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ゼロからはじめる「におい」ケア|週末セルフケア入門

自分の「におい」は分からない

自分が快適でいるための、においケアの方法を調べました。身体や衣服のいやな「におい」を消し、お気に入りの香りをまとう技術は、気持ちよく暮らすためにとても役立ちます。
これまで私は、あまり「におい」に気をつかわずに暮してきました。香水を買ったこともありますが、使わないまま棚の奥に眠らせています。身のまわりを清潔に保っていればいいだろうと思っていました。

しかし、自分で自分のにおいは分かりません。慣れてしまうからです。本当はにおうのに、自分だけが気づいていないということもあり得ます。どうすればいいのでしょうか。

資生堂のレポートによると、身体が発するにおいの主な要素は、汗と皮脂だそうです。レポートを読んで、部室やジムのにおいを思い出しました。あれは、汗と皮脂が酸化したにおいだったのです。
体調・年齢・食べものによって、身体のにおいは変わります。四十歳を過ぎたころから、皮脂がより酸化しやすくなり、ノネナールという物質が放出されるようになります。これが、加齢臭の原因です。
興味深いのは、心の状態によっても変化があることです。ストレスを感じた身体は、STチオジメタンを主成分とする「ストレス臭」を発します。満員電車や会議室のにおいといえば、分かりやすいでしょうか。

ほとんどのにおいが、皮膚を通して発されます。だから、皮膚を清潔に保つことが基本になります。こまめにお風呂に入り、石けんでよく洗う。洗濯後きちんと乾かした服を着て、汗をかいたらしっかり拭く。除毛も効果があります。
しかし、消しきれないにおいもあるでしょう。妻にこの話をしたら、ボディクリームを勧められました。正直に言うと、そのときに初めて「ボディクリーム」の何たるかを知りました(身体を保湿するために塗る、いいにおいのするクリームです......)。
いいにおいがする人は、生まれながらにいいにおいがするわけではないのですね。何を当たり前のことを言っているんだという感じですが、私のにおいについての認識は、そんなレベルだったのです。

においケアは恥ずかしい?

じつは、正直に言うと、においケアをするのはちょっと恥ずかしいと思っていました。気取っているような気がしていたのです。
しかし、本当はにおっているのに、気づかないままでいるのは嫌です。それに、恥ずかしいと考えるのは自意識過剰かな、とも思いました。
私のにおいケアのことなんて、誰も気にしていないでしょう。だから、私は私のために、お気に入りのにおいを探せばいいのです。

このことを四十代の知人に話すと、ちゃんとにおいケアをしている男性は本当に少ない、と言われました。
もともと彼はこぎれいな人で、においにも気をつかっていました。朝晩お風呂に入り、ごく少量の香水をつけているそうです。
それだけで、会社の同僚に「すごく気をつかっていますよね」と事あるごとに褒められるそうです。これは、どういうことでしょうか。
私たちの答えは「ほとんどの中年男性は、気をつかわなすぎなのではないか」というものです。ほとんどの人は、加齢臭が発生する年齢になっても、においケアの方法を知らないまま暮し、誰にも指摘してもらえずにいるのではないか。だから、いい香りをさせている彼だけが際立つのです。

加齢臭や、他のにおいを発するのは、女性も同じです。ただ、女性たちの多くは、中学生くらいからにおいケアを始めているようです。私が何も考えずにちょっとくさい生き物として暮しているあいだも、粛々とケアを重ねていたわけです。
においケアをするのが恥ずかしいなんて言っていたら、もっとずっと困った状況になりかねません。おそまきながら、私もにおいケアのために街へ出ました。

お風呂+精油

もともと、あまり強いにおいづけをするのは避けたいと思っていました。香るか香らないくらいのもの、言われれば分かる程度のものがいい......。
店をめぐり、本や雑誌を調べるなかで、精油(エッセンシャルオイル)がにおいづけとして使えることを知りました。ボディクリームほどべたつかず、香水ほどきつくない。さらりとしていて、お風呂に入れて使えば、あやまってつけ過ぎることもなさそうです。

最初は、東急ハンズへ行きました。化粧品売場には、あらゆる種類の商品が並んでいます。この頃は男性向けの商品も増えたので、専用コーナーがありました。
試供品を手の甲につけてみます。男性向けの商品は、メントールのような、スッとする成分が含まれているものが多いようでした。無難であるとも思いましたが、買いませんでした。季節感に欠けるし、においに奥行きがないと感じたからです。

精油は、専門店のイソップで見つけました。店構えがお洒落で、一人で入るには少しだけ勇気がいったのですが、店員の方がとても親切にしてくれました。「こういうものを使ったことがなくて......」という私に、全身のスキンケア用品を紹介してくれます。
買ったのはゼラニウムの精油です。手首と首まわりにつけると、かすかに香り、ゆっくりと消えました。

精油にはいくつも使い方があります。そのまま身体につけてもいいですが、使い始めて一週間ほどして、つけ過ぎてしまったことがありました。朝、洗面所で手首に精油を塗っていたら、寝室にいた妻が「つけすぎ!くさい」と叫んだのです。慣れてくると、ここでも自分で自分のにおいが分からなくなるようです。
失敗がないのは、湯船に数滴垂らし、香りづけした浴槽の湯につかるやり方でしょうか。私は朝風呂の習慣があるので、そのやり方がちょうどよかったのです。出張先でも使えるし、ひと瓶はなかなかなくならないので、経済的です。

こうして、においケアの発想そのものがなかったゼロ地点から、少しだけ踏み出すことができました。とくに誰に気づかれるわけでもありませんが、私は「じつはゼラニウムのにおいをつけているんだよね~」と思いながら暮しています。これが結構楽しい。においケアをしていると思われたくないけど、気にはなっている。そんな人は、毎朝のお風呂に数滴の精油を試してみてはいかがでしょうか。


夏はハッカ油も使います。

抗真菌・殺菌効果がある定番アイテムです。

嗅覚関連書のなかでも、抜群に分かりやすかった一冊。


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鎌塚 亮
読んでいただいてありがとうございます。