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「だって、髙橋くんは私のこと、きれいとかかわいいとか言ってくれないじゃん。」

「だって、髙橋くんは私のこと、きれいとかかわいいとか言ってくれないじゃん。」
私がこの仕事に就いて一年ぐらいが過ぎたころ、事業所を利用している人から言われた言葉です。私が21歳できごとです。

障がいのある人の支援をする仕事を始めて35年以上が過ぎました。この間、多くの利用者と出会い、成長をさせてもらうことができました。そんな出会いの中の一つです。

初めて就職したころのこと

私は、専門学校を卒業して、地元の小規模作業所の支援者になりました。今、働いているところとは別の事業所です。またその事業所には、障がいのある人が30人ぐらい通って来ていました。障がいの状況も幅広く、一般就労をしたことがある人もいれば、食事を自分で食べることができない人もいました。そこでの出会いです。

そのころは、支援をする人は「指導員」と呼ばれていました。また、支援をする利用者が特定されており「担当」と言っていました。その事業所に就職したばかりの私は、比較的年齢の近い利用者数名が私の担当でした。その中に年齢が私より2、3歳上の女性がいました。

ある女性との出会い

彼女は、何度かアルバイト経験がありました。しかし、アルバイトは長続きせずインターバルのような感じで、その事業所を使っていました。また、日常生活においても支援を必要とする人でもありませんでした。ただし、一つだけ課題がありました。それは、誘いに弱いということです。町で声をかけられると断り切れず、ついて行ってしまうことが何度もありました。

怖い人につかまってしまったことがありました。車で遠くの町まで連れて行かれてしまい、そこで車から降ろされて保護されたこともありました。私も何度か迎えに行ったことがあります。彼女は、そのたび、泣いたり怒ったりしながら「気をつけます」と言っていました。

ある日、彼女がしっかり化粧をして事業所に来ました。持っているカバンもいつもと違いました。私は、何かあるな、と思って休み時間に彼女と話をしました。まだ、この仕事を始めて1年ぐらいのことです。彼女の気持ちも考えず、しつこく問い詰めてしまったのだと思います。そのときに彼女が泣きながら、怒りながら私に言った言葉が冒頭の言葉です。

「だって、髙橋くんは私のこと、きれいとかかわいいとか言ってくれないじゃん。」

#一人じゃ気づけなかったこと

当時の私は「指導員」でした。事業所を利用される人は「指導される人」でした。それが当たり前だと思っていました。そのときの彼女には、失礼なことをしてしまいました。しかし、彼女に言われた一言が私に気づきを与えてくれました。

あれから35年が過ぎました。今でもその言葉は忘れていません。

連続投稿1000日まで、あと14日。

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