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リバイバル急行ひのくに号(JR九州811系未更新者で小倉から八代、折返しで八代から博多へ)

九州旅客鉄道株式会社(以下、JR九州)では、811 系車両未更新車1編成4両を使用して、小倉~八代、八代~博多を運行するツアーを発売した。
九州内では定期急行列車が運行を終了して今年で20年になるが、今回は当時の急行列車をイメージし、リバイバル急行「ひのくに号」として運行した。
ツアーで使用する車両はかつて「ひのくに号」として運行したこともある 811 系である。この車両は転換クロスシートからロングシートへの改造が進んでおり、転換クロスシートを備えた車両は数を減らしつつある。
懐かしい思い出とともに、811 系未更新車両で鹿児島本線を運行する急行列車の旅を堪能させてもらった。


ツアーのポイント

①ロングシート化が進む 811 系車両のうち、転換クロスシートを備えた車両での運行。
②下り方(八代方面)にオリジナルヘッドマークを装着

実際の幕表示

急行ひのくに号について

急行「ひのくに」の始まりは1961 年(昭和36年)にまで遡る。大阪~熊本間を運行する寝台急行列車としてその歴史をスタートさせました。しかし、1968年(昭和43年)10月のダイヤ改正(いわゆるヨン・サン・トオ)で特急「明星」への格上げとともに統合され、定期列車としての役目を終えることになりました。
1980年頃(昭和50年代後半)に九州内の臨時列車として復活し、小倉~熊本・八代間、博多~熊本間など
で運行され、12系客車や気動車、寝台列車を改造した715系や国鉄型急行電車475系などさまざまな車両
で運行した経歴があり、1989年(平成元年)からは、当時はデビュー間もない今回の811系車両を使用して運行されました。
九州内では2004年(平成16年)に急行列車が運行を終了しちょうど20年となった。今回は811系で行くリバイバル急行「ひのくに」で在りし日の急行列車の思い出をお楽しみいただきたい。

JR九州811系電車について

811系電車は JR 九州の交流近郊形電車として 1989年(平成元年)にデビューし、現在まで北九州・福岡都市圏を中心に活躍する電車である。
1993年(平成5年)までに4両編成で28編成製造された。製造当初は快速列車を中心に臨時急行列車としても運行することを想定し、転換クロスシートの座席(一部ボックスシート)が採用され、各座席には席番が表示されている。
デビューから35年が経過し、車両は順次、混雑緩和を目的としたロングシート座席の車両へと改造が進んでいる。転換クロスシート車に乗車できるのも残り僅かであり、今回のリバイバル急行ひのくに号の旅が更新前最後の活躍となるかもしれない。

未更新者の赤と青のラインが特徴
最後部
近畿車輛で製造された

小倉から出発

列車は8:42頃に5番のりばに入線した。八代側の先頭車には急行ひのくに号のヘッドマークが取り付けられ、先頭車には多くの撮影者が集まった。
ドアが開き、しばらくすると最初の幕回しが行われた。走行中は「急行団体」と表示しなければならないため、様々な種別幕、駅名幕は駅停車中のみとなる。

電光掲示板にも「ひのくに」の文字

リバイバル急行ひのくに号は、8:56に小倉を定刻で出発した。

この列車は八代まで約5時間弱で運行する。途中複数の駅に停車する。定期列車を合間を縫いながらの運転となるため、運転停車や長時間停車を余儀なくされるが、今回は一日限りの復活運行である。時間をかけながら急行列車の旅を楽しんでいきたい。
途中の陣原まで列車番号9183M、陣原から八代まで列車番号9385Mとして運転する。
八代までの停車駅を整理しておこう。

戸畑(運転停車)、八幡(運転停車)、黒崎(運転停車)、陣原(運転停車)、赤間(運転停車)、福間、福工大前(運転停車)、千早(運転停車)、博多、二日市(運転停車)、弥生が丘、鳥栖、久留米(運転停車)、羽犬塚(運転停車)、瀬高、銀水(運転停車)、大牟田、玉名(運転停車)、熊本、宇土(運転停車)、新八代(運転停車)、八代

