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人材派遣利用マニュアル ~契約開始から契約終了まで~ ⑤派遣スタッフを入れ替えて欲しいとき

人材派遣利用マニュアル ~契約開始から契約終了まで~編を解説しています。

人材派遣を利用する際に知っておくと良い、派遣スタッフがミスマッチだったときのお話です。
「派遣スタッフを入れ替えて欲しいとき」いってみましょー!

「ひたすら具体的」で「生々しく」人材派遣利用の教科書を作るという狙いなので、僕の独断で、派遣先企業が知っておくべきことについて超実践的に解説していきます。

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派遣スタッフの交代は、解雇とは違う

人材派遣のサービスを受け入れていると、派遣スタッフが契約通りの仕事が出来ない、コミュニケーションが成立しない、無断欠勤などが頻発している・・・などの問題が発生することがあると思います。(すみません、派遣営業としても無くしたいのですが、なかなか・・・)

具体的には、派遣スタッフを交代してもらいたいという状態になりますが、その際の考え方と進め方をお話します。


まず、最初に知っておいていただきたいことは、派遣スタッフの交代と従業員の解雇は考え方が違うということです。

一般社団法人 人材派遣協会HPより

↑図の通り、人材派遣サービスにおいて、派遣スタッフを雇用しているのは派遣会社(派遣元企業)です。
つまり、雇用に関する責任は、原則として派遣会社が負っているのです。(派遣先の講ずべき措置に定められた、派遣先の責となり得るものもあります。例:派遣労働者の国籍・信条・性別・社会的身分,正当な労働組合活動を理由とする派遣契約解除の禁止など)

ご存じの方が多いかと思いますが、労働者(特に契約期間が定められた)の解雇は非常にハードルが高いです。

例えば、↓の労働問題.comさんの記事によれば、
「勤怠不良で解雇するには、勤怠不良などの回数・程度・期間・態様、職務に及ぼした影響、使用者からの注意・指導と当該従業員の改善の見込ないし、改悛の度合い、当該従業員の過去の非行歴や勤務成績、過去の洗礼の存否等を判断要素として、解雇の有効性が判断される」
とされています。

紹介されている判例を見ても、そう簡単に解雇が認められるとは考えられません。52日も無断欠勤が続いていたら、3カ月契約の派遣期間がほとんど終了するわけで、途中交代もへったくれもありません。


人材派遣においては、この雇用の責任を派遣会社が負っているので、具体的には、派遣先から派遣契約が履行されていないという趣旨で指摘を受け、派遣会社も合意したら、他の派遣スタッフを派遣することになります。
そして、終了となる派遣スタッフは、派遣会社が雇用を維持しながら、指導を行っていったり、他の派遣先へ派遣するなど(派遣会社と状況によって対応は異なる)の対応となります。

派遣契約を履行できていないので、派遣契約としては派遣するスタッフを交代するという対応がなされてしまうものの、雇用契約はそのまま保持されると理解ください。(もちろん、気まずいなどの理由で、このタイミングで辞めてしまう派遣スタッフさんもいます。)


交代を要請するときに気を付けること

一旦まとめると、派遣スタッフの責による場合(仕事に対する取組みや処理能力に問題がある、勤務態度が良くないなど)、派遣スタッフへの注意喚起や指導、派遣スタッフの交代を求めることができるということになります。

では、派遣スタッフの交代を申し入れる時に、何に気を付けると良いでしょうか。それは2つあります。

①派遣スタッフのみの問題なのかをはっきりさせておく

まず、大前提として、派遣スタッフの責であるということを主張する必要があります。
例えば、指揮命令者の指示が不適切であったり、職場での人間関係上の問題がなかったかを確認しましょう。
派遣スタッフの問題であると指摘したところ、現場でパワハラが行われていたといったことになると、交渉が難しいものになってしまいます。

②客観的に説明できる準備をする

また、データや客観的指標で説明できると交渉がスムーズです。勤怠不良であれば、勤怠の記録さえシッカリしておく、スキル不足であれば具体的なスキル及び、それによる不具合や悪影響を明文化しておくようにします。

※注意:派遣先の講ずべき措置において、 派遣スタッフの国籍、信条、性別、社会的身分、派遣労働者が労働組合の正当な行為をしたこと等を理由としての派遣契約解除は禁止されています。

この2点の準備をしてあれば、問題なく派遣スタッフの交代の交渉を進めていけます。


派遣スタッフの責であると言えるかどうかの判断ポイント

ここで(僕としては十分に「客観的に説明できる準備をする」ということで説明したつもりですが)、派遣スタッフの責であるということをどう証明するかが難しいという質問をもらうことがあります。

正直、派遣スタッフの責であるということをどう証明するかが難しいと考えている時点で、お互い様、もしくはもう少し様子を見て、交代ではなく指導などを行うほうが好ましいケースがほとんどだと思いますが、判断基準に使いやすい概念があるので紹介します。

それは、
「外国人の方でも同じ指摘をするか?」
ということです。(日本人向け)
育ってきた環境や文化が違う方でも、同じことを言うのであれば、かなり高い確率で契約違反やルール違反があり、派遣先から見て正当な主張になっている可能性が高いです。
逆に、その派遣スタッフが外国人(特にあなたが好感を抱く国の方)であれば指摘しないのであれば、契約やルールではなく、(お互いのコミュニケーション不足による)コミュニケーションの齟齬や好き嫌いが影響している可能性が高いです。

