ライフスタイル診断の要素を取り入れた事例検討会
アドラー心理学の技法の一つにライフスタイル診断というのがあります。私は、これに興味を持ちました。これを応用して自分が働く障害福祉サービスに取り入れたいと考えています。そこで、今年度後期から事例検討会にアドラー心理学のライフスタイル診断の要素を取り入れることを定例化したところです。
私は、障がいのある人が利用する社会福祉法人を経営しています。より満足度の高い支援を実現させるためには支援者の育成がだいじです。それも私の仕事のひとつです。支援者が、支援しやすい方法を考えなければいけません。
ライフスタイル診断について
障害福祉サービスは利用者主体のサービスが大原則です。しかし、実際の支援では支援者主体のサービスが行われてしまうことがあります。その背景には、長く続いた措置制度があります。また、利用者主体と言われても支援者は、どのようにして利用者の意思をくみ取ったらいいのか悩んでいます。特に知的な障がいがあり、意思表示が難しい利用者が望む生活をどのように考えたらよいかわからないという課題があります。そこで、私はアドラー心理学のライフスタイル診断を応用することを考えました。
アドラー心理学のライフスタイル診断について、向後千春先生のnoteに詳しく書かれています。ご参照ください。
私は、日常生活、活動において自分のライフスタイルが尊重されていることが、その人にとって一番良い状態だと考えます。利用者のライフスタイルを推測し保障することが私たち支援者の務めになります。
利用者のライフスタイルを推測する
次に利用者のライフスタイルの推測方法についてです。私が、早稲田大学エクステンションセンターで向後千春先生からアドラー心理学を学びました。そのときは、質問紙に答えてライフスタイルを診断しました。また、ペアで会話し、その会話から相手のライフスタイルを当てるというワークも行いました。私の法人の事業所を利用する人たちは質問紙による診断は不向きです。そこで私は、会話によるワークをヒントにしました。
まず、支援者があらかじめ担当する利用者のエピソード、特に感情が動いたときエピソードをたくさん集めます。それを切片化します。その後でそれについて語り合い、その利用者のライフスタイルを推測します。推測するときは、エピソードを2つの軸で分けていきます。軸は、縦軸を「対人関係優先ー課題達成優先」、横軸に「能動的ー受動的」とします。事例検討会で分類しているときの様子は写真のとおりです。個人情報が満載のためぼかしがたくさんあります。雰囲気だけ感じてください。
これは、アドラー心理学のライフスタイル診断の要素取り入れたものです。純粋なアドラー心理学からは飛躍しています。しかし、私はアドラー心理学を実際に使うことがだいじだと思っています。この手法を取り入れることで、支援者が迷い方を学ぶことができます。
正しい悩み方を身につける
利用者の支援を考えるとき、支援者は頭の中で漠然と悩んでいます。悩んだつもりで決めつけています。私たち支援者の仕事は、利用者の立場に立って悩むところからスタートします。ということは、正しい悩み方を知らなければいけないということです。今回の事例検討会では、言葉に出して意見交換をすることで活発な議論をすることができました。
おしゃべりが好きな利用者がいます。その人は、いろいろな人をつかまえて話しかけます。その人の支援を考えたときある支援者は、社交的、対人関係優先だと言いました。反対にある支援者は、社交的ではない、ただ自分の話を聞いて欲しいだけではないか、そうであるならば課題達成優先ではないか、と主張しました。
こういう議論をすることが大切です。一人の視点では、どちらかに偏ってしまうことがあります。それでは、その利用者の本当に快適な生活は実現しません。
私たち支援者は、研修の場で専門的な技法を学びます。しかし、その技法が難しすぎて活かしきれないことがあります。その点を考えると、このライフスタイル診断の要素を取り入れた方法は、誰もが簡単に取り組むことができる、そういう利点があります。
今年度前期は、中心となる支援者で練習を重ねました。後期からは、毎月1回、定例で実施していきます。
連続投稿1000日まで、あと10日。