日本の分断-切り離される非大卒若者たち-
今回は、吉川徹『日本の分断-切り離される非大卒若者たち-』(光文社新書 2018)を独断と偏見でまとめます。
分断が進む日本社会
アメリカや西欧で広がる分断社会。日本もこのままではその道をたどるかもしれません。
「分断」と一言で言っても、思想、性別、年齢、地域、格差、階級の分断など様々な実態があります。
その中で著者の吉川氏が最も強調するのが、
大卒者と非大卒者の分断、つまり「学歴」の分断です。
歴史を振り返れると、日本社会は、封建制の身分社会→階級社会→総中流社会→格差社会→貧困社会と表現することができます。
そしてその次に来る社会が分断社会であると予想されます。
分断社会は学歴の有無、つまり大卒者と非大卒者の差によって、生じるものです。
大卒者と非大卒者とのでは、QOL(生活の質)が大きく異なります。
第一に、地位、職業、地域、世帯年収などの(経済面)、
第二に、生活満足度、幸福感、主観的自由度などの(社会的メンタル面)、
第三に、仕事への関与、社会参加、政治関与、高級消費、文化的活動、教養、アカデミズム、海外志向、健康志向などの(社会的活動面)に大きな違いが生じると著者は言います。
このような学歴の分断は、是正する事が困難です。
大卒者は大卒者同士で結婚し、その子も大学に進学します。
非大卒者は非大卒同士で結婚し、その子は、大学に進学せずに就職する傾向にあるからです。
すなわち、学歴の分断は両親の教育への価値観や育った環境に随分と依存すると言えます。
これにより、今後ますますの分断社会が生み出されるのではないかと吉川氏は危惧しています。
本書では、現代日本社会の生きる人を、経済力、仕事、家族、地域、性別、年齢などの特性に明らかにし、
壮年と若年、男と女、大卒と非大卒の8つのグループに分けます。
その中で一番不利な境遇にいるのが、若年非大卒男性です。
彼らは、道路、建物の建設、機械や自動車のメンテナンスや修理、外食や小売業などの日本社会を支える重要な人々なのですが、待遇はあまり良くなく、長時間の労働を余儀なくされています。
またそういった労働も今後は、大卒者が担い、非大卒者は労働市場から締め出されることもあるかもしれません。
現在は大学進学の割合が増加傾向にあり、20年後には大卒者:非大卒者は2:1の割合になると予想されていますが、経済発展やAIの隆盛により、知的労働はAIに代わり、肉体労働は大卒者が担うことも予想されるからです。
つまり、今後、大卒者の割合が増加する一方で、非大卒者はその立場が不利になる傾向になります。
更には、生活の質にも大きな違いが生じ、ますます社会が分断されていくのではないか、著者はそのように論じます。
まとめ
今回は、吉川徹『日本の分断-切り離される非大卒若者たち-』(光文社新書 2018)を独断と偏見でまとめました。
私が、この本を読んだ理由は、大学の教職レポートの題材にするためでした。
本書でも指摘されていますが、学歴の分断はなかなか禁句というか、公の前ではタブー視されている問題です。
実際、私も高校生の時には、学歴のことや社会の分断のことなど先生に何も言われ無かったですし、考えもしていませんでした。
しかし私が教師なら、こういった事実を生徒に伝えてあげる必要があると思います。
教師と言うものは、授業を教えるだけでなく、生徒を良い人生に導くという役割があると思うからです。
だからこそ、人生の事、大学の事、仕事の事、生活の事をしっかりと生徒に伝えてあげる必要があります。
それが良い人生に導いてあげるという先生の役割だと思います。
また学歴の有無についての異論はあるでしょうが、
あくまでもこれは日本社会を一般化したらこの傾向にあるという事ですので、その点は留意しなければいけません。