『それでも町は廻っている』から見る、自分の死生観
『それでも町は廻っている』通称それ町。
好きな漫画は?と聞かれたら真っ先にこれをあげるだろう。
次にスケットダンス。
下町の商店街を舞台に繰り広げられる日常系コメディ漫画だが(コメディ漫画とギャグ漫画は違うよ)SF要素もあったり、推理要素(?)もあったりバラエティに富んでいる内容である。
なぜこの漫画が好きなのかというとズバリ「憧れ」である。
超主人公体質とか、商店街のあったかい人々との絆とか、学校での立ち位置とか、もう全てここに詰まっている。
それでも主人公「嵐山歩鳥」のアホさが全く嫌味を消している。
あらすじはここまでとして、このそれ町のお話の中で、主人公歩鳥がトラックに轢かれて死んでしまうお話がある。
天使に連れて行かれた先は天国…というかお役所。
「はい、事故の人はこっち〜」とかいい加減に案内されて、現世のお役所仕事と何も変わんないの。
※「死役所」という漫画(ドラマもあるよ)でも似たような設定だけど、あっちはもっとエグいね
歩鳥は自分が死んでみんな悲しんでいるんだろうな〜って軽い気持ちで現世が見える望遠鏡でのぞいてみると、自分の想像以上に歩鳥の死を受け入れられない人々の姿が見える。
結局役所の手違いみたいな感じで現世に戻れることになった歩鳥。
このお話で描かれている死後の世界のお話、当時10代の僕はものすごく感銘を受けた。「死」という得体の知れない恐怖に対して、のほほんとある種の答えを提示してくれた。
「結局死んでも今みたい変わらない世界があるのかもしれない。それって結構悪くないのかも知れない。」
こう考えに至ったのは、自分の死ではなく、他人の死。
つまり、いなくなってしまった人達に対して、めちゃくちゃに悲観して絶望するのではなく、どこかでほっと安心して「ああいう世界があるかも知れないから、何事もシリアスに考えるのはよそう」と思えるようになった。
それでも現世に残された僕らにとってはとても辛いものがあるけれど、当事者も実は「いや〜こんなことになるとは思ってなかった。手続きめんどくさいな〜そんなに悲しむなよ〜」って感じで、ギャップがあるのかも知れないって思うことで、当時の僕は救われた気がする。このお話を見たのは2011年だったか、後だったか。
このお話はアニメでは最終回となっていて、もしかしたらどっかのサブスクで見れるかも知れないので見つけたらぜひご覧になってください。
それ町は前編オムニバスでほとんど一話完結だし、時系列もバラバラ。
※この時系列について、漫画版の最終回ではものすごいトリックがある!!!
アニメ版は評判が良くなかったりだとかそういう声も多いが、僕としてはかなりよかった。声優さん(cv.小見川千明)が歩鳥そのものだし、制作会社のシャフトさんもめちゃくちゃ合ってたし。紺先輩との掛け合いも素晴らしかった。
このアニメはもう10年以上前のものとなっており、紺先輩の声優さんはもう引退しており、ジョセフィーヌの声優さんも2017年にお亡くなりになっている。
知った時はとても悲しかったが、真っ先におのお話を思い出した。
このお話は僕の死生観を変えてくれた、というお話でした。