カーナビ
Googleなどの地図サービスの向上により
現在では運転時のカーナビはほぼ必要ではなくなったが,
私が大学生であったころには地図とカーナビは必須であった。
カーナビは車の購入時の地図データしか掲載されていないため,
新しくできた道などは搭載されていなかったことから
遠出する際,新しいところに行く際にはかならず地図を携行し,
カーナビに行先を入れていた。
その頃の私は家庭教師のアルバイトをしており,
主に車で生徒の家まで通っていた。
4月になり,新たな生徒が何人か増えたのだが,そのうちの1軒に向かうときの話である。
はじめてその生徒の家に向かう途中,大きな湖があったのだが,
その近くを通るときにカーナビが誤作動を起こし,
進行方向を示すカーソルがくるくると回りだした。
しばらく待ったのだが,治らない。
側道に停車し,エンジンを切り,再起動を行った。
住所を改めて入れたのだが,なぜか最初に確認した道ではなく,
カーナビは道がない湖のほうに向かうよう指示を出してくる。
何度かやり直してみたが,うまく修正できない。
まわりをみてもカーナビが指示をしてくるような
湖の中央に向かう道は存在しない。
もちろん湖には向かわなかったのだが,
あたりは暗く,近くに人影もなかったため,
通り過ぎたばかりの商店街のコンビニまで戻り,
地図を頼りに生徒の自宅に向かった。
初日から10分近くの遅刻である。
なんとか先方の家にたどりつき,平謝りで道に迷ったことを告げ,授業を予定より少し長めに実施した。
帰りに再度遅刻について謝罪し,その家を後にした。
帰り道ではカーナビは順調に動き,問題なく帰宅できた。
また家庭教師センターへの苦情も入れないでくれたようで,センターへの報告書を提出した際にも何も言われることはなかった。
翌週,その家に向かうときに同じ場所で再びカーナビの誤作動が起きた。
一度行った家であり,道は難しくなかった。
カーナビは無視し,今度は問題なく到着し,滞りなく授業を行った。
さらに翌週も同じ位置でカーナビが誤作動を起こしたのだが,
自分のカーナビとこの場所の相性が悪いのだろうと気にもとめなくなった。
またカーナビをセットすることもやめた。
2ヵ月ほどして新しい生徒の指導にも慣れ,
ご両親とも打ち解けてきたときに
ふと自分の車のカーナビがおかしいことを話したところ
ご両親はにこにこしながら
「あの湖の近くを通ると皆さん誤作動が起きるみたいなんですよね。
先生の前に来てくれていた方数人も誤作動について話してました。
どういうわけかわかりませんが,なぜか目的地が湖の中に代わってしまい,
みなさん初回は遅刻してくるんですよね。
カッパでもいるのかもしれないですね」
と告げられた。