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プラトン『クリトン』途中までの読書メモ



対象書籍

『クリトン』田中享英訳
講談社学術文庫
1998年 第1刷発行

今回のブログの対象範囲
43a〜48b 

以下、メモ

最大の善いもの、最大の悪いもの

もしも大衆に最大の災難をもたらす力があったならよかったのに、とソクラテスはいう。もしそうなら、大衆は最大の善いものをもたらすことも出来ただろうから。

だが彼らにはそれが出来ないとソクラテスはいう。
なぜなら大衆は「だれかを思慮のある人間にしたり、あるいは無思慮な人間にしたりする力」はないからだ。
彼らはそんなことには興味すらないとソクラテスは付け加える。44D

クリトンの説得は、手を替え品を替え引っ切りなしにいろんな論点を持ち出してソクラテスを説得しようとして忙しない。
金なら心配するなと親身になってみたり(44e)、助かろうとしないのは正しい行いではないと非難してみたり(45c)

助かれるのにそうしないのは、正しくない By クリトン

君がしようとしている行為が正しいことであるとは思われない、とクリトンは別の角度から説得を試みる。 45c

具体的には、「徳というものを一生を通じて配慮し続けなければいけない」と、ソクラテが言ってきたことをクリトンは挙げている。45d

死ぬことの害悪を訴えてもソクラテスには刺さらないことが分かったので、ソクラテスが「普段言ってたことと一致してない行動をしようとしてるんじゃないの?」と彼が気にしてそうなポイントから攻めることにしたわけだ。

助かろうとしないのは男らしくないとか、家族を守らないのはいかんとか、そもそも訴えさせないようにもできたのにそうしなかったのは無能を晒す失態だ、的なことを言って非難していた。

徳;アレーテーとはナイフにおいてはよく切れること、など有用性をそもそも指していた。らしい。

クリトンの説得に対するソクラテスの答弁スタート! 46b

ソクラテスはどんな人間か

ソクラテスは自分を「ただ論理的に考えてみていちばんよいと思われる言論にのみ従う」者である、と評する 46b

クリトンの勧める行為をするべきかよく考察してみなければならない、とソクラテスはいう。なぜなら彼は納得できることでないと行わないからだ。46b

このことは弁明において神託を論駁(エレンコス)しようとしたことにも見て取れよう。

第一の吟味「人々の抱く意見のうちには注意を払うべきものとそうでないものとがある」。この言論は正しかったかどうか。

意見には優劣がある

ソクラテスは具体例を出し、ある特定の意見が、別の意見よりも尊重されるべきであるという論を表現している。

体を鍛えている人にとっては、大衆の意見よりも、医者や体育指導員の意見に注意を払うべきではないか、とソクラテスは例に挙げている。47aーb

生き甲斐がないと生きていてもしょうがねぇ!

クリトンとの話で問題になっている論点を、ソクラテスは以下のように表現している。


正しいことと不正なこと、恥ずべきことと立派なこと、よいことと悪いこと、 47cーd


今回の件で正しいものの言うことを聞かないと、以下のものを駄目にしてしまう、とソクラテスは指摘している。

それはすなわち「あの、正しい行為によって善くなり、不正な行為によって悪くなるあるもの」 47d

上記の対象については「正義の徳とか不正の悪徳とか」とも言い換えられている。47e


そういったものを駄目にしてしまっては、生きることはできても「生きがいのある仕方で生きること」ができなくなってしまうとソクラテスは指摘している。47e


考慮しなくてはいけないのは、「正しいことと不正なことについてして知っているいるただ一人」がどう言うか、すなわち「真理そのもの」が何と言うか 48a


いちばん大事にしなければならないのは、「生きること」ではなくて、「よく生きること」だとソクラテスは喝破する 48b


「よく生きること」の「よく」は、「立派に」というのと「正しく」というのは同じことである。 48b

感想

ソクラテスの行動規範や生きることに対する価値観がはっきりと表現されている重要な書物である、と改めて『クリトン』を読み返して思った。

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