[ショートショート]友達と過ごす時間
いきなり机上でスマホが鳴り出した。見るとLINE電話がかかってきていた。しかも地元の友達だったから少しの驚きと懐かしさを胸に感じながら電話に出た。
「もしもし」
「お久しぶり!今何してる?」
「特に何も〜」と言いながら本を閉じた。
「じゃーご飯いこ!今東京まで来てるから!」
「いいよ!いくわ!」
そう言って電話を切った。自分の体が少し熱くなった気がする。社会人になって東京に出てきてあんまり人と会うことは少なくなった。同僚ともたまに遊びにいくが本が好きな自分のそばにいてくれる人はそんなに多くない。
それにあまり夜が強くないので遅くまで飲み歩けないのも一つの原因だと自己分析している。もともとお酒も強くないから遅くまで飲んでいると次の日にもろ影響が出てしまう。それを気にしていることに職場の人たちは知っていてあまり快く思っていないことも自分は知っている。そんな感じであからさまではないけどやんわり距離を取られている感じはあった。
久しぶりに友達に会えるので心が一気に軽くなった。もちろん本の中の世界も十分魅力的だけどやっぱり限界はあるような気がする。現実での人間関係も大切にしなければいけないなとつくづく実感した。
待ち合わせのお店に着くともうすでに飲み始めていた。まさかの昼飲みとは…
「お久〜」
「こっち〜」
自然と笑顔が溢れた。地元に帰ってきたみたいな感じだ。なんだろう。心が温かくまる感じかな?緊張の糸がパッと切れるみたいに体から余分な力が抜けた。今までは無意識のうちに自分を縛っていたのかもしれない。そう感じてしまうくらいに今の自分はとてもゆったりしてる。
席について適当に話す。軽い現状報告が主な内容。自分なりにやっていると話してひと段落したら適当に注文をした。トマトやナスの野菜が中心の体にいいメニューだ。それをみて相変わらず野菜好きだねと少しいじられた。それが心地よかった。
それから少しずつ時系列が戻されていった。高校は別々だったけどその時の球技大会の話や中学の他のやつが今何をしているかとか。さらに戻って中学の時の話まで戻った時時計を見てハッとなった。気がついたら2時間も時間が過ぎていたのだ。それまでまったく時間なんて気にもしないで話に夢中になっていた。
その時になってようやく気がついた。自分が誰かと会う機会を欲していたことに。これほど素敵な時間を過ごせるなら悪くないと心から思った。むしろもっとたくさんの時間を使いたいとも。だけど楽しい時間はあっという間に過ぎ去ってしまう。
「俺らこれから地元に帰るから」
そう言って別れてしまった。それでも前より圧倒的にコンディションは良くなった。前までは自分のリズムが崩されるのは絶対嫌だったけどこれなら悪くない。毎日なんて極端なことは言わないから月に2回くらいはあっていと思った。気を遣わないでいい人と一緒の時間を過ごすってとても大切だし充実していた。
これなら幸福度に影響を与えるって言われても納得できる。だって自分がもう幸せだから。そんなことを考えながら家に帰った。気分がよくてスキップしていたのはここだけの話。
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