※運転停車の表記がない駅で扉開放

往年の急行列車を彷彿とさせ、主要駅だけでなく今では快速列車が停車する駅にもこまめに停車するのが特徴である。

この日は、運転士が博多まで直方乗務センター、博多から大牟田までを南福岡運転区、大牟田から八代までを熊本乗務センターで、車掌は博多まで門司車掌区、博多から八代まで博多車掌区が担当する。

筑豊本線旅客線を通り折尾を通過

黒崎から陣原間は鹿児島本線ではなく、筑豊本線の線路を走行している。通称「筑客線」と呼ばれ、直方方面から折尾で鹿児島本線の線路には合流せず、同線と並行し黒崎から小倉までは鹿児島本線の貨物線となる路線である。

黒崎駅を発車。右の線路が鹿児島本線。
筑豊本線の旅客線を走行中
陣原駅に運転停車中

鹿児島本線を走行する811系が筑豊本線の線路を使用することはレアであり、わずか1区間ではあったが、早速参加者を楽しませる演出であった。
レア演出はこれで終わらない。陣原の次駅折尾を通過する。折尾は特急列車を含むすべての列車が停車する北九州の主要駅であるが、リバイバル急行ひのくに号は通過する。低速ではあったが、通過シーンは圧巻であった。その様子を動画に記録したのでご覧いただきたい。

折尾付近はこの数年で高架線に切り替わっていることを特筆しておきたい。
折尾を通過すると田園風景へと景色が様変わりする。水巻、遠賀川、海老津、教育大前の4駅を通過した。赤間で2分の運転停車した後、再び住宅街が広がり始める。鹿児島本線の折尾ー赤間は沿線人口が少ないエリアで列車本数も減少する区間で福岡エリアと北九州エリアの境ということになる。
9:45に福間駅に停車した。福間駅では最初の長時間停車となった。

長時間の運転停車、福間&鳥栖

福間駅では35分の停車時間中2度目の幕回しが行われた。また、参加者からのリクエストにより表示したい種別、行先が数多く表示された。すでに電車の乗り入れが終了した長崎本線の長崎、諫早などの駅名も表示された。

肥前山口改め江北の表示も
準快速幕も残っている

福間駅は5線を有し当駅での折返し列車も多数設定されている。
福間駅から先は福岡都市圏に入り列車本数が再び多くなる。
福工大前、千早と運転停車し10:42に博多に到着した。

787系と特急リレーかもめ
博多駅

博多駅で運転士と車掌が交代した。この間に昼食の弁当が積み込まれ、博多駅発車後に配布された。

弁当掛け紙
牛肉で長時間旅のスタミナを付ける!

10:58に博多駅を発車すると鹿児島本線を南進する。竹下と南福岡では留置車両が数多く見られた。

竹下駅
南福岡駅を通過

鹿児島本線の博多以南も引き続き列車本数が多く、二日市や鳥栖止まりの列車も多く見かける。また、長崎・佐世保方面の特急列車(リレーかもめ、みどり、ハウステンボス)が毎時3本程度運転されるため、全体として過密ダイヤである。九州新幹線が全通するまでは熊本方面へ向かう特急リレーつばめ、有明が毎時3本運行であったため、特急列車の退避のため、快速・普通列車の所要時間が長くなる傾向があった。乗車した臨時列車も二日市駅で先行する快速列車よりも先に発車し、弥生が丘駅で快速列車を退避することになった。

鳥栖駅には11:43に到着し、39分の長時間停車となった。福間駅と同様に幕回しも実施された。鳥栖駅は九州内鉄道のターミナル駅で長崎・佐世保方面への分岐点でもある。かつては寝台特急の分離・併合も行われた経緯もあり、長いホームも特徴的である。近年は特急列車でも8両編成が最大で長蛇ーホームを持て余している感すらある。駅から博多方には貨物ターミナルがあり、貨物駅構内とつながる線路もあり広大なターミナル駅である。停車中も貨物駅を出発した貨物列車が臨時列車の横を通過していく姿も見られた。
この間、長崎・佐世保方面への特急列車(リレーかもめ、みどり)を2本見送った。到着した6番のりばには立ち食いそば店も健在である。かつては、長距離列車の機関車の付け替えのため長時間停車を余儀なくされたことから、その時間を利用して小腹を満たす光景も今は昔の話であるが、鉄道全盛期の駅構内を堪能できた。

