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育児日記 (大事なわたし)

5年近く前に「何者」という映画を観た。佐藤健さん、有村架純さん、二階堂ふみさん、菅田将暉さん等、豪華キャストが出演している、就活を通して自分が何者であるかを模索していくという内容の映画だ。

その映画を観て以降、私の中に「何者」という単語が生まれ、時たまその言葉がちらつくようになった。

子供が生まれる前、まだ会社員で毎日嫌だなあと思いながら通勤していたころ、ベビーカーを押すお母さんや抱っこ紐に赤ちゃんを入れ歩くお母さんの姿を見ては、眺望の眼差しで見ていた。

いいなあ、あのお母さんたちは子供にとって何者にも代えられない、かけがえのない存在なんだなあ。私なんて今、会社を辞めてもすぐに代わりの人が見つかるような、そんな存在なんだよなあ。早くお母さんになりたい、あの立場に行きたい。

なんて事をよく思っていた。

今私はその立場にある。

毎日抱っこ紐に娘を入れ、ベビーカーに乗る息子を押しながら歩いている。

スーツ姿で颯爽と歩く女性を見かけると思う。

あの人はどこかの会社に所属して、社会に貢献していて、多かれ少なかれ社会から必要とされている。社会にちゃんと存在している。いいなあ。私は今何にも所属していない。社会から必要とされてないし、社会に何も貢献できていない。社会から見たら価値のない人間だ。・・・あの人から見たら、私は羨ましく見えるのだろうか?


みんなどんな立場になっても、自分の立ち位置に悩むことはあるのかもしれない。会社員、母親、専業主婦という立場を経験してやっと気づけた事。

可愛い我が子たちを見て思う。私はこの子たちの母親だから、心身ともに健康でいようと頑張れるけど、私も母の子だ。母も同じように私を大切に育ててきた。そのためにも自分を大事にしてあげようと。

何者という黒い言葉が心の内からやってくるたびに、私はひとりの大事な子供なんだ!と大人げなくそいつをやっつけているように感じる。

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