これからの”集い”で求められる企画とは?
先日、イベントやコミュニティなど様々なタイプの”集い”を主動している人たちをお招きし「これからの集いとは」をテーマにトークイベントを開催しました。
昨日改めてその時の動画を見返して一人反省会をしていたのですが、各分野を突っ走る実践者たちの言葉が、どれもポジティブで刺激的過ぎて頭スパークしたので、いくつかご紹介します。
集いの変態たちをご紹介
イベントの冒頭に、まずはゲスト4名の活動紹介。
以下、各ゲストのプロフィールと、この数カ月に取り組んでいるプロジェクトの列挙です。
藤田 祐司(Fujita Yuji)
Peatix Japan株式会社 共同創業者 取締役・CMO (最高マーケティング責任者)
慶應義塾大学卒業後、株式会社インテリジェンス(現 パーソルキャリア株式会社)で営業を担当 後、2003年アマゾンジャパン株式会社(現 アマゾンジャパン合同会社)に入社。最年少マネー ジャー(当時)として、マーケットプレイス事業の営業統括を経て、Peatixの前身となるOrinoco株 式会社を創業。国内コミュニティマネージャーチームを統括したのち、営業、マーケティング統 括を兼務。2019年6月 CMO(最高マーケティング責任者)に就任し、グローバルを含めたPeatix 全体のコミュニティマネジメント・ビジネスデベロップメント・マーケティングを統括。
オンラインイベント需要の高まりに爆速で対応するPeatix
イベントURLを自動で申込者に配信してくれる機能はまじで神。
24時間チャリティーイベントは準備期間わずか2週間で実現させたとのこと。
「Hello, New Normal」ってコピーも最高ですよね。
6月18日発売の共著書。コロナ渦になって内容も再編集したとのことです。
舟橋 健雄(Funahashi Takeo)
078実行委員会 Interactive部門 企画統括
TEDxKobe(テデックスコウベ) ファウンダー兼オーガナイザー
(株)神戸デジタル・ラボ マーケティング室長
1975年神戸市生まれ。1995年の阪神・淡路大震災後、 大学の仲間と情報ボランティア活動を実施。その後、 仲間とNPOを立ち上げるなど、 神戸のNGO/NPOの草分けとして活動。2001年より京都のシンクタンク(株)シー・ディー・アイにて研究員として従事。2005年より神戸のITベンダー(株)神戸デジタル・ラボに入社。企画・営業・総務・社長室・広報・マーケティングなどの業務を担当。2010年より「オープンソースカンファレンス神戸」、 2011年より「神戸ITフェスティバル」を立上げ、 一企業を超えた地域の有志たちとITによる神戸の活性化にチャレンジ。2013年より「TEDxSannomiya」、 2014年より「TEDxKobe」のライセンスを取得し、 神戸にイノベーティブなコミュニティを醸成すべく活動。また、2017年より「神戸ITフェスティバル」を発展的解消するかたちで、クロスメディアイベント「078」(ゼロ・ナナ・ハチ)を開始し、初代事務局長として携わり、その後もIT部門(Interactive部門)の責任者として関与。この活動も、神戸を世界の中で輝く魅力的な街にするとともに、人々が変化の時代によりクリエイティブに生きていくためのきっかけとなることを願って続けている。
リアル開催が9月に延期になったイベントのうち「少しでもオンラインでできることをやろう」と企画したら、爆速で50近いオンラインプログラムを仲間と実現させちゃった人。
あと、このイベントは僕も参加させてもらってたのですが、毎回会議で「どっからそれ見つけてくんねんw」と新しいツール使いまくりの変質者。
TEDxKobeも様々な開催形態を模索中とのこと。楽しみ。
東 信史(まっくす)
まちとしごと総合研究所 代表組合員
同志社大学大学院 / 京都精華大学 講師
