【論文要約】望月昭(1989)福祉実践の方法論としての行動分析学‐社会福祉と心理学の新しい関係‐. 社会福祉学, 30(2), 64-84.

 徹底的行動主義(radical behaviorism: skinner, 1938)の立場から福祉実践の方法論を検討し、支援枠組みを提案する。徹底的行動主義は方法論的行動主義とは異なり、またワトソンの初期行動主義「素朴環境論」とは一線を画する。
 今日、行動療法やオペラント条件づけの知名度は向上している。しかし、技術面が強調されるに留まっている。徹底的行動主義の見方や方法まで取り上げられることは少ない。徹底的行動主義を土台にする行動分析学の研究では、交通問題等を取り上げたものもある。
 徹底的行動主義は療法的アプローチまたは個人的属性だけでなく、生活・社会環境をも対象とする。徹底的行動主義では、利用者個人を取り巻く処遇形式や制度のシステム、日常の生活全体を体系だってとらえることを要請する。
 行動分析学の枠組み(三項随伴性)をもちいて、言語行動(要求や記述言語)の成立を目指す。
 行動は、個体の属性としてでなく、すでに環境との交互作用の表現である。そのように認識された行動の単位というものは、その結果事象から決定される。
 行動の成立、何をもって当該の行動を定義するかは、個体の反応の変化や有り様にのみ依存するのでなく、結果事象の配置を決定する人間によって恣意的に定められる。
 利用者だけでなく、実践者や研究者の行動、現場を取り巻く制度等をも対象に含まれる。行動は個体と環境との関係として成立している。関係者は分担関係でなく、連携関係であるべきである。
 支援策の立案、実施、修正、終結にあたっては、対象者個人ごとという個別性、確実に行動に作用する変数の同定とその再現性、より最適にしていくという方向性、支援の効果測定や般化がかかわってくる。
 利用者の行動の変更を目的とした強化随伴操作だけでなく、同時に選択可能な複数の弁別刺激の用意、利用者だけに変化をせまるのではなく、どれだけ機能的な行動の実現が可能になるのかが求められる(自発行動の尊重、選択肢の充実・保障)。
 障害については、「心身の障害をもつという観点からでなく、障害をもつ人間が社会生活を営むという視点からとらえる」。リッチモンドのソーシャルケースワークによる初期の定義にも、個人と環境との関係がふれられている。
 ソーシャルワークケースワークの方法論として、システムアプローチやエコロジカルアプローチが登場し、環境の中の人間、個人と環境との相互作用が焦点化されてきている。しかし、次元を機能的につなぐ論理、実行可能な枠組みはみられないのが現状といえる。

*ブログ「生活と人間行動」の記事(2005年1月7日)より再記。

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