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介助でも体を触っていることには変わりない
支援や介助では、利用者の体に触らなければいけないときがあります。支援者は、トイレや入浴の支援など特定の場面ではていねいに言葉をかけながら支援をしています。しかし、日常の何気ない場面では、利用者に声をかけることなく利用者の体を触っていることがあります。注意が必要です。
私は、障がいのある人が利用する社会福祉法人を経営をしています。今は、理事長職と相談業務が中心のため、利用者の皆さんの身体介助をすることがありません。しかし、日常的に利用者の皆さんの体を触らなければいけないことがあります。
利用者の体を触るとき
利用者の皆さん体を触ることが多いのは玄関です。利用者の中には、玄関に置いてあるイスに座って靴を履きかえる人がいます。そのイスから立ち上がるとき、そっと体を支えます。そのときに体に触れます。
また、帰ろうとする利用者を呼び止めて体を触ることがあります。利用者の洋服が乱れているときです。利用者の中には「背中」を意識することができない人がいます。見えないところは見えません。その場合、言葉だけの説明では洋服の後ろの乱れを直すことができません。直接、体に触れて洋服を直します。
利用者の体に触るときは、利用者の身に危険がおよぶときでない限り、どんな理由があっても触ることをお伝えして了解を得なければいけません。しかし、実際の支援場面ではそれが省略されていることがあります。昔は、私もそうでした。
私が指導者だったころ
この仕事を始めたころの私は指導者でした。利用者の洋服が乱れているとそれを注意して、言葉で注意をしてもなおらないときは、私が強制的になおしていました。私は、洋服の乱れがなおると「はい、これでOK!、行ってよーし」とか言っていました。上から目線です。
その後、研修等で「人権」を学んでも「すいません、背中なおしまーす」とか「背中なおすよ、いい」と一方的な声かけだけで、利用者の承諾を得るまでには至っていませんでした。私の頭の中は、洋服が乱れていることはいけないこと、そういう意識しかありませでした。
洋服は乱れていない方がいいと思います。しかし、利用者からしたら勝手に体を触られるのは不快です。
支援者たちに伝えること、自分が手本であること
支援者たちにこの話をすると「別に男同士だし、気にしているふうでもないっすよ」とか「本人がいいって言えばいいんじゃないですか」と言われることがあります。
しかし、私たち支援者は、利用者本人が気にしているかいないかはわかりません。体を触られるのが嫌でも「いや」と言えないのかもしれません。もしくは、「いい?」と聞かれて「いい」と言ってしまっただけかもしれません。意思確認は、支援をされているときの利用者の表情を見ながら慎重におこなわなければいけません。
また、自分とその利用者という視点だけで考えるのも危険です。1人をゆるすとそれがあたりまえになってきて他の利用者にも同じような対応をするようになります。さらにそのやり方は、他の支援者にも伝染します。チーム全体で気をつけなければいけないことです。
一つひとつは細かいことです。しかし、その細かいことが積み重なって「これぐらいならいい」が生まれます。昔の私がそうでした。私も、常に意識していないと昔のようになってしまいます。私が利用者に失礼なことをすればそれはすぐに伝染します。ちょっと気になる場面があったらふりかえる、そうありたいと思っています。