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指スマを確率漸化式で解いてみた!【数学】

突然ですが、指スマというゲームをご存じですか?
世代や地域によって呼び方は異なるみたいですが、合図に合わせて親指を上げる、あのゲームです。

この指スマを、高校数学で登場する確率漸化式を使って解いてみたいと思います。今回の目標は、2人で行う指スマにおいて、n回目の合図でゲームが終了する確率の漸化式を求めることと、先攻と後攻がぞれぞれ勝つ確率を計算することです!

少し難しく、計算も大変なので、誘導を付けて問題にしてみました。
解いてみたい方は、一度ここでストップして挑戦してみましょう!
(結果だけ知りたい方はスキップしてください。)

問題文

以下のルールに則って行われるゲームを試行するとき, 以下の(1)~(4)の問いに答えよ.

ルール
1.このゲームは2人のプレイヤーで行われる.
2.両プレイヤーは, 握った両手を親指を上にした状態でゲームを始める.
3.両プレイヤーは, 攻撃側と守備側を交互に切り替えながら, ゲームを進める.
4.攻撃側が合図と共に数字を発するのと同時に, 守備側は任意の本数の親指を上げる.
5.攻撃側が発した数字と, 守備側が上げた親指の本数が一致した場合, 攻撃側は片手を下すことが出来る.
(この時, 親指の本数が一致する確率は$${\frac{1}{1+N}}$$とする.  ($${N}$$は, 守備側が上げ得る親指の本数.))
6.4, 5の動作を合わせて1ターンとして, ターンが終了すると攻守が切り替わる.
7.以上の動作を繰り返し, 先に自身の両手を下すことが出来た場合, そのプレイヤーが勝者となりゲームが終了する.

(1). n回目のターン開始時に, 両プレイヤーの両手が上がったまま残っている確率を求めよ.
(2). n回目のターン開始時に, 片方のプレイヤーが両手を残し, もう一方のプレイヤーは片手のみを残している確率を求めよ.
(3). n回目のターンで勝者が決定する確率を求めよ.
(4). このゲームにおいて, 先攻が勝利する確率を求めよ.

指スマって簡単なゲームだったはずなんですけど、問題文にしてみると結構複雑ですね…
それでは、解答に進みたいと思います。

解答

各ターン開始時において, $${x=(攻撃側が残している手の本数)}$$, $${y=(守備側が残している手の本数)}$$とする. 
そして, $${n}$$回目のターン開始時に, それぞれのプレイヤーが$${x}$$本, $${y}$$本の手を残している確率を$${P_n(x, y)}$$とする.
ただし, $${n}$$は自然数である.
また, そのときの状態を$${(x, y)}$$と表す.
このとき, 状態遷移図は以下の図のようになる.

(1).
状態遷移図より
$${P_{n+1}(2, 2)=\frac{2}{3}P_n(2, 2)}$$となり, $${P_1(2, 2)=1}$$であるから, 
$${P_n(2, 2)}$$は初項1, 公比2の等比数列.
よって, 求める確率は$${P_n(2, 2)=\underline{{(\frac{2}{3})^{n-1}}}}$$


(2).
状態遷移図より
$${\begin{cases}P_{n+1}(2, 1)=\frac{1}{3}P_n(2, 2)+\frac{2}{3}P_n(1, 2)\\[6pt]P_{n+1}(1, 2)=\frac{1}{2}P_n(2, 1)\end{cases}}$$

よって
$${P_{n+2}(2,1) = \frac{1}{3} P_{n+1}(2,2) + \frac{2}{3} \cdot \frac{1}{2} P_{n}(2,1) =\frac{1}{3} \left(\frac{2}{3}\right)^n + \frac{1}{3} P_{n}(2,1)}$$
ここで両辺に$${(\frac{3}{2})^{n+2}}$$を掛けると
$${\left(\frac{3}{2}\right)^{n+2} \cdot P_{n+2}(2,1) = \frac{3}{4} + \frac{3}{4} \cdot \left(\frac{3}{2}\right)^n \cdot P_{n}(2,1)}$$

これを変形(特性方程式を解く)して
$${\left(\frac{3}{2}\right)^{n+2} \cdot P_{n+2}(2,1)-3 = \frac{3}{4}\{(\frac{3}{2})^n \cdot P_{n}(2,1)-3\}}$$
ここで$${A_n=\left(\frac{3}{2}\right)^{n} \cdot P_{n}(2,1)-3 ・・①}$$
とすると, 
$${A_{n+2}=\frac{3}{4}A_n}$$となる.

