ウィステリア

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『自殺にいたる病』⑦自殺前夜ー修羅場ー

~仕事を早退したボクは、玄関で見知らぬ靴を見つけた。あってほしくなかった想像が的中したのだろうか。~ 寝室のドアを蹴り開いたボクの目に飛び込んできたのは、半裸の妻と知らない男。 刹那の思考。瞬間的にさまざまな言葉が頭を駆け巡る。 襲われているのか。もしかしたら男は強姦魔なのか。 しかし、目の前の男女の密着の様子は仲の良いカップルにしか見えない。 ベッド上の2人は、まるで化物でも見るかのような表情で声も出ない様子だった。 ボクは2人に近づきながら、できるだけ冷静を装

    • 『自殺にいたる病』⑥自殺前夜ー発覚ー

      ~知らない方がいいことも世の中にはある。知ってしまうがゆえに、人としての悩みや苦しみが増える。はたして妻の秘密は知らない方がよかったのだろうか?今も答えは出せていない。~ 妻は相変わらず新居には帰らず、実家で過ごす日々が続いた。 ボクはすっかり不眠になってしまい、仕事に行くのがやっとの状態。鏡を見ると目の下にクマができていた。夏の暑さは年々勢力を増し、ますますボクの体力と気力を奪っていった。 この頃はすでに妻からはメールの返信も来なくなっていて、ボクもその日の出来事や出

      • 『自殺にいたる病』⑤自殺前夜ー回想ー

        ~妻の隠し事のヒントが過去にあるような気がした。高校生で交際を始めて10年を経て結婚。ボクは彼女のことを何でも知っているつもりだった~ 妻の実家はボクの実家とは隣接する市ではあったが、当然中学校は学区が違かった。彼女とは学区を越境できる高校生になってからの交際。ボクは異性との交際は初めてで浮かれていたこともあり、デリカシーのない質問をしたことが何度かあった。 「中学生の頃って好きな男子はいたの?」 他愛の無い質問のつもりだった。 「すごく好きな人がいたけど…ちょっ

        • 『自殺にいたる病』④自殺前夜ー予感ー

          ~妻が「隠し事」をしている。彼女の様子でそう確信した。しかし、いったい何を隠しているのか、想像はするものの思いつかない。それほどに妻のことを信頼していた~ 次の休みの日、妻から電話があった。 「ごめんなさい、ちょっと友だちと会ってたの」 あんな遅い時間に?とふと頭をよぎったが、ボクは穏やかに返事をした。 「そっか、まあ、たまにはそういう時間も必要だよね」 すると妻はなぜか少し冷たい口調で、「ねぇ…、誰と会ってたか、とか聞かないの?」と、ボクの予想しない言葉を投げてきた

        『自殺にいたる病』⑦自殺前夜ー修羅場ー

          『自殺にいたる病』③自殺前夜ー不穏な気配ー

          ~相手を「許すこと」こそ最上の優しさだと信じていた。ただ、それは争いを避ける術に過ぎず、最凶の攻撃になってしまうことに、あのときは気づけなかった~ やがてNICUから子どもたちは退院。ただ、ボクが昇進したばかりでどうしても忙しい状態だった。また双子で世話が大変であったことから、妻は母親がいる実家が安心ということで、そのまま子どもたちは妻の実家で過ごすことに決まった。 妻は努力家で一部上場企業の総合職として仕事をしていたが、当時、妻は出産と育児に専念できるよう妊娠が分か

          『自殺にいたる病』③自殺前夜ー不穏な気配ー

          『自殺にいたる病』②自殺前夜ー妻の隠し事ー

          ~あのときボクは、もっともっと妻に寄り添って、その不安や心配を共有すべきだったと、今も後悔することがある~ 二卵性双生児で生まれた子どもたちは未熟児として生まれて、親として抱くこともできず、NICUの保育器で過ごしていた。保育器の名札には妻と決めた名前があり、まだ目も開かないか弱い存在をガラス越しに見ていることしかできずにいた。 そして、彼らは約1ヶ月の間を懸命に保育器で過ごした。 妻は退院してからも彼女は新居には帰らず、産後のケアという理由で実家に引きこもるようになっ

          『自殺にいたる病』②自殺前夜ー妻の隠し事ー

          『自殺にいたる病』①自殺前夜ー子どもの誕生ー

          ~あのときのボクは「若い」ことを言い訳にして、嫌なから逃げ、ごまかし続けていた。失ったものは二度と取り返せないのだろうか~ ここ数年、日本の夏は異常な暑さになっている。 ただ、僕にとって2006年の夏は特別な暑さだったことが記憶に残っている。 当時、僕は28歳。 前年に子どもが産まれていた。 二卵性の双子だった。出産は妻の努力があって普通分娩で生まれたが共に未熟児。出産後すぐにNICUの保育器に入ったため、ガラスを挟んで初めての対面。感動のあまり意図せず涙が出たのを覚

          『自殺にいたる病』①自殺前夜ー子どもの誕生ー

          はじめましての投稿

          これから無理ないところで文章を投稿していこうと思っています。 まず、このページをみてくれた方々に感謝(^ω^) 現在アラフィフのオジサン。20代後半にうつ病発症から自殺未遂をしてしまい、いろいろ失いつつも今を生きています。 なぜ、自殺決意に至ったのか、生き残り思うことは何か。 同時にうつ病からの寛解とその過程で考えた死生観など、駄文を綴っていきたいと考えています。

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