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脆弱性は心理的安全性:サラリーマンが幸せになる方法 その47
これは、サラリーマンが幸せになるために「ありたい自分( being )を軸に持ち、ありたい自分を良好な状態( well-being )にし続けること」について書かれた note です。
心理的安全性。サラリーマンの世界では、聞かない日は無いくらい流行っていますが、私を含め、実現する方法をちゃんと分かってる人は少ないように思います。そんな中ある要素が非常に強く関連していることに気が付きました。それはヴァルネラビリティ(脆弱性)です。今回は弱さについて考察していきます。
まず心理的安全性とは何か?
ことの発端は Google の発表したこのプロジェクト成果。
この調査結果が切っ掛けで爆発的に世の中に知られるようになりました。ここでは心理的安全性をこう定義しています。
心理的安全性とは、対人関係においてリスクある行動を取ったときの結果に対する個人の認知の仕方、つまり、「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうかを意味します。
また、色々お付き合いのある JUAS の「ダイバーシティ&インクルージョン研究会」では、ダイバーシティ=多様性、インクルージョン=心理的安全性と解釈されていて(すこし乱暴なまとめですが)、D&I においても重要と定めています。そして「心理的安全性」という言葉の創造者エイミー・C・エドモンドソン教授が、心理的安全性を高めるリーダーの行動として、以下の8項目を提唱していることを教えてくれました。
① 直接話のできる、親しみやすい人になる。
② 現在持っている知識の限界を認める。
③ 自分もよく間違うことを積極的に示す。
④ 参加を促す。
⑤ 失敗は学習する機会であることを強調する。
⑥ 具体的な言葉を使う。
⑦ メンバーの役割(責任範囲)を明確に示す。
⑧ 成果を評価する。
出典:チームが機能するとはどういうことか
著者:エイミー・C・エドモンドソン
整理すると、心理的安全性とは「チーム内で恐れは不要と信じられる状態」と言い換えられると思います。そして恐れとは「チャレンジに対する失敗・邪険な態度・叱責などにいだく感情」と読み取れます。これらを踏まえて深掘りしていきます。
一歩踏み出せない
大きな誤解を生んでいるのが心理的安全性=ぬるま湯、という解釈。先にまとめたように、定義されているのはチャレンジに対するフィードバックの安心感なんですね。裏を返せばチャレンジを期待されている状態なんです。
このチャレンジにブレーキをかけるのは何か?
恐れです。
では何を恐れるのか?
恥の感情と報復です。
失敗したり、無知をさらしたり、といった結果そのものではなく、結果に対する他者からのネガティブなフィードバックによって、チャレンジを後悔し自分自身を恥じ入る感情が沸く。また他者の嫌悪感をひき起し仕返しされてしまう。これらを恐れて行動しなくる。
そうならない安全な環境が心理的安全性という訳です。
勇気
「チーム内で恐れは不要と信じられる状態」
とは他者を信頼している状態ですが、では信頼はどうやって築くのでしょうか。答えは、お友達の美容師アラシロタカノリさんが教えてくれた「本当の勇気は「弱さ」を認めること(ブレネー・ブラウン著)」にありました。
TEDx に動画がありますのでこちらの方が良いかも知れません。動画に興味を持ったら著書もどうぞ。
TEDx から抜粋します。
・恥の経験のない人はつながりや共感を持ちえない
・恥とは自分が十分ではないと感じる誰もがもつ感情
・深い愛情を感じている人は、自分が愛されるに値すると信じている
・そうした人は、自分が不十分でもいいと思える「勇気」をもつ
・勇気のある人は心の弱さ( vulnerability )を受入れていた
・心を弱くするものこそ自分を美しくすると信じている
・人間は辛い感情だけを選択的にマヒさせられない
・だから辛い感情と一緒に喜びや感謝もマヒさせてしまう
・心を正直にさらけだし、それをあるがまま愛すること
