飲み物の温度は、ほどほどに(福祉業界のあるある②)
私のお袋は特別養護老人ホームで生活をしています。生活を始めて3年が経過しました。ホームの支援員の皆さんはお袋の希望を聞き取り、細かな対応をしてくれています。ただし、どうしても実現できない要望もあります。お袋は「熱いお茶が飲みたい」と言っています。しかし、ホームで出されるお茶は、ぬるめの常温に近いお茶になります。この「ぬるめの飲み物」というのも「福祉業界のあるある」の一つです。
私は、障がいのある人が利用する社会福祉法人を経営しています。法人の事業に、日中活動や生活の場(グループホーム)があります。今日のnoteはそこで提供される飲み物の話題です。飲み物は、熱くもなく冷たくもない飲み物がほとんどです。
個別支援の原則
熱い飲み物は、リスクがあります。利用者によっては、熱さを気にせず目の前に置かれた飲み物を口に入れます。また、他の人の飲み物に手を伸ばし、テーブルの上の飲み物がこぼれることがあります。そのような事故が起きたとき、火傷にならないよう、飲み物はぬるめになっています。
本来であれば、一人ひとりの希望に応じた飲み物を提供しなければいけません。しかし、事業所では、一人の支援者が複数の利用者の支援をします。そのため、対応ができずにあらかじめ冷ました飲み物を提供してしまいます。
支援者が気をつけなければいけないことは、この現状を意識することです。支援者は、この対応を続けていく内に「飲み物はほどほどの温度」が当たり前になってしまいます。個別に、希望を聴き、個別に対応することは手間がかかります。その手間を省くためにあらかじめぬるめの飲み物を出すようになってはいけません。
今は、休日の昼間など利用者の少ないときは、利用者の希望を聴きできるだけ希望に近い状態で提供ができるように心がけています。
冷蔵庫が追い付かない
また、暑い日に冷たい飲み物を提供することも難しいことがあります。冷蔵庫で冷やすのが間に合いません。利用者によっては、自分で冷蔵庫を持っています。しかし、私の法人のグループホームでは極わずかです。グループホームは、家庭用冷蔵庫より少し大きめの冷蔵庫です。そこでは、利用者の希望通りに飲み物が冷やせず困っています。
私が泊っているとき、製氷機の氷が間に合わないこともありました。
ささいな希望こそ大きな問題だ
熱いお茶が飲みたい、良く冷えた冷たい物を飲みたい、そういうささいな希望をかなえられないのが集団生活の欠点です。その状況で、利用者からそういう希望があがったときの対応に支援者の質が問われます。
支援者の中には「そんな無理、言わないの」と跳ね返したり、「今度ね」とごまかしたり、「ほら、冷たいのは体に良くないし」と話をすり替える人がいます。どの対応も切実に「飲みたい!」と思っている利用者には届きません。
私は、そんなとき、素直に利用者に謝ります。また、利用者の希望を覚えておいて、人手があるときや利用者が少ない日に、こちらから利用者の希望を提案するようにしています。
「あるある」で片づけていけません。ささいな希望です。しかし、そこが生活の中心であると考えれば、大きな問題です。
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