よって
$${n=2m-1(m:自然数)}$$のとき
$${P_1(2, 1)=0}$$であるから
$${A_1=\frac{3}{2}P_1(2, 1)-3=-3}$$より
$${A_n=-3(\frac{3}{4})^{m-1}=-3(\frac{3}{4})^{\frac{n-1}{2}}}$$

また
$${n=2m(m:自然数)}$$のとき
$${P_2(2, 1)=\frac{1}{3}}$$であるから
$${A_2=(\frac{3}{2})^2P_2(2, 1)-3=-\frac{9}{4}}$$より
$${A_n=-{\frac{9}{4}}(\frac{3}{4})^{m-1}=-{\frac{9}{4}}(\frac{3}{4})^{\frac{n-2}{2}}}$$

したがって, 式①より
$${P_{n}(2, 1)=(\frac{2}{3})^n \cdot (A_n+3)\\[6pt]=\begin{cases}(\frac{2}{3})^n(-3(\frac{3}{4})^{\frac{n-1}{2}}+3)\\[6pt](\frac{2}{3})^n(-\frac{9}{4}(\frac{3}{4})^{\frac{n-2}{2}}+3)\end{cases}\\[6pt]=\begin{cases}3(\frac{2}{3})^{n}-2(\frac{1}{3})^{\frac{n-1}{2}} (nが奇数) ・・②\\[6pt]3(\frac{2}{3})^{n}-(\frac{1}{3})^{\frac{n}{2}-1} (nが偶数) ・・③\end{cases}}$$

また, 状態遷移図より$${P_n(1, 2) = {\frac{1}{2}}P_{n-1}(2, 1) (n\geqq2)}$$であり, $${P_1(2, 1)=0}$$であるから
$${n\geqq2}$$のとき, 求める確率は式②, 式③を用いて
$${P_n(2, 1)+P_n(1, 2)=P_n(2, 1)+{\frac{1}{2}}P_{n-1}(2, 1)\\[6pt]=\begin{cases}{\frac{7}{2}}\{(\frac{2}{3})^{n-1}-(\frac{1}{3})^{\frac{n-1}{2}}\} (nが奇数)\\[6pt]\frac{7}{2}(\frac{2}{3})^{n-1}-2(\frac{1}{3})^{\frac{n}{2}-1} (nが偶数)\end{cases}}$$
$${{\frac{7}{2}}\{(\frac{2}{3})^{1-1}-(\frac{1}{3})^{\frac{1-1}{2}}\}=0}$$より, 上式は$${n=1}$$でも成立.

以上より, 求める確率は
$${\underline{{\begin{cases}{\frac{7}{2}}\{(\frac{2}{3})^{n-1}-(\frac{1}{3})^{\frac{n-1}{2}}\} (nが奇数)\\[6pt]\frac{7}{2}(\frac{2}{3})^{n-1}-2(\frac{1}{3})^{\frac{n}{2}-1} (nが偶数)\end{cases}}}}$$


(3).
$${n}$$回目のターンで勝者が決定するとき, 状態(2, 0)で終了する場合と, 状態(1, 0)で終了する場合の2通りが存在する.

(i). 状態(2, 0)で終了する場合
$${n\geqq2}$$のとき, 状態遷移図と式②, 式③より
$${n}$$回目のターンで状態(2, 0)になる確率は, 
$${\frac{1}{2}P_{n}(1, 2)=\frac{1}{6}P_{n-1}(2, 1)=\begin{cases}{\frac{1}{2}}(\frac{2}{3})^{n-1}-\frac{1}{2}(\frac{1}{3})^{\frac{n-1}{2}} (nが奇数)\\[6pt]\frac{1}{2}(\frac{2}{3})^{n-1}-(\frac{1}{3})^{\frac{n}{2}} (nが偶数)\end{cases}}$$
$${\frac{1}{2}(\frac{2}{3})^{1-1}-\frac{1}{2}(\frac{1}{3})^{\frac{1-1}{2}}=0}$$より, 上式は$${n=1}$$でも成立する.

(ii). 状態(1, 0)で終了する場合
状態遷移図より, 
$${n}$$回目のターンで状態(2, 0)になる確率は, $${\frac{1}{2}P_n(1, 1)}$$と表せる.
ここで状態遷移図より, 
$${P_{n+1}(1, 1)=\frac{1}{2}\{P_{n}(1, 1)+P_{n}(2, 1)\}}$$

両辺に$${2^{n+1}}$$を掛けると
$${2^{n+1}P_{n+1}(1, 1)=2^{n}P_{n}(1, 1)+2^{n}P_{n}(2, 1)}$$
ここで, $${B_{n}=2^{n}P_{n}(1, 1)}$$とすると, 
$${B_{n+1}-B_{n}=2^{n}P_{n}(2, 1)}$$となり, 
$${2^{n}P_{n}(2, 1)}$$は$${B_n}$$の階差数列となる.