・この自分でいいのだと信じること
などなど。
高いレベルで関係性を感じている人は、自分の心の弱さを受入れ、さらけ出し、不十分でいいと信じているというのです。そしてそれを「勇気」と呼んでいます。
他者を信じている人とは自分から弱さをさらけ出す勇気を持っている人なのだそうです。
この心の弱さがヴァルネラビリティ(脆弱性)です。
脆弱性
IT業界の人は少し戸惑ったかもしれません。ITでは、脆弱性とはOSやソフトウェアにおいて、プログラムの不具合や設計上のミスが原因となって発生した情報セキュリティ上の欠陥のことを言います。セキュリティーホールとも呼ばれます。
破壊工作や情報漏洩を防ぐため、脆弱性を発見したら速やかに原因の除去または蓋をして安全性を保つ必要があります。
しかし人間の世界から見ると逆で、自分の脆弱性を受入れ、それを外部に晒すことで、深い愛と関係性を得られるようになるのだと言います。
ブラウン教授によると、自分が十分ではないという感情(恥)を持たない人は居ない、と研究で分かったそうです。しかしその恥を恐れ「恥をかかないように行動する人」や「恥に無感覚になる人」は、愛や関係性をあまり得られないことも分かったそうです。
信頼できる人がいる > 何でも話せるようになる > 関係性が深まる
ではなく、
何でも話すようにする > 信頼できる人ができる > 関係性が深まる
だったのです。
本当の自分をさらした経験
前回、私は深層心理の奥底に思ってもいなかった自分の本当の姿を見つけた話を書きました。
この出来事で私は、ありのままの(恥ずかしい)自分を認知し、受入れ、妻にそれを自己開示しました。それも実はこの直近にヴァルネラビリティの概念を知っていたから何も恐れず自然にできたという訳なんです。
恐らく以前の私では、こんなに素直に自分をさらせなかったでしょう。
妻も心から受入れてくれ、また心の弱さをさらしたおかげで、互いの信頼関係が強くなった感覚を得られました。
自分がやったからよく分かります。
実は勇気があるから自分をさらせるのではありません。
自分をさらしたから相手を信じる勇気を得られたのです。
光のさす場所
ブラウン教授は著書でこう書いています。
人間が経験しうるもっとも恐ろしく破壊的な感情 は、心理的孤立である。
(ジーン・ベイ カー・ミラー&アイリーン・スタイバー)
私達は自分を愛するようにしか他人を愛せない
本来の欠けのある自分を見せ ないと、本当の意味で所属することはできない。だから、帰属意識は自己受容のレベルを超えることはできないのである。
「すべてのものにはひびがあり、光はそこから差し込んでくる」
(レナード・コーエン「アンセム」の一節)
私達の弱さにこそ光は宿り、弱さをさらせる者こそ他者と信頼関係を結べるのです。ヴァルネラビリティこそが勇気であり、弱さも醜さも傲慢さも、ありのままの自分を受入れられることがヴァルネラビリティなんだと思います。
逆説的ですが、自分の弱さを認め、自己開示し、相手を信頼することが、心理的安全性の最も大切な鍵なんだと教えられました。
ヴァルネラビリティ(心の弱さ)
是非、覚えてください。
まとめ
1.心理的安全性とは恐れは不要と感じる信頼。
2.恐れとは恥。恥をさらすことこそが勇気。
3.ありのままの自分をさらすと相手を信頼する勇気が得られる。
実は心理的安全性という言葉をつくったエイミー・C・エドモンドソン教授は、心理的安全性をもたらすリーダーの特徴として、「Empathy(共感)」「Curiosity(好奇心)」「Mutual Respect(相互信頼)」「Vulnerability(脆弱性)」「「 don’t know mindset」(私には知らないことがあるというマインドセット)」の5つを提示しています。でも心理的安全性の文脈で、この5要素を知ってる人はあまり居ないのではないでしょうか。
色々さがしても Vulnerability(脆弱性)と心理的安全性を合わせて語っている情報はほとんど見つけられませんでした。ここを深掘りできたのはすごく良かったなと感じています。
この内省があたなのヒントになれば幸いです。