声を聴く
外部機関からケースの紹介がありました。その記録を読んでいて気になったことがあります。記録の最後の方に「だだし、日頃から嘘の話をすることがあり…」と書かれていました。
私は、障がいのある人が利用する事業所の経営をしています。日中活動やグループホーム、相談事業を実施しています。そこには、いろいろな事案があがってきます。そこであつかわれた記録に、冒頭の一言が書かれていました。
全部が真実
私たちの仕事では、いろいろな利用者からいろいろな話を聴きます。その中には、「本当に?」と思うような話があります。また、実際に、私の知っていることとは異なる話もあります。しかし、利用者本人にとっては、それも真実の一つです。
もし、利用者本人が意図的に嘘をついているのであれば、嘘をつかなければいけない背景を考えなければいけません。また、客観的な事実とは異なっていても、利用者本人にとっては事実であり、さらにそれによって辛い思いをしているのであれば、その辛さを軽減させられるよう支援をする必要があります。
また、記録に「嘘」と書いてしまうと誤解が生じます。まだ会ったことがない人、付き合いの短い人には、余計な先入観をあたえます。支援の基本はまっさらな状態で聴くことです。
しかし、実際の支援場面では、先入観に支配されていることがあります。
先入観に満ちた対応の例
利用者から電話相談がありました。ご本人の許可をとり、そのことを活動先の事業所担当者に話をすると「それって、電話をするための口実ですよ」と言われたことがあります。他にも「それって、いつも言ってますから」とか「あっ、それがその人の障害ですから」と言われることがあります。悲しくなります。
これでは、いつまでたっても利用者本位は実現しません。
どうやって聴く?どこで聴く?
行政の指導では、定期的に利用者の声を聴く機会を設けること、と言われます。そこで事業所は、定期的に利用者会議を開催し、利用者の声を聴きます。しかし、そこで聴ける声は、ごく一部です。
利用者の声を聴くためには、日常会話の中にある楽しそうな話や、困った話を集めておくことが大事です。支援者は、利用者が、同じことを繰り返し言葉にしていると「こだわり」と決めつけて問題視することがあります。しかし、そのこだわりは、気になって、気になって何度も口にしていることかもしれません。
利用者の何気ない日々の言葉の中に本音がかくれています。また、そこに次の事業展開もかくれています。たとえ「ん?」と思える話も大事にしなくてはいけません。