1985年生。京都在住。大学卒業後、リクルートにてスクール事業の広報・経営戦略に関する企画営業に従事。同時に、NPO法人福岡テンジン大学などで授業づくりのコーディネーターとして活動。2013年に転職し、きょうとNPOセンターに参画し住民主体のまちづくり活動を進めるプログラム運営を経て、2015年より、これからの豊かさを再構築するとともに地域に新たな生業を創り出すことを目的とした「有限責任事業組合まちとしごと総合研究所」を設立。最近は、オンラインイベントを多数考案し『24時間オンラインダイアログ』『まっくら居酒屋』『オンライン酒場』『オンラインファシリテーション講座』など、コロナ時代における新たな取り組みの発明に没頭中。
24時間でいろんなプログラム配信されました。
ゲスト4人のうち、2人が24時間企画経験者ってどーゆーことよね。
ふらっと気軽に立ち寄れる立ち飲み屋のコンセプトをオンラインで実現させた企画。
安心して暖簾をくぐれる雰囲気作りは、オンラインのボタンをクリックする時の勇気を後押ししてくれる。という、東さんならではの切り口だと思う。
有料のファシリテーション講座。
ちゃんと価値を提供して、参加費をもらう。当たり前の仕組みを、当たり前に実現させるすごさがここにはある。
崔 禎秀
OBPアカデミア 学びの場づくり責任者
任意団体ライノ代表
在日コリアン3世として生まれた、生粋の大阪っ子。大学卒業後3度の転職を重ね、現在は大阪・京橋にあるOBPアカデミアに勤務。年に約1000回の講座・イベントの場づくり責任者を務める。休日はコーヒーのイベント出店や企画をしており(この1年で約30回)、コーヒーやイベントを通して「常に選択肢のある世界」の価値や、それを体感出来る場づくりを行なっている。最近では、普段リアルで開催していた講座を全てオンラインに切り替え、様々な講師と様々な講座のあり方を探っている。
年間1000件イベントやってる人。普通の人の食事の回数やん。
それがオンライン社会になって減速するんかと思ったら、しないのが彼のすごいところ。
クロストーク「これからの集いとは」
このセッションは、まず舟橋さんの「Peatixさんが配信イベントで『オンラインイベントはリアルイベントの代替ではない』ということ掲げていて衝撃を受けた」という切り口からスタートしました。
オンラインイベントとリアルイベント(以下、オフライン)は全く別物で、オンラインだからできないという発想は捨てた方がいい、と。
また「これまでオフラインで出来ることをサボっていた」というのは僕も実感しているところ。
オフラインで出来ること/オフラインでしかできないこと、をもっと自覚的に考えた方がいい。
「これらを考え抜いた人=これから面白いイベントを仕掛けられる人」という点については全員が一致。
あとオンラインの集いで欠かせないツール(ZOOMとか)について、東さんの考え方がすごく勉強になった。
「自分は対話の場を作っていきたい。新しいツールで参加者がアワアワすると本来の目的を見失なってしまう。だから今はツールを絞っている。
ただ新しいツールを使ってみんな使えないと、使える人が使えない人を助けるということが起きて、人と人との関係性を育むチャンスがあるのではないか。今回のことで、できない人を助ける機会がめちゃくちゃ増えて、誰かに貢献できる世界を作りやすいのではないかと感じている。」
ツールについては、ジョンスも近いものを大切だと感じていて
「まだまだZOOMでさえ浸透段階。だからイベント冒頭に必ず『みなさんZOOM使ったことありますか?』と呼びかける。」とのこと。
また事前に使い方マニュアルを参加者に配信するなどの手厚い事前フォローが、多くの人が安心して参加できる要因になっていると感じた。
あと藤田さんに、Peatixがオンラインイベントに関する機能実装が超早かった点についてを聞くと、まず自分たちが主催したり、外のイベントに参加しまくってみて、必要だと思った機能を急いで追加していったとのこと。
圧倒的リアルなユーザー視点。
めちゃくちゃ当たり前のことなんだけど、これが本当に言うが易し 行うが難し。
月間約1万件のイベントに利用される勝因が垣間見えた気がした。
