ題材は、「旧暦」。明治時代の初期に新暦(グレゴリオ暦)に切り替わる迄日本で使われていた太陽太陰暦のこと。
実は沖縄人にとって馴染みの深いのが旧暦で、沖縄のカレンダーには必ず旧暦も併記されているんですよね。子供の頃がそれが普通だと思ってましたが。
そして沖縄の年中行事は旧暦で行われることも多いのです。沖縄の三大行事といえば、「旧正月」「シーミー(清明祭)」「旧盆」の3つで、特に旧盆については会社や学校が休みになったり、商店街が閉まったりするくらいのもの。もちろん日本全国でもお盆休みはあるわけで、おかしいことではないかもしれませんが、先祖を大事にする沖縄人にとっては、一年で最も重要な時期だったりして、昔は「沖縄出身の犯罪者を捕まえるために旧盆前後で空港を見張っている」なんて噂が流れたものです。要は犯罪を犯した人であっても、旧盆には実家に帰ってしまうくらい大切なんだ、ということなのでしょう。
旧暦は月の満ち欠けに連動していて、新月から満月を経て新月へと戻る周期を一月としているのですが、元々その暦に合わせて漁に出ている沖縄の海人(漁師)たちは新暦になると混乱したようで、それをネタにした小噺を立川志の輔師匠がされてます。その辺も含めて「一年で満月が13回!?」などとても面白い話は以下から。
こちらのインタビューは2006年ですが、旧暦にハマった(?)志の輔師匠は2013年に新作落語「質屋暦(旧題:質草女房)」を完成させるんですが、これがまた面白い。ちょうど暦が切り替わった明治五年、明治5年12月2日(旧暦)の翌日を明治6年1月1日(新暦)にすることで、振り回される庶民が描かれています。
確かに旧暦においては毎年かなりの時差が出てしまい、「閏月」が三年に一度発生し、1年が13ヶ月になるわけです。それはかなり大きいですよね。そしてそのことが実は明治政府が新暦への移行を急いだ理由と言われています。
前述のように明治五年の12月初旬に旧暦から新暦へ移行して年が変わったわけですが、そのことを国民に公示したのが11月。つまり一月前ということですね。それを言われた方はたまりません。そりゃ志の輔師匠の落語のように世間では大混乱になったことでしょう。ただそういうことを考えると「今この瞬間の日付って、何を証明してるんだろう?」って気分になっちゃいますよね。考えれば考えるだけ面白いわけです。
話は変わって暦法からは少し離れ、沖縄の旧盆について話して終わろうと思います。
沖縄の旧盆は、もちろん旧暦なので毎年いつが旧盆なのかが変わります。僕が学生だった時には、夏休みに帰省することが多かったので、旧盆がいつかを事前に確認して帰省計画を立てていました。何故なら旧盆に合わせて変えれば帰省の費用の一部を親から補助してもらえたからなんですが、その分お盆前後で色々借り出されるので、ある意味持ちつ持たれつですね。
そんな旧盆は、ウンケー、ナカビ、ウークイの三日に分かれます。旧暦の7/13、7/14、7/15ですね。そして色々な儀式があるわけですが、最も特徴的なのはウークイ、つまり最終日の送り盆に行う”ウチカビ”を燃やすことでしょう。
黄色い紙であるウチカビは、実はあの世で使えるお金だと言われていて、1枚が2億円の価値であると言われているんですが、それを十枚以上焼くんですね。ご先祖さんへの仕送りみたいなものです。こんないい仕送りったらないですね。
こうした沖縄の旧盆文化、いつまでも続いて欲しいものです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?