インフルエンサーとの関係づくりは文脈の選定から
先日のDIGIDAYのカンファレンスに参加させていただき、インフルエンサーの議論がいよいよその「熱量」をどうマネジメントするかという領域に入ってきたことを実感し、顧客の熱量というものにずっと着目してきたことが間違いではなかったと確信に至ってきました。
とても貴重なカンファレンスで多くの気づきがあったのですが、少し自分なりにまとめて整理してみたいと思います。
文脈価値経済の到来
こちらの記事にも書いたとおり、インスタグラムのハッシュタグフォローというのは、まさに人々がそのブランドやコンテンツを"どのように楽しんでいるのか"という「HOW」に着目し、そこに経済圏が生まれるということを表しているものだと思っています。ブランドのファンはブランドが持っているひとつの価値にのみ熱狂するのではなく、ファン目線でさまざまな価値に熱狂するという性質があります。ハッシュタグのフォロー機能は見事にそのインサイトをついたものだと思います。
インスタのハッシュタグをつける行為というのは、まさにそれが表面化しているものだと思っていまして、自社のブランドのまわりにどのようなハッシュタグがつけられているかを定期的に追いかけていくことは、自社のブランドが今どんな輪郭でユーザーに受け入れられているかを知るための大きなヒントになります。
「ブランドの世界観」をどう捉えるかが変わってきた
これまで「ブランドをどうつくるか」という議論のなかでは、ブランドがしっかりとアイデンティティを確立し、ビジョンを伝え、ひとつの世界観で統一したメッセージをユーザーに刷り込み続けることが重要と言われてきました。
しかし、SNSでの情報接触が日常になってきたなかで、ブランドが自分たちのことをどのように伝えるかということと同じぐらい、ユーザーが(主にSNSを経由して)どのようにブランドを捉えているかということそのものが、ブランドの輪郭をつくるようになってきたのではないかと思います。その捉えられ方はひとつではなく、様々な角度からブランドの輪郭はかたちづくられています。ブランドと関連したハッシュタグは、ユーザーがブランドに向けている熱量の種類とも言えるかもしれません。
どのようにハッシュタグを選定するか
このような変化のなかで、これからどのようにインフルエンサーを選定していけばよいのでしょうか。
僕個人的にはインフルエンサーの選定は「人の選定」の前に、まず「文脈の選定」があるべきだと思っています。インフルエンサーを活用する目的が「単なる認知」なのであれば、とにかくフォロワーの多いインフルエンサー(というかタレント)に商品を持ってインスタに画像を投稿してもらえばいいのかもしれません。(たぶん今そんな安直にインフルエンサー活用をするところは減ってきていると思いますが)
そうではなく、インフルエンサーの活用目的が、そのフォロワーに対して商品やブランドの魅力を伝え、ファンになってもらうためのものであれば、単純にフォロワーの多い人を選定することがインフルエンサーの活用ではないはずです。フォロワーに対してその魅力を伝え、フォロワーを魅了するためには、ブランドやそれを媒介するインフルエンサーの持つ「熱量」が不可欠です。
これはDIGIDAYのカンファレンスでLDH JAPANの長瀬さんもおっしゃっていたとおり、人を介したコミュニケーションがマーケティングのベースになっていくうえでは、ブランドの「熱」があるかどうかによってそのまわりにいる人たちが魅了されるかどうかが変わってきます。
(ここはまさに「熱狂」と通じるところがあると思い、プレゼンを聞きながら勝手に震えていました)
ではブランドに向けられた「熱」をどのように捉えていくか。
そのヒントを提供してくれるのがハッシュタグだと思います。ユーザーが投稿につけているハッシュタグこそが、ブランドに向けられた熱量の文脈を表しています。たとえばファッションを例にとると、「#〇〇部」「#〇〇コーデ」「#上下〇〇」・・・などのハッシュタグはその文脈を表現しているといえると思います。
ただ、このハッシュタグのなかにもブランドがインフルエンサー活用を考えるうえで、選定すべきものとそうでないものが存在します。
さきほどのとおり、インフルエンサーから伝えられた熱によって、フォロワーを魅了していくためには、インフルエンサーのまわりにどのようなフォロワー群が形成されているかということが大事になります。つまり、そのハッシュタグがTribeを形成しやすいものなのかどうかということがポイントです。まさにこのTribeの分類をされていたのがニューバランスの鈴木さんのプレゼンでした。
このようなTribeの分類のなかで、われわれがインフルエンサーと関係をつくっていくときには、どのような種類のハッシュタグに着目していくといいのでしょうか。
僕は以下のような象限で整理するといいのではないかと思います。
このようにハッシュタグもブランドとの距離感、Tribeが形成されているかどうかで区切ることができます。この象限のなかで、ブランドの魅力を既存のファン層へ再認識してもらいたい場合は右上の象限のハッシュタグに注目すべきだと思いますし、ブランドの魅力を新たなファン層へ伝えたいという場合は右下の象限のハッシュタグに注目すべきだと思います。
ハッシュタグにもTribeを形成しやすいものとそうでないものがあります。たとえばふたたびファッションを例にとると「#〇〇部」はあきらかにそこに集団があることを意識したハッシュタグですし、逆に「#ootd」や「#今日のコーデ」などのハッシュタグはTribeをそこまで強く意識していないハッシュタグといえると思います。
このように、フォロワーをどのように魅了すべきかということを考えた場合、インフルエンサーがどれだけの影響力を持っているかだけではそのインフルエンサーをアサインすることが正しいのかどうかを判断することはできません。
ブランドの熱量を正しく伝え、まわりにいるフォロワーを魅了するためには「誰をアサインするか」ではなく、「どんな文脈で伝えるか」からインフルエンサーのマネジメントを考えることが大事だと思います。
その他、DIGIDAYの様子は諸先輩方の記事で詳しく分かります。
▼徳力さんのnote
▼しまこさんのnote
▼しまこさんがまとめてくださったtogetter