ちなみに今は1万5千件のオンラインイベントが開催されてるらしい。やべー。
オンライン企画のポイント
ゲストから出てきたオンライン企画における特徴、また企画のポイントなどまとめておきます。
・「時空の超越」
参加者側も主催者側も、時間や場所に関する制約から解放された。
参加者は、まるでテレビ欄から番組を選ぶように、イベントをハシゴできるようになった。主催者側も、海外にいる人にゲスト出演してもらうことも簡単になった。
あとは開催時間の枠も増えた点が大きい。今までは、だいたい平日だと夜19時開始の1枠しかなかったのが、例えば21時とか、23時とかの枠も出現。なんだったら昼休みに30分イベントも入れられる。
逆にオンラインイベントだと、19時からの開催よりも、もっと遅い時間帯の方が参加者も便利だし、離脱率も少なくなる。
・「オンライン企画におけるアナログ価値の混入」
情報の伝達は、リアルだと五感全てで体験できるものが、オンラインだと視覚と聴覚のみ(かつ視覚メインで聴覚はそれの補助)
オンライン企画においては、残りの感覚をいかにアイデアで埋めて、新しい体験を創り出すか。その鍵となるのが、アナログの価値。
こういう視点のイベントも最近は増えてきた。デリバリーで同じ食事を食べるとか、同じアクションをするとか。
きっと事前の準備で、もっとやれることはあるんだと思う。
あと舟橋さんからは、カメラ機能があると服を着替えたり化粧をしたりと準備が億劫なので「最近は聴覚だけのコミュニケーションに注目している」というのも興味深かった。
逆に情報が減ることによって特化する部分もあるとすれば、企画の引き算で面白い新しいことができるかもしれないと感じた。
・「オンラインイベントの有料化」
藤田さんいわく、4月頃はまだ無料イベントが大半だったが、コロナ渦が長期化するにつれ、徐々にちゃんと対価をもらってイベントを開催するものも増えたとのこと。
確かに、比較的オンラインは値段が低く設定されがちだが、最近は有料イベントが当たり前になってきた。
東さんの「このイベントに参加することによって参加者が参加費を別のところで取り返せるような価値を提供している」という考え方は是非参考にしたい。
・「オンラインのローカル性」
藤田さんいわく「今後また人と会えるようになってくると結局は近くにいる人たちを企画をしたり、新しいことを考えたりする方が多くなってくるはず。そうなるとオンライン企画におけるローカル性というのが必ず出てくる。そこに意味があると思う。」と。
これはきっとめちゃくちゃ重要なキーワード。
上にあげた「時空の超越」とセットで、地方にいながら世界と戦う重要な観点だし、とっても面白い変化だと思う。
ゲストが選ぶ「このオンラインイベントはやばかった」
これまで主催するだけでなく、いろんなイベントを見てきたゲストが選ぶ、やばかったオンライン企画4選。
エンターテイメント業界に新しい光をもたらした革命児たち。劇団ノーミーツ。
役者のオーディションから全てオンラインで行い、リモートの特徴を最大限に活かしたオリジナルストーリーの演劇は、エンターテイメントの新時代を感じさせた。
最大の功績は、チケットを定価2500円で販売し、初回公演で約3000人、再演で1900人を動員。経済的な意味でも成立させている点。
会場キャパという概念を完全に消滅させた点と合わせて、集いの概念を根底から覆された人は多かったはず。
申し込んだら酒蔵からお酒が届いて、オンライン飲み会に参加できる。
その時に、酒蔵と中継が繋がって、酒蔵見学もできる。
さらに素人には少しハードルの高い熱燗のレクチャーもついている。
オンラインであることを活かしきった企画にゲストも太鼓判でした。
オンライン宿泊。言葉だけだと意味不明だけど、ちゃんと旅行の価値を体感できる。
内容としては、時間になったらチェックインをして、知らない場所をオーナーの案内で巡り、参加者で交流しながら時間を過ごす。
朝にはちゃんと起床時間があって、朝食が届く。美しいムービーで近隣の観光地を散歩したり、市場の朝セリを見学できたりする。
