人材派遣利用マニュアル ~人材派遣利用のルール~ ⑤雇用安定措置
人材派遣利用マニュアル ~人材派遣利用のルール~編を解説しています。
人材派遣を利用する際に知っておくと良いルールの紹介です。
今日は、第五弾!「雇用安定措置」いってみましょー!
「ひたすら具体的」で「生々しく」人材派遣利用の教科書を作るという狙いなので、僕の独断で、派遣先企業が知っておくべきことについて超実践的に解説していきます。
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雇用安定措置とは
実務をすでに行っている派遣先担当者の中には、同じ派遣労働者が3年の個人単位の抵触日になるときに、派遣会社から
・「直接雇用にできませんか?」と聞かれる
・「無期雇用派遣で同じ方を受け入れますか?」と聞かれる
・「他の派遣労働者に変更しますか?」
等と聞かれると認識している方がいるかもしれません。
この時、派遣会社側に起こっていることが、雇用安定措置という義務であり、その内容を知っておいていただけると、3年目に起こるこの現象をご理解いただきやすいと思います。(これそのものが雇用安定措置だと思っている派遣先もいますが、それは違います)
前回、派遣労働者個人単位の抵触日についてお話しました。
そこでも出てきました、厚生労働省の「平成27年 労働者派遣法改正法の概要」(2015年の派遣法改正のリーフレット)↓によりますと、
雇用安定措置とは、
同一の組織単位に継続して1年以上派遣される見込みがあるなど一定の場合に、派遣労働者の派遣終了後の雇用を継続させるための措置(雇用安定措置)を講じることが派遣元事業主に義務付けられているもので、その措置は以下の4つです。
とあります。
以下の4つとは、
です。
また、ここでいう、「同一の組織単位に継続して1年以上派遣される見込みがあるなど一定の場合」というのは、下記の定義になります。
まとめた形で、言い換えると、
同一の組織単位に継続して3年間派遣される見込みがある方は義務。同一の組織単位に継続して1年以上3年未満の見込み、もしくは派遣先が変わろうとも今の派遣会社に1年以上雇用されている方、は努力義務。として、以下の4つの、雇用が安定するための措置をしなくてはならない。
①派遣先への直接雇用の依頼
②新たな派遣先の提供
③派遣元事業主による無期雇用
④その他雇用の安定を図るために必要な措置
と言えます。
ちなみに、①直接雇用の依頼は、派遣会社が直接雇用の依頼をすることが義務であり、結果として直接雇用に至ったか否かは問題になりません。
重要なのは、派遣先ではなく、「派遣会社の義務」ということです。これをごちゃ混ぜにすると、分かりにくいので気を付けてください。
さて、ここまでこのマガジンを読んでいる人は、ある程度、イメージできると思うのですが、「雇用安定措置」の意図を説明します。
前提として、1年を超えて、特に3年を超えて同じ派遣先で同じ仕事に従事している方は、キャリア開発の観点から、同じ仕事に縛り付けてキャリアアップの機会を奪いたくないという考えがあります。
ただ、何でもかんでも違う仕事をさせたいわけではなくて、キャリア開発の結果、雇用が安定して欲しいというのが目的なのです。
なので、
派遣先での直接雇用(できれば正社員)を希望する人にはその道を・・・①
違う派遣先でキャリア開発していきたい方にはその道を・・・②
どっちも無理なら、派遣元が雇用しなよ・・・③
まぁ、それか紹介予定派遣や雇ったままで給与払いながら就労支援するとか・・・④
ということになっているのです。
特に③が特徴を表していますよね。もう、いっそ、派遣会社が雇え!と。
この法律を初めて知ったときに、「派遣会社が全部雇ってたら潰れるわ!」って言ってた人がいますが(中小の派遣会社の社長でした。もう潰れたけど。)、これ、法律ですから。そのように改正されたということは法律を守ったら潰れてしまう会社なんて潰れろってことなんだと思います。
そんな流れで、
3年間、派遣労働者として従事して欲しいなら、とにかく雇用を途切れさせるな!
という、結論だけ見ると意味を捉えるのが難しいルールが出来上がったわけです。
それが「雇用安定措置」! です!
無期雇用派遣は例外
前段で、派遣先は派遣労働者個人が3年を迎える時に
・「直接雇用にできませんか?」と聞かれる
・「無期雇用派遣で同じ方を受け入れますか?」と聞かれる
・「他の派遣労働者に変更しますか?」
等と聞かれるという話をしました。
ここまでの、雇用安定措置の説明であれば、
・「直接雇用にできませんか?」
だけを行えば、後は、派遣会社内での話なので、他の派遣労働者になるか、もう、派遣は利用しないかであり、
・「無期雇用派遣で同じ方を受け入れますか?」と聞かれる
ということの意味が分からない・・・と思いませんか??
