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北欧のメルカリを辞めてスイス資本の重電工業のABBに転職した理由と経緯

2023年の3月をもって「北欧のメルカリ」であるSchibstedを退職し、4月より、スイス・スウェーデン資本の重電工業のABB(アセア・ブラウン・ボベリ)にUXデザイナーとして転職した。

この会社は産業自動化/電力技術/etc.のエンジニアリング企業だ。日立やシーメンスと似たような会社、という比較が分かりやすいかもしれない。僕は勝手にそう思っている。

スイス・スウェーデン資本といってもフィンランドにも開発拠点があり(世界中に拠点があり日本にもある)エスポーの自宅から自転車で15分のオフィスなので、引き続きフィンランド暮らしだ。

引き続きフィンランド暮らし

前職場のSchibstedには2021年の2月から働いていたので、丸2年いたことになる。そこでの経験についてはこちらの記事にまとめてある:

ABBではまだ働きはじめて1ヶ月しか経っていないし、仕事の中身については書けないので今回の記事は実際の業務には触れず、フィンランドでの自分の転職活動の過程にフォーカスして書いてみたい。

転職した理由

1. 待遇面

前職のSchibstedでの待遇にそこまで不満はなかったものの、欧米だと給与を上げるには転職してしまうのが一番手っ取り早いというのも知っていた。2年という期間でSchibstedで十分実績も作れたし、そろそろ他のことにもチャレンジしたいなとも思った。

待遇には不満はあまりなかったものの、自分のタイトル(肩書き)には不満があった。日本での実務経験8年、こっちで修士を取得してさらに2年の実務経験があるにも関わらず、組織編成上、自分のタイトルに「シニア」という記載がないのは気がかりだった。これがあるとないのでは、その次のキャリアムーブへの優劣も違ってくる。会社の構造上「リードデザイナー」じゃない全てのデザイナーの肩書きは「プロダクトデザイナー」であったので、転職してシニアのタイトルを獲得するのが近道だと考えた。

2. 事業面

「北欧のメルカリ」というビジネスは、やはり北欧の中に閉じてしまっているように感じた。それが悪いとは全く思わなかったしむしろそれが強みでもあるが、もう少し世界的に展開しているビジネスに関わりたいという気持ちも薄々感じ始めていた。一方、ABBは「世界へのリーチ」という点においては広い裾野を持っているので魅力があった。

僕はSchibstedではフィンランド国内の不動産取引サイトのUXデザインを担当していたので、北欧の不動産マーケットについて大体のことは知ることができた。不動産UXチームではノルウェー、スウェーデンの同僚とも連携していたので各国の不動産事情の特性も知れた。仮に知らないことがあったとしても、どこにいけばそれを知ることができるか、というベースの知識も身につけることができたと思う。

転職の過程

転職しようと考え始めたのは2022年の12月頃。そこからレジュメ(履歴書)とポートフォリオを更新し、カバーレター(応募動機の手紙)も最新のテンプレートにした。

1. 職探し→応募

職探しにはLinkedInのみを使用した。フィンランド国内でも職探しサイトはいくつもあるものの、「UXデザイン」+「フィン語不要」で募集してるのはほぼLinkedInだけだろうなと考えた。ちょうど募集している会社がいくつかあったので、知ってる企業で興味のあるもの6社に応募した。

応募にあたり、全ての企業の要件がレジュメとカバーレターとポートフォリオの送付、というものだった。これは特にサプライズはなかった。レジュメとカバーレターの書き方には自信があったので、自分用に用意していたテンプレートをちょっとずつ変更して各企業に応募していった。

結果的に6つの企業に応募したうち、6社全てから面接の案内が来た。

2. 面接

大きな会社だと最初は人事の人との30分面談で、その後、チームの採用担当やデザイナー/エンジニアとの面接、など複数回の面接があった。面接もスムーズに行う自信があったが、ネットでインタビュー問答のおさらいをして準備した。面接後に落とされる、といったことはなかったので、全てうまくいったんだと思う。

3. ポートフォリオレビュー

そしてポートフォリオレビューがあった。今までやってきたプロジェクトをケーススタディとしてプレゼンする機会だ。そのプロジェクトの背景が何で、課題が何で、自分のプロセスが何であったか、そしてどういう結果を得たのかを説明する。もともとポートフォリオをそのように仕立てていたので、プレゼンもスムーズに行え、事前に「ここはツッコまれるだろうな」という点も予測していた。

