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言葉を置き換えるだけがリフレーミングではない

対人援助職の研修に行くと「リフレーミング」の練習があります。支援者のフレーム(見方)が変わると理解も変わる、転換技術を学びましょう、と言われます。しかし、実際の支援場面では、リフレーミングを誤解しているケースがあります。

私は、障がいのある人が利用する社会福祉法人を経営しています。主な業務は、理事長職です。また、兼務で相談業務に就いています。相談業務をしていると、利用者の皆さんのサービス提供の基礎となる「個別支援計画」を目にすることがあります。

研修におけるリフレーミングの演習

個別支援計画は、利用者の皆さんの願いや、それぞれが望む生活を実現させるためのプランです。そこには「私はこうなりたい」という希望と、「それに向けての具体的な支援方法」が書かれています。その計画をつくるときの技法の一つとして「リフレーミング」を習います。

私が参加した研修では、二人一組になりテキストに書かれているネガティブな言葉を、ポジティブな言葉に置き換える演習をしました。さらにテキストには、ポジティブな言葉に言い換えることで、欠点だと思っていたものの中のストレングス(強み)を再発見できると書かれていました。

テキストの演習の例です。
「神経質(ネガティブ)→細かいことにも気がつく(ポジティブ)」
「せっかち(ネガティブ)→行動が早い(ポジティブ)」
「忘れっぽい(ネガティブ)→気持ちの切り替えが早い(ポジティブ)」

これは、私が受講した公的な研修のテキストに書かれていたことです。リフレーミングは大切です。ただし、言い換えれば良い問題ではありません。リフレーミングの目的は、支援者の理解を変えることです。

間違ったリフレーミング

利用者の個人面談に同席をしました。そこで見せていただいた個別支援計画に気になることが書かれていました。個別支援計画には「仕事熱心なところは評価できるが、休み時間の切り替えが難しい、時間の切り替えが上手にできるようにしましょう」というようなことが書かれていました。このようなことは、自閉的な障がいのある方によくあることです。何もすることがない休み時間より、繰り返しの部品の組み立てをしている方が安心できるタイプの人です。

面談終了後、支援者と話をしました。支援者は、組み立て作業を始めるとその仕事にこだわってしまう、「こだわり」というマイナスの表現を使わず「仕事熱心」というプラスの表現に言い換えたと言います。しかし、本質はそこではありません。言葉の言い換えではなく支援者の視点を変えることがリフレーミングです。

環境因子を整える

利用者が、スムーズに休憩時間に入れないのは利用者の課題ではなく、支援者の課題です。障がいのある人の活動や社会参加については、個人因子だけではなく、環境因子が大きく影響していると考えます。この環境因子の中には、私たち支援者が含まれます。利用者が上手に活動の波に乗れないのは、環境因子である支援者の工夫が足りないということです。

今回の事例でいえば、休み時間を音楽やチャイムで知らせる、あらかじめ仕事の量を明確にしてそれが終わったら休憩する、といった工夫ができます。個別支援計画には、「休み時間がわかりやすいように~でお知らせいたします」とか「目の前の仕事がなくなったら休み時間にします」と書きます。そうすることで、利用者を否定することもなくなります。

個別支援計画は、もらってワクワクしたり、安心したりできるものにしなければいけません。もらって反省するような支援計画は失格です。

連続投稿1000日まで、あと27日。




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