長崎本線の普通列車

12:22に鳥栖駅を出発し、引き続き鹿児島本線を走行する。長崎本線の線路と分かれ、右手から九州新幹線の高架が迫ってくる。筑後船小屋駅まで新幹線の高架と並走する。久留米と羽犬塚駅では30秒の運転停車が行われ、久留米から荒尾までは直線区間が続くため、高速走行も見られた。九州新幹線全通前では快速・普通列車の最高速度は120km/hであったが、現在は100km/hに抑えられている。筑後船小屋を通過してすぐに瀬高に停車した。

筑後船小屋を通過

瀬高はかつて佐賀線との分岐駅であった。佐賀線時代は熊本方面からの列車が佐賀線を経由して長崎・佐世保方面へ乗り入れる急行列車(急行ちくご)が運転されていた。瀬高到着前にはかつての急行列車との接続放送が再現された。

2番のりばは中線として使用されていたが、九州新幹線全通後は使用されることはなくなった

瀬高を発車して筑後平野を走り続け銀水駅手前で西鉄天神大牟田線の線路と並走する。丁度、福岡天神からやってきた特急列車と大牟田駅まで一進一退のデッドヒートを繰り広げた。

大牟田には13:03に到着した。大牟田で運転士が交代し、八代まで熊本乗務センターが担当する。13:17に発車し、荒尾駅を通過する。荒尾駅は熊本県に位置するが、福岡都市圏の快速列車は朝夕を中心に荒尾駅まで乗り入れている。南荒尾、長洲、大野下と順調に通過し、13:32に玉名駅で運転停車する。荒尾から長洲間は有明海沿いを走行するため木々の合間からほんのわずかだけ有明海と島原半島が見えた。

奥に見える山々は雲仙普賢岳

玉名駅を発車すると熊本駅までは田原坂の峠を越えていく。木葉駅から植木駅まではカーブやトンネルが連続する区間であり、田原坂を通過すると文字通り坂を下っていく。崇城大学前を通過すると右手から九州新幹線の高架と並走する。新幹線開業後に在来線も順次高架化されており、軽快に上熊本を通過する。上熊本はかつては特急・急行列車の停車駅であったことを特筆しておきたい。車窓左手には熊本城が見えてくると13:54に熊本に到着した。熊本の中心部は熊本駅から離れている。九州新幹線の全通に合わせて駅前の再開発が実施されている。小倉駅を出発してから約5時間が経過している。

14:08に熊本駅を出発してすぐに熊本車両センターを通過する。九州新幹線全通までは地上に熊本操車場があったが、高架化に伴い現在の場所に移転している。

急行ひのくに号はこの先の川尻えきまで回送され折り返し準備が行われた。西熊本、川尻、富合を通過し、三角線との接続駅宇土で4分間運転停車した。811系が八代平野を軽快に走行する姿も貴重な機会となったことは間違いない。松橋、小川、有佐、千丁と通過していく。千丁を通過してすぐに右手から九州新幹線が近づくと新幹線へと接続する短路線が存在する。この短路線は九州新幹線が新八代~鹿児島中央間が部分開通した当時、博多から新八代までは新幹線への接続列車として特急リレーつばめが運転されており、新八代駅の同じホームで九州新幹線と接続していた。在来線から新幹線への高架線につなぐために敷かれた線路である。九州新幹線全通後は使用を停止している。時間調整のため、新八代駅在来線ホームに運転停車した。在来線の新八代駅は新幹線との同時開業である。新八代駅を出発すると約3分で終点の八代に到着した。改札口から離れた2番のりばに到着した。6時間弱に及ぶ急行列車の旅の往路が終了した。1時間後には博多へ向けて折返しの旅が始まる。

往路の走行を終え休憩中@八代駅
811系未更新者の全景

ファンを楽しませる様々な工夫

すでに一部で紹介しているが、今回の旅は鉄道ファンを楽しませる様々な工夫がなされていた。

①復刻ヘッドマーク

②幕回し


③運転士時刻表(レプリカで希望者のみ販売)

ケースに入られ、運転士気分が味わえる
裏面

④車掌用時刻表(③と同様)

車掌用のクリアケースに入れられ、各駅の時刻表と車掌の行路が記載されている
各駅の乗り換え列車の案内も。旅を盛り上げてくれるグッズはありがたい!