したがって, 
$${B_{n}=B_1+\displaystyle\sum_{k=1}^{n-1}\{2^{k}P_{k}(2, 1)\}\\[6pt]=2^1P_1(1, 1)+\displaystyle\sum_{k=1}^{n-1}\{2^{k}P_{k}(2, 1)\}\\[6pt]=\displaystyle\sum_{k=1}^{n-1}\{2^{k}P_{k}(2, 1)\} (ただしn\geqq2)\\[6pt]}$$
よって$${n\geqq2}$$のとき, 
求める確率は, 
$${\frac{1}{2}P_n(1, 1)=2^{-(n+1)}B_n=2^{-(n+1)}\displaystyle\sum_{k=1}^{n-1}\{2^{k}P_{k}(2, 1)\}}$$と表せる.

(ii-a). $${n}$$が3以上の奇数の時, 
$${\displaystyle\sum_{k=1}^{n-1}\{2^{k}P_{k}(2, 1)\}\\[6pt]=\displaystyle\sum_{k=1}^{\frac{n-1}{2}}\{2^{2k-1}P_{2k-1}(2, 1)+2^{2k}P_{2k}(2, 1)\} (奇数項目と偶数項目に分割)\\[6pt]=\displaystyle\sum_{k=1}^{\frac{n-1}{2}}\{\frac{21}{4}(\frac{16}{9})^k-6(\frac{4}{3})^k\} (\because式②, 式③)\\[6pt]=9(\frac{4}{3})^n-24(\frac{4}{3})^{\frac{n-1}{2}}+12}$$

よって 
$${\frac{1}{2}P_n(1, 1)=2^{-(n+1)}\displaystyle\sum_{k=1}^{n-1}\{2^{k}P_{k}(2, 1)\}\\[6pt]=\frac{9}{2}(\frac{2}{3})^n-6(\frac{1}{3})^{\frac{n-1}{2}}+6(\frac{1}{2})^{n}}$$
$${\frac{9}{2}(\frac{2}{3})^1-6(\frac{1}{3})^{\frac{1-1}{2}}+6(\frac{1}{2})^{1}=0}$$より, 上式は$${n=1}$$でも成立する.

(ii-b). $${n}$$が4以上の偶数の時, (ii-a)の場合と同様にして
$${\displaystyle\sum_{k=1}^{n-1}\{2^{k}P_{k}(2, 1)\}\\[6pt]=\displaystyle\sum_{k=1}^{\frac{n-2}{2}}\{2^{2k-1}P_{2k-1}(2, 1)+2^{2k}P_{2k}(2, 1)\}+2^{n-1}P_{n-1}(2, 1) (奇数項目と偶数項目とn-1項目に分割)\\[6pt]=9(\frac{4}{3})^{n}-21(\frac{4}{3})^{\frac{n}{2}}+12 (\because式②, 式③)}$$

よって
$${\frac{1}{2}P_n(1, 1)=2^{-(n+1)}\displaystyle\sum_{k=1}^{n-1}\{2^{k}P_{k}(2, 1)\}\\[6pt]=\frac{9}{2}(\frac{2}{3})^n-\frac{21}{2}(\frac{1}{3})^{\frac{n}{2}}+6(\frac{1}{2})^{n}}$$
$${\frac{9}{2}(\frac{2}{3})^2-\frac{21}{2}(\frac{1}{3})^{\frac{2}{2}}+6(\frac{1}{2})^{2}=0}$$より, 上式は$${n=2}$$でも成立する.

(i), (ii-a), (ii-b)より求める確率は,
 $${\frac{1}{2}P_n(1, 2)+\frac{1}{2}P_n(1, 1)\\[6pt]=\underline{\begin{cases}{\frac{21}{4}}(\frac{2}{3})^{n}-\frac{13}{2}(\frac{1}{3})^{\frac{n-1}{2}}+6(\frac{1}{2})^n (nが奇数)\\[6pt]{\frac{21}{4}}(\frac{2}{3})^{n}-\frac{23}{2}(\frac{1}{3})^{\frac{n}{2}}+6(\frac{1}{2})^n (nが偶数)\end{cases}}}$$


(4).
このゲームにおいて先攻が勝利するとき, 必ず奇数回目で勝者が決定される. したがって, (3)の解を$${P_n}$$とすると, 求める確率は
$${\displaystyle\sum_{k=1}^\infty {P_{2k-1}}\\[6pt]=\displaystyle\sum_{k=1}^\infty \{{\frac{21}{4}}(\frac{2}{3})^{2k-1}-\frac{13}{2}(\frac{1}{3})^{k-1}+6(\frac{1}{2})^{2k-1}\}\\[6pt]=\underline{\frac{11}{20}} (\because無限等比級数の和)}$$


以上でした!
かなり計算が大変でした…

等比数列, 階差数列, 指数型の漸化式, 漸化式・Σの偶奇分けなど色々な要素が詰まってました。

先攻の勝率は$${\frac{11}{20}}$$ということで55%でした。
思ったよりも平等に近い数字でした。

ちなみに、横軸に終了ターン、縦軸に確率をとったグラフを描画してみると、下の図のようになりました。

終了ターンの確率分布

5回目で決着がつく確率が最も高いようです。


今回の記事は以上になります!
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