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既存顧客に依存してない? 新規開拓できる営業マンが育つ組織に変える、3つのアクション

そもそも既存顧客への依存はなぜ発生するのか?

新規顧客を作らなければいけないと分かってはいるが、つい目の前の既存顧客にばかり時間を割いてしまう……。こういった悩みを抱える営業パーソンは多いのではないでしょうか。

 私も幾度となく同じような感覚に陥ったことがありました。その発生要因は何なのかを考える上で面白い法則があります。マーケティングにおける「1:5の法則」はご存じでしょうか。新規のお客さまに向けて販売することは、既存顧客の5倍コストがかかるという法則です。

 つまり、新規顧客への営業は、時間も労力もかかる割にはすぐ結果につながらず、徒労感が半端ではないのです。営業パーソンとして、会社から求められる実績を出すためには既存客に頼らざるを得なくなり、時間と労力がかかる新規営業が止まってしまう――という悪循環が、これまで多くの新規営業への挑戦を阻害してきました。

 これは営業に限った話ではありません。著者はお笑いが好きで好きで、自分でも漫才をしていた頃もあるのですが、手っ取り早くウケたい場合は鉄板ネタを披露するのが早いのです。新ネタは本当に労力がかかります。ネタを考え、相方と何度も練習をし、実際に知人や友人に見せてリアクションを見ながら微修正をし、それでも本番でウケるか保証はありません。

 しかし、想像にたやすく、同じネタを繰り返している芸人に未来はありません。


「既存顧客への依存」 4つのリスク

そもそも、既存顧客に依存することは悪いことなのでしょうか?

 先述した「1:5の法則」は、むしろ新規顧客より既存顧客へ注力することを重要視している考え方です。「既存顧客への注力」を重要な仕事だと捉えるか、リスクだと捉えるかは、顧客の状況や、自社の状態、目標や予算への進捗など、それぞれの組織に隠れている前提によって変わります。

 本記事においては「既存顧客への注力」を軽視するものではなく、あくまで「既存顧客への依存」がもたらすリスクを考えるという視点で読み進めてもらえると幸いです。

 さて、既存顧客への依存がもたらすリスクには、どのようなものがあるのでしょうか?

 既存顧客へ依存することには、以下のように多くのリスクが存在します。既存顧客に注力していることと、依存していることとは、境界線があいまいな割に大きく意味が異なります。

  • 収益の一極集中

  • 競争力の低下

  • 市場変化への適応困難

  • 成長の制約

既存客への依存 脱却に必要な3つのアクション

 さて、そのような依存を起こさず、未来に向け新規顧客を獲得し続けられる組織に必要なことは何でしょうか。「1:5の法則」を越えて、新ネタを作り続ける漫才師のように、新規顧客を獲得する営業組織になるために必要なことを、3つご紹介します。

(1)組織のあるべき姿を言語化すること
 「あなたはどういう組織を目指していますか?」――この問いに答えられないビジネスパーソン、経営者が実は非常に多いです。あるべき姿・目指す姿がゴールとするならば、新規顧客を獲得するかどうかはその手段の一つにすぎません。ゴールが不明確な中、手段についてなされる議論に答えはありません。一方で、あるべき姿が明確で浸透さえしていれば、皆が主体性と責任を持ちやすい組織となります。

(2)組織のトップが腹をくくること
 あるべき姿を言語化した結果、新規営業にかける時間を増やす、新規事業を立ち上げるなど、さまざまな戦略を講じていくことになると思います。ここで重要になるのは、組織のトップが「腹をくくる」こと。

 例えば「新規事業を創れ!」という命の下始まったプロジェクトが、足元の業績が悪くなると解体を余儀なくされるといった現象を目の当たりにした経験がある方は、少なくないのではないでしょうか。あるべき姿を言語化すると同時に、そのゴールに対して組織長や経営層は本気で向き合うことが必須です。

 撤退ラインの設定、データに基づいた指標の設定、小さい規模での専任チームの組成など、手段はさまざまありますが、あるべき姿をかなえることに「本気」で向き合うことが重要です。

(3)適切な「評価」をすること
 上記2つは上位職サイドの課題が多いですが、冒頭で述べたように、営業パーソン自身も既存顧客へ流れる習性をもっていることは否定できません。

 彼らを突き動かすのは「評価」です。時間や労力がかかるにもかかわらず「評価」につながらなければ頑張れません。その組織の目指すあるべき姿と自らの評価が絶妙に交わるときに、大きな原動力が生まれるのです。

重要なのは「自らの事業を考える」こと

 新規顧客を獲得する営業組織になるために必要なアクションについてご紹介してきましたが、なかでも「組織のあるべき姿を言語化すること」が全ての出発点となります。最後に、組織のあるべき姿を考える上でヒントとなる考え方をご紹介します。

なぜアメリカの鉄道は廃れたか?
 ビジネスの世界ではよく教材となる問いです(興味のある方はぜひ調べてみてください)。

 あるべき姿を考えるとき、同時に「自分たちは何屋さんなのか?」を考えることが重要とされています。

 自社の事業をどう解釈するのかを、問うてみてください。八百屋さんは野菜を売ることが仕事なのでしょうか? 車屋さんは車を売ることが仕事なのでしょうか?

 阪急電鉄は自らを鉄道会社とは定義しませんでした。

 当時の鉄道は、移動したい人が集まる場所に敷設することが常識でした。しかし阪急電鉄は、鉄道を敷設することで需要を生み出せるのではないか? 後から需要を創ることは可能なのではないか? という逆説的な思考から、「人が移動する理由」と向き合いました。

 そして至った結論が、都市部ではなく郊外に住んで電車通勤をする、現在の郊外型住宅の考え方です。さらには当時、土地や住宅の購入には一括払いが一般的でしたが、費用の2割を払い、残りの8割を10年かけて月賦で支払い、完済すれば所有権を移転するという方法で販売することにしました。

 これが日本初の住宅ローンを活用した戸建て住宅地の分譲販売の歴史です。これによって、まとまった資金のない庶民であっても、住宅を購入することが可能になり、一気に郊外に人が移り住む一つの理由となりました。

 「私たちが世の中に提供できる価値は何か」と、これを機に考えてみるのも良いのではないでしょうか。

最後に

 「既存顧客に依存してない? 新規も開拓できる営業マンが実践する3つのアクション」 というテーマでいろいろと考察してきましたが、本件は営業パーソン個人の力ではどうにもできないことも多分にあると言えるでしょう。

 組織が一体となり、本気でゴールへ向かうための手段を考えやりきることは、たやすいことではありませんが、実は難しいことでもないのではなかろうかと筆者は思います。事業と組織について本気で考える人が増えることで、少しでも良い成果につながり、世の中が豊かになっていくことを願っております。

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