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なぜベストを尽くさないのか?
油断でピンチを招くアホは面白いか?
物語で、よく油断がピンチを招くことがある。
人間というものは常にベストを尽くせる訳じゃない。
そんなものは当たり前。
常に最善、常に最強、一瞬の隙も見せない……
それはもはや人間と呼べない何かだ。
相手を倒して勝利を喜ぶが、死んだかどうかの確認をしない。
強くなったことで過信が生まれ、いつもはしない無茶な行動を取る。
物語では多く見る出来事だ。
つまり、それ自体は悪いものではないという裏返しでもある。
だが、私はその多くをクソつまらんと考えている。
どの口が言うんだ、とも思うだろうが聞いてくれ。
油断によるピンチをそのまま描く、それはただの怠慢だと思うんだ。
やれば良かったことを、やらなかった。
それで人間らしさが生まれることには同意する。
しかし、物語としては何が面白いのか理解できない。
例え油断であろうとも。
物語には「理由」が必要なんだ。
それが誰かに読ませる、そんな作品である以上は。
油断にだって理由はある。
私だってこれまで幾つものピンチを書いてきた。
物語に谷を作る為に、キャラクターたちの成長の為に。
それが必要な時はある。
だが今考えれば面白くないピンチだと思うものばかりだ。
調子に乗ったり、裏切られたり、しょうもない油断をしたり。
見ていてハラハラドキドキだとか、
楽しさのような感情を揺さぶられるようなものを描けていなかった。
ならそれを描くにはどうすればいいのか。
さっきも言った通り「理由」を作ること。
これが一番の対策だ。
だって理由があればユーザーはこう思えるんだから。
「なら、油断しても仕方ない」と。
理由があったら油断にならないんじゃないか?
そんな訳がない。
物事には理由があるのだ。
欠伸が出る理由は、脳の温度が上がったから。
喧嘩の理由は沢山あるが、お互いの意見が認められないことが大半。
勇者が魔王を倒す理由は、世界や人々を救う為……だったりする。
人にはどうしようもない天災にだって理由はある。
地震はプレート同士がぶつかり、強い力が生まれることが理由だ。
洪水は雨量の増加によって河川のキャパシティを超えたから。
あらゆるものにあるんだ。
人の行動である「油断」にだって理由は存在すると言ってもいい。
納得する油断が必要だ。
油断とは「気を緩めたり、不注意であること」を指している。
つまりは油断するキャラクターが、
「気を緩める・不注意をする」理由を付けてやればユーザーは納得する。
これで油断が招いたピンチに対する感じ方は大きく変わる。
前項で言った通り「油断しても仕方ない」と共感してもらえるようになる。
共感と感情移入は作品においても重要な要素。
「どれだけ物語やキャラにのめり込めるか」という点を担っているから、
どうやって共感・感情移入させるかは意識しておいた方がいい。
その手段の一つがこの「油断」だ。
そんな訳で、キャラクターを油断させたい時にはその理由を描こう。
それもしっかりと納得出来るものを。
油断が上手く出来ているかを探すには?
しかしどこに油断があるか分からないかもしれない。
また自分には気付けない油断があるかも。
そんな時には書き終わった後、ピンチに対して逆算で考えていこう。
一つのピンチに対してその原因となっている箇所を考える。
原因は一つとは限らない、むしろ複数あった方がいい。
そしてその原因に対して、また原因を考える。
以前FANBOXの方で紹介したことがある、
「5WHY(なぜなぜ分析)」と似たような同じだ。
しかし5回もやってられない場合は2、3回でも充分だ。
それ以上はユーザーが気付けないような小さな原因になってしまうから。
そうして導き出した原因の中にキャラクターの油断がないかを探そう。
つまりはキャラクターの行動が原因となっている部分だ。
そして油断があれば、その油断に対しての理由があるかを調べて……
という流れで考えていくと分かるはずだ。
その油断が納得させられているか、
の基準は人によって違うから一概には言えない。
それでも提言してみると……
・3つ以上の理由がある
・どの理由も客観的に見て共感できる(当たり前の行動である)
といった感じだろうか。
色々と述べてみたが、やることは至って簡単。
構造を分析、そして改善。
ただそれだけだ。
客観的な思考を得るには他人も使え。
あと、人に読んでもらうことも良い方法だ。
より客観的な視点を得ることが出来る。
これは油断に限らずあらゆる欠点を見つけられる。
その代わり自分の駄目な部分が突きつけられるので、
精神ダメージを負うだろうが……前に進むには必要な犠牲だ。
もちろんただ読んでもらうのではなく、少し穿った見方をしてもらう。
「共感できるか」「違和感はないか」「ストレスはないか」
といった点を踏まえて、メモしながら読んでもらわなければならない。
他人への負担が大きい……
これをしてもらったら晩飯でも奢ってあげような。
長い作品ならもっと奢ってさしあげろ。無礼なきように。
という感じで考えれば、納得させられる油断を作ることが出来る。
まあ方法は一つじゃない。
だから参考にしてみてくれると嬉しい。
ストレス塗れな物語を作らぬように。
最高のピンチを描けるように。
ファイトだ。
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