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利用者の貢献感に応えられる支援者になろう(アドラー心理学を意識した内部研修②)

内部研修の準備をしています。昨年の秋から、Zoomによる内部研修を強化しました。昨年度は、経験の浅い層を中心とした研修でした。今年度は、中堅層の研修から始めます。

私は、障がいのある人が利用する社会福祉法人を経営しています。法人には、小さな事業所が8か所あります。事業所と事業所が離れているため、事業所間を超えて支援者が集まるのがたいへんでした。それがZoomの普及で解決されました。違う事業所の支援者で集まる研修は、いろいろな視点での発言があり、楽しい研修になります。

若いころの私のかかわり方を教材にする(反面教師)

今年度の研修は中堅支援者向けの研修です。中堅支援者は、利用者支援に自信が出てきた反面、支援者の価値観を利用者に押し付けてしまう危険性があります。「こうでなければいけない」という対応が増えてきます。私もそうでした。そこで、中堅者向けの研修では、若いころの私のかかわり方を事例として示し、それを訂正してもらうワークを考えています。

若いころの私のかかわり方の事例です。

受注活動をしているときのことです。具材の袋詰めをしていました。そのとき、一人の利用者が急に立ち上がり、作業室から出ようとしました。私は「〇〇さん、座ってくださーい。仕事中です。」と、利用者の名前を呼んで注意をしました。その利用者は、私の声を聞かずに玄関に向かって行きました。そこには、郵便屋さんが立っていました。私は、もう一度利用者に言いました。「あなたはいいから座って仕事をしてください。」

私は、長いことこんなかかわり方をしていました。このかかわり方は、利用者の意思を無視した一方的なかかわり方です

こんな私を目覚めさせてくれたのがアドラー心理学です。私は、アドラー心理学に出会い、自分のかかわり方が自分中心で、利用者主体ではないということに気がつきました。

利用者の行動の目的を考える

作業中に利用者が急に立ち上がったとします。その行動には目的があります。もしかしたら長時間座っていたことにより腰が痛くなり、それを回復させようとしたのかもしれません。もしくは眠気があり、それを自ら目を覚まそうとしたのかもしれません。すべて良くしようとする目的があります。

上の事例では、玄関に人が来たから出迎えようとしています。これも良い行動です。

昔の私は、利用者の目的を考えずに「なんでそんなことをするの」と頭ごなしに注意をしていました。これは原因論的な対応です、それに対して、アドラー心理学では、常に目的論の立場です。人の行動には必ず良くしようという目的があると考えます。原因論で考えると、常に注意で終わります。それを目的論で考えると、どうすれば良いかが見えてきます。

腰が痛くなったり、眠気が出て立ち上がったときは、一緒に軽い運動をすることができます。玄関に人が来たら、一緒に出迎えれば、利用者も私も気持ち良くその場をすごすことができます。アドラー心理学は、こんな簡単な転換を教えています

共同体感覚・貢献感

最近は、荷物が届くことが増えました。食材、コピー用紙、トイレットペーパー、ウオーターサーバーの水、いろいろな物が届きます。それに反応して玄関に向かって走り出す利用者がいます。また、荷物を受け取ってそれを運んでくれます。たいへん助かっています。

もし、アドラー心理学に出会わなかったら、今でも「余計なことはしなくていいから」と注意していたかもしれません。先日のnoteに『注意するかわりに「ありがとう」と言おう』という記事を書きました。これもアドラー心理学に出会って変わった私の話です。

アドラー心理学の思想は「共同体感覚」です。共同体感覚は、自分が所属する社会で建設的に生きようとすることです。また、共同体感覚を構成する要素の一つに「貢献」があります。利用者の皆さんは貢献感にあふれています。今年度の研修では、利用者の貢献感に応えられる支援者になるということを目指します


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