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はきものをそろえる
私は、障がいのある人が利用する社会福祉法人を経営しています。今は、理事長です。しかし、最初は現場の支援者でした。またさらにその源流は、学生時代のファミレスでのアルバイトにさかのぼります。
ファミレスのアルバイトで学んだこと
私がアルバイトをしていたのは、中華のファミレスです。江ノ島を中心に数店舗のお店があり、そこで数年間、お世話になりました。おかげで、最後は店長代行をさせてもらっていました。そのときにそこのマネージャーから教わったいくつかの心得が、今の私の仕事に活かされています。その一つが、「履物をそろえなさい」というものでした。
お店の一つが改装され、宴会中心の店舗になりました。それまではテーブル席ばかりだったので、お客様の履物をそろえるということがありませんでした。またお手洗いも、専用のスリッパに履き換えるようになりました。そのとき、お客様が帰られると、入れ違いにマネージャーはお手洗いに行き、スリッパをそろえていました。
履物をそろえる
お客様は、トイレが汚れていればそれをクレームというカタチで教えてくれます。しかし、履物が乱れていると何も言わずに嫌な気持ちになります。お客様の多くは、来店してすぐにトイレに行きます。そのときに嫌な気持ちにさせない配慮を学びました。
のちに、「履物をそろえる」というのは、永平寺の開祖である道元禅師の教えにあることを知りました。道元禅師の言葉を紹介します。
はきものをそろえると 心もそろう
心がそろうと はきものがそろう
ぬぐときにそろえておくと はくときに心がみだれない
だれかが みだしておいたら だまってそろえておいてあげよう
そうすればきっと 世の中の人の心もそろうでしょう
カタチから入る
今の世の中は、価値観が多様化しています。また、福祉サービスにおいては、支援者の価値観で利用者の支援をしてしまうことがあります。その結果、支援がおせっかいや支配になります。支援者の間で、心をそろえることの難しさを感じています。
年度当初に予定していた、新しい支援者の雇用が始まりました。コロナの影響で遅れてのスタートとなりました。新しい支援者と向き合うとき、まずは自分が正しい見本となり、そのカタチを示さなければいけないと感じます。
言われたから履物をそろえる、誰かが来るから履物をそろえる、それではカタチだけになってしまいます。一回きりのことではなく、続けること、それを日常化することで心もついてきます。道元禅師はそう教えています。
私の一日は、事業所のお手洗いのスリッパを揃えることから始まります。