利用者同士の物のやりとりの支援について
私は、障がいのある人が利用する事業所を経営しています。法律では、私たちのような事業者は、利用者の人権に配慮した支援をするための措置が義務づけられています。私の法人では、月に一回、担当者と人権に配慮した支援を実現するための話合いの場を設けています。(今はオンラインです)
今回のテーマは、利用者同士で物をあげたりもらったりすることについてです。
善意のはずが悲しい結果に…
利用者同士で、物をあげたりもらったりすることは、ときどき大きなトラブルに発展することがあります。また、このやりとりの中では、誰にも悪意がない、すべて善意の行動なので支援が難しくなります。
たとえば、休み時間に利用者同士の会話で「〇〇欲しいなぁ」という話になりました。それを聞いた一人の利用者が、翌日「これあげる」と、その物をプレゼントしました。ここでは、二人ともとてもハッピーです。しかし、家では、家族が「その物」を必死になって探していたということがありました。
またグループホームでは、ある入居者がみかんを一袋買って来ました。それを他の入居者にも分けてあげました。みんな、大喜びでした。買って来た入居者も仲間たちの喜びを見て、自分も嬉しくなりました。誰かが、「また買って来て」と言いました。そんなに喜んでくれるならと、その入居者は、またみかんを買って来ました。気がついたときには、自分のその月のおこづかいが足りなくなっていました。
どちらの例も、誰かに喜んで欲しい、という優しい気持ちで始まったことです。それが、最後に悲しい結果になってしまいました。
また、支援者が、結果だけに注目をして「ダメでしょう、勝手に持って来ちゃ」とか「(おこづかいは)もっと計画的に使いなさい」と責めると、本人はもっと辛くなります。良いことをしたのに、なんで責められなきゃいけないの?、ということになります。
理解するとは予測すること
以前、理解するとは予測することだ、ということを教わりました。そのとおりだと思います。支援者は、その先を予測して、利用者同士の関係に介入していくことが必要です。さらに、予測するためには、「しっかり見る」という支援が必要になります。
私は、支援者に「背中を見せない」ということをお願いしています。まずは、しっかり見て、予測して、誰もが傷つかないような支援を心がけたいと思います。今回のテーマはそんなことを考えたテーマでした。
来月のテーマは「早食い」
来月は、「早食い」です。早食いにより、消化不良や誤嚥性肺炎のリスクがあります。ありがちな対応は、横で「もっとゆっくり」、「よく噛んで」と、言い続けることです。果たしてそのやり方は効果的なのか、人権的にどうなのか、そんなことを考えます。