子育て中でなかなか旅行に行けなかったり、身体が理由で外出が難しい人でも旅行を楽しむことができるところが大きなポイント。
カレー好きで知られるミュージシャンの曽我部恵一さんの企画
まず参加者には、曽我部さんのカレー屋さんからカレーが届く。
そして時間になったら、曽我部さんの歌を聞きながら、同時に手を洗って、同時にカレーを温めて、同時に「いただきます」する。
何がいいって、距離感がいいですよね。
オンラインは、すごーく離れているのに、すごく近く感じることができる。有名人や応援している人と、安全に濃厚接触できる機会をもらえるなら、ファンならお金出しても惜しくないと思うはず。
噂によると、アイドルのオンライン握手会なんかもあるとのことで、今後もオンライン交流企画の進化から目が離せない。
“Tado”に生きようをモットーに、多動な人たちが多動に楽しむオンラインフェスティバル。ゲストの舟橋さんが企画メンバーです。
Dabel(ダベル)という、音声による新しいコミュニケーションツールが使われ、そのファンたちが集った2日間。
「多動」という非常にニッチな点を突いていったこの企画も、やっぱりオンラインだからこそ実現したものだと言えるはず。
リアルイベントだと、どうしても会場から片道1時間以内くらいにに住んでいる人じゃないと参加できないし、そう考えると年齢とか趣向とかで絞ったら対象者はせいぜい数千人程度。
ところがオンラインイベントだとそんな商圏が解放され、極端に言えば1億人が参加対象になってくる。
どんなにニッチな領域でも、世界のどこかには同志や仲間がいるもんで、イベントが成立するくらいの人数なら集まってしまったりする。
「多動」という、マイノリティを対象にしたフェスが盛り上がった理由も、オンラインならではだと思うし、今後はそういうところから新しいマジョリティムーブメントが生まれてくるんだと思う。
まとめ
今回ファシリテーターやらせてもらって、2時間本当にあっという間でした。
一番大きい収穫だったのは、オンラインとオフラインどちらも気を付けるべきポイントがすごく近い。けど、オンラインだと配慮の欠如がより露骨に出てしまう、ということを知れたこと。
東さんの言っていた「参加者に心理的な安心を担保する」とか「マナーのチューニングができる時間を設ける」とか、自分もオフラインでも意識していたことが、今後も役に立ちそうだと知れたし、そういうところで差別化されていくんだろうなと感じました。
また質疑応答で「これからのウェディングについて」という話になり、藤田さんが「これまで提供していた価値が、場所に由来するものなのか、そうでないものなのか。後者なら、ちゃんと価値の提供方法を変えれば費用をとれるのではないか」と回答していたのが、すごく本質的だなと。
ウェディングに限らず、これまで何の価値をどういう形で提供して費用をもらっていたのかを振り返ること。
自分の提供していたものを素因数分解して、きちんと棚卸し、価値を整理する。
すると、舟橋さんの言っていた「アナログを織り交ぜる」にも挑戦できるポイントが見つかるはずだし、ジョンスの言っていた「参加者にとってフラットに挑戦できる機会」もより正しく提供しやすくなるなと思った。
あと藤田さんが言っていた「今は緊急事態なので、失敗しても誰も覚えていない」は、すごく勇気をもらいました。
結局もう今はみんなが壮大な社会実験中なので、逆に今動かないのは損な気がするので、やれるだけやってみようと改めて感じた次第です。
今回のゲストは、いろんな理屈や説を唱えるだけじゃなく、既に数多くの実践をしている人をお招きしました。
やっぱり実際に動いている人の言葉は刺激的だし、たくさんの失敗の上に見えた本質は、新しい可能性を僕らに示してくれる。そんな気がしました。
まだ見ぬ”New Normal”は、開拓者たちが切り開いた道の先にあるのではなく、その切り開いていった道そのものなんだろうなと。
で、どうせなら、未来は創る側にいきたい。
苦しい日々は続くけど、やっぱり面白い未来がいい。
今回のゲストたちに負けないよう、しっかり動き続けたいと思います。