一旦、「外国人の方でも同じ指摘をするか?」と思考するのは、課題が整理できるのでお勧めです。(この発想は貧しい発想だと思いますが、自らの浅はかさや浅ましさとも向き合うことができるという意味で、少し差別的に感じられるかもですが、同調圧力的なものに流されていないかのリトマス試験紙に使えると僕は考えています。不快になる方がいたらすみません。)


「休業手当をください」と派遣会社に言われたときの考え方

派遣スタッフの責による場合(仕事に対する取組みや処理能力に問題がある、勤務態度が良くないなど)、派遣スタッフへの注意喚起や指導、派遣スタッフの交代を求めることができると言いました。
そして、雇用に関する責任は派遣会社が負います。例えば、次の派遣先が決まるまでの間の休業手当を支払うなら、それも派遣会社が支払うべきだということになります。

しかし、派遣会社から、「休業手当(に該当する費用)をください」と言われる場面があると思います。この考え方を3つ紹介し、解説します。


考え方①そもそも価格設定に厳密に読み込んではいない

休業手当は派遣会社の責任で支払われるものです。
しかし、そもそも休業の手当の発生リスクまで派遣料金の原価として考えて行くと、料金が高くなりすぎてしまうので、そこは発生した事案の状況により派遣先との協議のうえで対応しているという考え方をする派遣会社があります。
そもそも、派遣スタッフの責しかなく、派遣先に課題がないという場面よりも、お互いの協議で進めていくことのほうが多いので、基本的な派遣会社のスタンスはこの考え方だと思っていいかもしれません。

考え方②人選・・・派遣先もしましたよね・・・?

以前もお話しましたが、派遣先による派遣スタッフの面接は違法です。

↑でもお話したように、暗黙の了解的に(もしくは堂々と)面接行為を行っている派遣先は多く存在します。

その場合、100%派遣スタッフの責であるということはあり得ないですよね?
契約を結ぶためには派遣先が、その派遣スタッフに来てもらうことを合意するわけですから。なんなら最終意思決定者として、派遣先の責のほうが重いくらい(言いすぎましたw)です。
怒られそうだから、絶対に派遣会社は言いませんが、休業手当を払ってくれと言われたときは、胸に手を当てて考えてみてください。
僕は、派遣前に面接行為に該当する行為を行う場合は、休業手当の発生時には費用を頂きますと、事前に伝えるようにしています。

考え方③スタッフを交代させる派遣契約は存在していますか?

そして、さらに重要なポイントは、スタッフを交代させる派遣契約は存在しているか?ということです。

一般社団法人 人材派遣協会HPより

冒頭でも触れましたが、派遣の仕組みは↑のとおりで、派遣契約と労働契約は別のものです。
ですので、派遣スタッフの責で交代させるというのは、具体的には、
現在、存在している派遣契約に対して、労働契約を結んでいる派遣スタッフの中から、別の方を派遣する」
ということです。

大切なのは、その時点で派遣契約が存在しているということです。

例えば、派遣スタッフの交代を求めて、派遣会社と合意した後で、付き合いのある派遣会社の複数社に声をかける派遣先がいたりします。
それは、今契約をしている派遣会社ではない派遣会社が良いスタッフを連れてきた場合は、その派遣会社と契約することを意味しますよね?
その状態では、派遣スタッフを交代させるべき派遣契約が存在するとは言えません。
むしろ、「派遣先のほうからも、派遣契約を破棄して、他の派遣会社も含めて改めて別案件を依頼した」と表現したほうが正確ではないでしょうか。

もちろん、派遣スタッフが何かしらの迷惑をかけたことにより、派遣先から派遣契約を解除することことは問題ないです。ただし、契約を解除するのであれば、多くの場合、基本契約書に、契約の途中解除の場合の取り決めがあるはずなのでそちらに則る必要があります。(残りの派遣期間の約定通りの支払いを求められることが多い)

派遣スタッフに課題があるので、残りの派遣期間の約定通り(派遣されたと見なして全額払う)を求められることはなくても、残りの派遣契約を派遣会社から解除するのであれば、休業手当相当分くらいは負担を求められるのは自然かと考えます。


まとめると、
①少なくとも値切っていなくて
②派遣労働者の特定目的行為(面接)を行っておらず
③交代スタッフの派遣契約が保持されている

という状況であれば、派遣スタッフの責である限り、特に休業手当などの費用の負担なく、交代を要請することが出来ると考えられます。
派遣会社との協議によっては、引継ぎなどに発生する費用も派遣会社に持ってもらう交渉もできるかもしれません。

逆に言うと、これまでにある程度タフな価格交渉や調整を二人三脚で乗り切ってきていたり、派遣スタッフの就業にあたり、事前に面談を行い、派遣先も意思決定に関わっていたり、交代のスタッフを他の派遣会社に依頼したりということがあるのであれば、休業手当についても、派遣会社の主張も聞きながら、支払いを視野に入れた交渉が発生すると考えることが出来ます。


最後に

今日は、「派遣スタッフを入れ替えて欲しいとき」について解説しました。
派遣スタッフの交代については、派遣契約書の取り決めの内容や、それまでの派遣会社とのやり取りによっても考え方が変わってきます
基本的には、取引している派遣会社と丁寧な協議をお願いします。

今日は、その協議において派遣先企業の考え方のベースになるポイントをいくつか紹介しました。
あくまで、チェックポイントとして使っていただき、「この場合は休業手当は支払う必要はない!」と主張するのではなく、派遣会社とのコミュニケーションを大切にしていただきたいと思います。

人材派遣のサービスは、派遣先企業、派遣スタッフ、派遣会社の三人四脚?でより良くしていくものだと思います。ご協力、よろしくお願いします!

では、また!!



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