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[ショートショート]干渉

他人に干渉されることは避けられない。他人の干渉なしに生きていくにはこの星をでなければいけないと思う。

仮に森や砂漠に逃げ込んだとしよう。その中でも他人の干渉を完全に断ち切ることは出来ない。

今の森は元々住んでいた人々が長い時間をかけて作ってきたもの。良かれ悪かれ人間が影響を与えている。

砂漠も人間の影響もあって砂漠なのだ。その中で生きていくのはとてもじゃないが厳し過ぎる。

となると他人から干渉されないように生きたいと願った場合にはやはり他の星しか無いのかも。

どこか遠い星なら誰もいない、加えて空気を吸っているだけで必要な栄養素が確保出来るみたいな環境があるような気がする。

しかし、そんなのは夢物語だと自分でもわかっている。他人の干渉をどれだけ嫌っても決して逃げることはできない。

そんな事を考えて会社を辞めた。それは3ヶ月前。今は来たことも無い田舎にいる。そこではお節介なくらい周りの人が私に干渉してくる。毎日畑で取れたものを持ってくるおばあちゃん。壊れたものは無いかと家の修理を手伝おうとするおじいちゃん。港で上がった魚を配ってくれるお兄ちゃん。

ここではたくさんの人が干渉しながら生活していた。田舎に行けば質素に1人で生活できると思っていた私が甘かった。

しかし、ここでの干渉は心地よい。なんでか分からないが会社で働いていた頃とは違う。あの頃は本当に他人が疎ましかった。みんないなくなればいい。ほかって置いて欲しいと思っていた。

それでも田舎に来て3ヶ月が過ぎている今はそんな事を考えもしなかった。毎日みんなと話すのが楽しかった。それが田舎での楽しみ方だった。積極的に他人と干渉する。少し前の自分では考えられない。

いつまでも貰ってばかりでは悪いから私は自分ができることをした。コロナのご時世で可愛い孫に会いたくてもなかなか会えない。だから私はテレビとネット回線を用意した。そこを無料で貸し出したのだ。

それからというもの毎日誰かしらがテレビ電話を使ってい。隣の部屋から聞こえてくる元気な声を聞くととても心が落ち着いた。孫の顔を見て帰っていくみんなの後ろ姿はとてもウキウキしていた。


私はここでの生活がとても気に入ってしまった。これからもここでずっと生活したいとさえ感じた。

私の住む場所は私が作る。これからもこちらから干渉しまくってやる!

そう思いながら今日も誰かしらが来るのを縁側で待っていた。

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