で、何となく、無期雇用派遣で・・・と聞かれるために、それを雇用安定措置の③派遣元事業主による無期雇用だと思っている方もいるのですが、これは違います。
③派遣元事業主による無期雇用は、あくまで、派遣会社の雇用になることで、いわゆる内勤社員になることを指します。
言い換えると、派遣スタッフが希望すれば、派遣会社の営業などになれるということです。
決して、無期雇用派遣で雇い入れることではないのです。
では、なぜ、「無期雇用派遣で同じ方を受け入れますか?」と聞かれるのか。
それは、
無期雇用派遣が、雇用安定措置の対象外だから
です。
対象外の理由は、無期雇用ならすでに雇用が安定しているからです。(そりゃそうだ!)
言い換えれば、
無期雇用派遣に転換すれば、そもそも雇用安定措置のルールの対象外になるので、3年以上、同一の組織単位に継続して派遣できる
という、雇用安定措置とは似て非なる(雇用安定措置の手前)提案なのです。
派遣会社の営業でも、いつの間にか勘違いして、「派遣先に雇ってもらうか⇒無期雇用派遣に切り替えるか⇒他の派遣先に行ってもらうか」と言う順番で考えがち(無期化にある程度、積極的な派遣会社であれば)ですが、本質的には、無期雇用派遣に切り替えるというのは
「雇用安定措置という4つの義務を果たすよりは、その対象外になる無期雇用派遣に切り替えさせてください。」
というものなのです。
ちなみに、ここでは、派遣スタッフ自身の意思が最も大切にされるところで、2021年に派遣法が改正され、派遣元は、雇用安定措置に関して派遣社員の希望を聞き、それを「派遣元管理台帳」に記録することが義務となりました。
当然、無期雇用派遣にしていく際にも、派遣スタッフの希望と十分な理解が大切であることは言うまでもありません。
ここでは、無期雇用派遣は雇用安定措置の対象外ということを知っておいていただけると嬉しいです。
雇用安定措置のタイミング
また、雇用安定措置のタイミングについても、触れておきます。
こちらはそのタイミングについて、愛知労働局のリーフレットから引用したものです。↓
雇用安定措置を行うのは、このAのタイミングです!3年間の継続が見込まれた時点ですね。
上記の例なんかで、ずっと6カ月更新していたのに、急に3カ月更新に変更したり、2年と11カ月で終了するのはダメということになります。
当然、ギリギリに直接雇用の依頼してくる派遣会社があれば、それは論外です。
そのうえで、義務が発生するのは見込まれるタイミングであるということを理解したうえで、早めに直接雇用の可能性などを検討してもらえると、派遣営業である僕としては、とても嬉しいです。
ぜひ、よろしくお願いします。
派遣先のすること
長くなりました。改めて、派遣先のすることに絞ってまとめます。
冒頭で触れた、
・「直接雇用にできませんか?」と聞かれる
・「無期雇用派遣で同じ方を受け入れますか?」と聞かれる
・「他の派遣労働者に変更しますか?」
という、派遣営業からの質問がすべてではあるのですが・・・
派遣営業から、派遣スタッフの○○さんは、
①直接雇用を希望しています。
②他の派遣先での就業or派遣会社での雇い入れを希望しています。
③無期雇用派遣への転換を希望しています。
のいづれかの報告、相談を受けるというのが、もう少し本質的な状況です。
①直接雇用を希望しています。
の場合、直接雇用(正社員、契約社員、アルバイトなど雇用形態は問わない。)での雇用が可能かを検討します。雇用形態は問わないですが、派遣スタッフの希望を加味しながら、検討していきます。
②他の派遣先での就業or派遣会社での雇い入れを希望しています。
の場合、その派遣スタッフはこれ以上、継続して今の職場にいる気持ちはないので、派遣利用を継続するのであれば、他の派遣スタッフを受け入れるということになります。
③無期雇用派遣への転換を希望しています。
の場合、(これは、①が難しかった時に選択されることもあります)サービス自体が、一般派遣から、無期雇用派遣に変わるため、その派遣会社ごとに運用が異なってきます。
一般的には料金が変わる可能性が高く(人事や教育にかかわる費用、派遣先を変更する際の待機時に発生する賃金による費用などが増加する)、その金額や運用ルールに合意できるかを検討することになります。
この3つのいづれかの対応が必要になる可能性が高く、その水面下では、派遣会社の雇用安定措置という義務があるということをご理解いただいていると対応をしやすいと思いますので、ぜひ、知っておいてください。
最後に
今日は、「雇用安定措置」について、説明しました。
派遣会社に「雇用安定措置」という義務があることで、派遣先も
・直接雇用にする
・無期雇用派遣を利用する
・別の派遣スタッフを受け入れる
などの検討が必要になるというお話でした。
非常に分かりにくく、派遣会社に丸投げしたくなる話ですが、社員として迎え入れるのか、派遣料金がどうなるのか、という大切な争点のある話なので、ぜひ、ご理解いただいたうえで、人材派遣をご利用いただき、派遣会社と二人三脚で協働いただけると嬉しいポイントになります。
次回は、「派遣労働者の特定行為の禁止」についてお話します。
こちら、超重要!です。今まで、有料記事でしか書いたことがないような気がする・・・(言ってはいけないことを言っちゃうので)
何とか、無料記事にまとめたいと思います。
では、また!
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