⑤記念乗車証

硬券仕様。急行券の表記も今ではほとんど見られない。

⑥特別クリアファイル

非売品と思われる。リバイバル急行ひのくに号に乗車した者だけが獲得できる。
クリアファイル裏面

復路は急行列車らしい走り

復路は博多行として運転された。

「ひのくに」ではなく「火の国」表記となっていた

八代駅15:45定刻に発車した。長時間停車は熊本駅の20分のみで、停車駅は往路と変わらないが停車時間も短くなり、鳥栖駅までは列車本数が少なく、高速走行も多いように感じた。復路の停車駅は下記のとおり。

有佐(運転停車)、熊本、玉名(運転停車)、大牟田、瀬高(運転停車)、羽犬塚(運転停車)、久留米、鳥栖、弥生が丘、二日市、大宰府信号場(運転停車)、南福岡、博多

乗車した9月15日はすでに秋の気配も見え始め、日の長さも徐々に短くなりつつあり、18:00前後から空が暗くなり夜間走行となった。往路と比較するとイベントも減り、純粋に車窓から流れる景色や走行音を楽しむ落ち着いた旅となった。博多まではおよそ3時間25分の旅である。停車駅は往路とほとんど変わらないので、復路ならではの様子を紹介したい。
まずは最初の運転停車駅・有佐駅(中線)への入線である。いわゆる中線に停車したが、この中線は鹿児島本線などの幹線では見られ、特急列車などの優等列車が普通列車を追い越すための設備である。九州新幹線全通後は中線を有する一部の駅が中線の使用を停止している。これから通る、松橋、木葉、瀬高が該当する。

熊本駅
熊本駅の在来線改札内で遭遇
大牟田駅の電光掲示板

また大宰府信号場(副本線)への入線も貴重である。大宰府信号場は都府楼前~水城に位置する信号場で、こちらも普通列車が特急列車に道を譲るための設備で、駅ホームがないため信号場と呼ばれる。博多~鳥栖間は先述した通り、現在も長崎・佐世保方面の特急列車が毎時3本運行される区間で快速・普通列車も本数が多いため、平成後期に大宰府信号場が新設されている。車内放送でも大宰府信号場完成前の普通列車が特急・急行列車を3本退避する逸話が紹介された。当時は二日市~南福岡間で待避できる駅は南福岡のみであった。

大宰府信号場に停車中

夜行列車気分

弥生が丘を発車してすぐに寝台夜行急行「ひのくに」号の熊本駅発車後を再現した車内放送が行われた。新大阪まで運行されていた当時にタイムスリップしてみよう。

〜ありがとう急行列車、急行列車よ永遠に〜

最後の停車駅は南福岡であった。

7分停車し終点の博多まで爆走し19:09に終点博多に到着した。小倉からの往路を含めればおよそ11時間にわたる旅が終わりを迎えた。

JR九州管内から定期急行列車の運行が終了して今年で20年が経過した。最後の急行列車は熊本から人吉間を運行した急行くまがわ号であった。今回のリバイバル急行ひのくに号の旅では九州内をこまめに運行した急行列車の役割が紹介された。現在、九州内の移動は都市間を九州新幹線や特急列車が担い、また、平成以降は高速道路の開通によって高速バスが頻回に運行され、急行列車の活躍の場は減り2004年以降は臨時を除いて急行列車の運転はなくなった。急行列車が果たした役割は計り知れないものがあり、多くの人々の移動を支えた。旅の終盤、車掌さんからの贈る言葉が印象的であった。

「ありがとう急行列車、急行列車よ永遠に」

JR九州トラベルデスクをはじめ、運行に携わったJR九州の皆さんへの感謝を込めて締めくくりとする。

Thank you!

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