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障害福祉サービスにアドラー心理学を応用する パセージ〈心理面の目標〉
「髙橋さん、最近のボク、なんか変なことしてない?」
「大丈夫、何もしていないよ」
私と利用者の会話です。この会話がときどき繰り返されます。
私がこの利用者とお付き合いをするようになって15年が経ちます。しかし、その間、私が困るようなことは一度もありません。
反対に私が質問をします。
「何かあったの?」
「ほら、ボクも昔いろいろあったからさぁ」
私は、仕事上、過去の記録にも目を通します。しかし、これといって、問題になるような記録はありませんでした。それでも本人は何かを心配しています。
アドラー心理学を基本とした子育てにおける親の育成プログラム、パセージには心理面の目標というのがあります。それは次のような目標です。
〈子育ての心理面の目標〉
1)私は能力ある。
2)人々は私の仲間だ。
子育てにおける親の援助は、親に心理面の目標が信念として宿っていなければならないとしています。この考え方は、子育てだけでなくあらゆる対人援助場面において必要です。
今回の利用者は以前、支援者からたくさんダメ出しをされてきたことが予測できます。以前の福祉における支援はダメ出しから始まっていました。当時の支援者の信念は「ダメなものはダメ」というものでした。また、そのダメの基準は支援者固有のものでした。私もパセージに出会う前は同じような信念で支援をしていました。
昨日のnoteに、パセージの〈子育ての行動面の目標〉を書きました。今日のエピソードを書こうと思い、パセージのテキストを読み返したときに気がついたことを書きました。自己肯定感がさがると、自立しよう、社会でがんばろうという勇気がわいてきません。
障害福祉サービスにおけるアドラー心理学の有効性を実証するために、小さな事例ひとつひとつを積み重ねてゆくことが必要です。