2024/10/3
外で仕事をすることが多い私は、飽き性ゆえか、固定の仕事場を持たない。昨日は、たまたま近所で深夜営業しているシーシャ屋を見つけたので、立ち寄ることにした。
入り口を入って左手にメインスペースがあり、その中はバーカウンターと踊り場に分けられている。踊り場の壁沿いには客用の椅子がLの字で並べられていて、広さは八畳くらいに見える。
照明はバーカウンターに向けられていて、客が座る方にはかすかに光が届いているくらいで、薄暗く設定されている。
バーカウンターにきれいに並べられたウィスキーたちはどこか自信ありげで、後ろを流れるジャズとシーシャを吸った時に出る音が心地よい。
客は私以外に二人いた。
30代のショップ店員のような見た目の人と、20代前半のベンチャー企業二年生に見える若者。
彼らは“黙々”とシーシャを吸っていた。店内には余計な音が一つもなく、私の背筋は伸びた。
二人の姿に少し圧倒されながらも、私も同じようにシーシャに集中した。普段よりも多く吸ったような気がする。
しばらくするとショップ店員の方に電話がかかってきた。
彼はそっと立ち上がり、店の外へ出る。
電話をその場でしなかったことに、この空間への敬意を感じ、客であるはずの私が嬉しかった。
数分すると、彼は戻ってきて何事もなかったかのようにまたシーシャを吸った。
会社を辞め、独立してから二年になる私は、この店の”しきたり“にあわせることで社会と一体化したような気になり、とても居心地が良かった。
二人が帰った後も、私は閉店まで店に残っていた。
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