4. デザインチャレンジ

いくつかの企業からは「デザインチャレンジ」なる課題も振られた。これはエンジニア職だとコーディングテストのようなものと同じかなと思う。要するにポートフォリオだけだと本当に本人がやったのかどうか怪しい部分も、この課題を通じてもうちょっと本人の能力を知れるというわけだ。だがこれは採用担当の目の前でやるわけではないので、自宅でプレッシャーがあまりない中でも完了できる(以前、別の機会でライブ・デザイニングなる、画面越しにデザイン作業するという課題を経験したこともある)。僕が今回こなしたデザインチャレンジも標準的なものだった。

5. 応募先の管理

応募した企業の管理はスプレッドシートに比較表を作ってまとめた。給与のレンジや、福利厚生の幅、知名度などのセグメントに分け、自分の希望順位を割り振っていった。

結果

6社全ての企業と選考を進める中、第1志望のABBからオファーが出そうだなと感じたので、その段階で既にオファーをもらっていた企業と、他の全ての企業に内定辞退・選考辞退の連絡をした。とても残念がられたので、こちらも悪い気がした。

内定を辞退するのは幾つになってもあまり軽くできるものではない。

しかし、担当者からは"No need to be sorry - that's just business, right?"「謝ることはない。まあ、それがビジネスってもんだよな?」とサラッと言ってくれた。

そしてその後、ABBからのオファーに正式に承諾をした。

2022年の12月から始めた転職活動は3ヶ月で終了した。

転職活動を経たまとめ

やはり人材の市場に定期的に接するというのは大事だと感じた。自分の市場価値を測ることができるし、今どんな職種でどんなスキルが必要されているのか、自身をアップデートすることができる。

また、2022年後半〜2023年はテック業界にとって辛い時期だった。世界を見渡すとGAFAMでもかなりのレイオフが行われている渦中、自分の在籍中一度もリストラをしなかったSchibstedはすごいなとも思ったし(フィンランドでは少なくともあまり簡単にリストラを行えないという事情もあるが)従業員を大事にしてくれた会社には感謝したい。冒頭では不満をこぼしたが、とても良いチームメイト達に恵まれ、楽しい事業に関わらせてもらえたことは大変ありがたい。

仲間とのお別れ会ではケーキをいただいた

欧米ではみんな「サッと転職する」というのは本当だなと肌で感じ取れた。引き継ぎもそんなに重いことはせず、やっていたことをドキュメントにまとめたり、figmaで次の人にわかるように整理しただけ。退職を報告した同僚にも上司にも「あーそうなのね、残念だけど次の職場でもgood luck!」みたいにドライにお別れ。送別会も開いてもらえ、次の職場での幸運を祈ってもらえた。同じタイミングで退職するエンジニアの仲間もいたし、代わりに新しく入ってくる人もいて全体的な人材の新陳代謝の良さも感じた

Schibstedからもらった会社グッズは質が良かった

結果的には応募した6社全てから選考の案内が来て、そのうちの第一希望の会社から希望通りのオファーをもらえた。選考過程では自分の強みや弱みも改めて把握できたし、マーケットでの自分の価値/ポジションも再認識できたと思う。プロセスと結果、双方において学びと発見の多い、満足のいく転職活動であった

今回の転職活動では選考自体では特に問題はなかったが、選考を進めていた他の企業への辞退/お断りが個人的に一番辛かったと思う。

But that's just business, right?

前職のオフィスのバリスタは恋しい(笑)

近況報告

フィンランドに来てからもうすぐ5年になるが、フィンランド語はやはり難しい。外食時や買い物に行くときなど、なるべく日常の生活の中ではフィンランド語のみを使う様にしている。

日々の勉強のモチベーションにと、2022年の11月に、フィンランドの国家語学能力証明検定であるYleiset kielitutkinnotのベーシックレベルを受験し、A2レベルに合格することができた。要するに初級だ。

フィン語検定のA2レベルに合格

証明書を見ると、自分のレベルだと「日常生活の様々なテーマについて、分かりやすく簡潔な言葉で話すことができる。短い単純な文章を理解し、日常生活のテーマに関する主要なポイントを把握することができる」ということになる。果たしてそれが本当かは怪しい

僕の低いレベルでは「多数の生徒 vs 一人の講師」という構図だと時間単位の学習効率が悪いので、preplyというサービスを通じてフィンランド語のプライベート講師からオンラインレッスンを45時間ほど履修した。良い講師に巡り会え、今も当該サービスを継続しフィン語会話レッスンを続けている。今年は一つ上のレベルであるB1の合格を目指したい。


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