TEAM SAHICHI野外ワンマイライブ「SHACHI SUMMER2023 名古屋城 ~叫べ!夢と希望の銃弾を放つ夜~」の感想
2023年7月22日(土)に開催されたTEAM SAHICHI野外ワンマイライブ「SHACHI SUMMER2023 名古屋城 ~叫べ!夢と希望の銃弾を放つ夜~」に行ってきた。
会場は改名前のグループ「チームしゃちほこ」が路上デビューした名古屋城の二の丸広場。そびえ立つ天守閣の金鯱に見守られながら、TEAM SAHICHIと観客は歌い踊り叫び、そして涙した。
自分にとっては初の大型声出しワンマンライブということで不安もあったが、ライブが終わる頃には充実感で満たされていた。ここに感じたことを書き留めておきたい。
いざ名古屋城へ
当日は午前中仕事を終えて昼過ぎに新幹線で横浜から名古屋へ出発。名古屋駅のホームできしめんをすすり(初!)栄のホテルへ向かいチェックインして一旦体を冷やした。
水の演出で多少濡れると聞いていたので靴でいくかビーサンで行くか迷いつつ、お気に入りのRocket Queenの青いTシャツと青い靴を履いて会場へ向かった。
不安に思っていたこと
ライブ前の高揚を感じ、旅行気分に浮かれつつも、心中には不安もあった。
ひとつは初めての声出しワンマンだったということ。僕の初ライブは2021年豊洲で、シャチの声出しライブはおろか「コールのあるアイドルのライブ」の経験がない。声出しに楽しみな気持ちもある一方で、あの独特な雰囲気に自分が入って楽しめるのかという気持ちもあった。
もうひとつは昨年のシャチサマが自分にはあまり響かなかったこと。もし今回もハマらなければシャチサマのコンセプトが自分には合わないということだなとも思っていた。
会場到着〜入場
集合時間ちょうどに会場に着くと、たくさんのタフ民(TEAM SHACHIファンの呼称)が集まっていて、なんとなく嬉しくなるとともに気持ちが盛り上がってくる。「あの人見たことあるな〜」とか「twitterでみかけるあの人かな…。」とか思いつつ、数少ない知り合いと挨拶を交わす。頂いた塩分チャージの飴を口放り込み入場する。
スタッフの誘導のもと、名古屋城の門をくぐると、スムーズに客入りが進む。僕はC5の67だったので入場列のほとんど最後、のんびりと会場へ進んだ。自分の場所を確保したら開始を待つ。
セットリスト
声出しの導入が完璧だった序盤ブロック
ライブはblur『song 2』のSEからスタート!
改名後はThe hives『Tick Tick Boom』がライブ開始の合図となっているが、今回は名古屋城のメモリアルなライブということでちょっぴり期待していた。
シャチサマの前日がblurの新アルバムリリース日だったことでblur熱が高まっていたこともあり『song 2』が聞こえた瞬間に一気にスイッチが入る。「Woo - Hoo!」の声出しはライブ本編へ向けて格好のウォーミングアップになった。
仮面を外したブラス民
ステージの右側に設置された大きなスクリーンにオープニングムービーが始まる。まずはイラストを使ったメンバー紹介が流れ、続いて仮面をつけたブラス民が登場する。取り外された仮面を残しブラス民が動き出すと、大きくMOSのロゴが映し出された。
ムービーが示唆する通り『OVERTURE~ORCA』でステージに現れたブラス民に仮面はついていなかった。メンバーがマスクが取れた観客を見て「表情がわかって嬉しい」という反応を見せていたが、観客にとってブラス民の顔が見えるのも同じように嬉しいことだ。演者の表情が見えるとライブの熱気が増す。
声出しの教育機関
本編1曲目は『舞頂破』から。もしかしたら最初から『恋人はスナイパー』かなと思っていたけれども違った。やっぱり1曲目には改名後の曲を置いて欲しいし、何といっても「皆騒ゲ宴ノ始マリジャー!!」と叫ぶこの曲以上の始まりはない。
「ナンマイダー」はコールとしてはそこそこの盛り上がりだけれども、初心者にはちょうど良い。アウトロのブラスパートは「ブラス民来るぞ!」とワクワク。
2曲目『START』のイントロが鳴る。声出し曲来たー!周りのタフ民を頼りに「ヴォイ!ヴォイ!」と自然に大きな声が出る。
パシフィコ横浜をはじめこれまでの『START』はライブ終盤に披露されにことが多かった。悔しい想いをぶつけ、ネガティブな感情を昇華することによってライブをエモーショナルにするような曲だった。
けれども今回の『START』は、そのような湿っぽい雰囲気はなく、いい意味で肩の力が抜けてカラッとした純粋に楽しい曲だと感じた。2021年パシフィコ横浜公演後のインタビューで咲良菜緒が「STARTをスカッと歌えるのが目標」と言っていたが、今回どう感じたのか気になる。
3曲目『ピザです!』ではイントロがかかった瞬間に客席が驚きと嬉しさでざわつくのがわかった。ミックスを打ったこともなかったけど、予習しておかげで案外ピザミックス言えて楽しかった。
SE〜序盤3曲で、簡単な声出しから始まり、基本・応用と続いていく構成で、すっかり声出し民として教育されてしまった。初心者でも声出ししやすい構成にしてくれてマジ感謝です。
最初のMC~NEO
シャチのライブは10曲近く連続することも珍しくないが、今回は数曲ごとにMCを挟んで休憩するスタイルだった。真夏の野外ライブゆえの熱中症への配慮だろう。
MCを挟んで、自己紹介曲『Hello, TEAM SHACHI』。改名後の曲だけどこれまであまり聴いたことがなかったので新鮮に感じる。
5曲目は『NEO首都移転計画』。5、6月のフリーライブでよく披露されていたので既に定番感がある。カウベルの音が気持ちいいのと、多分共感されないけど「文化、大使」の「文化」が「文官」に聞こえるせいでキングダムの昌文君が脳裏に浮かんでしまうところが個人的にツボ。TEAM SHACHIの楽曲の中では音源で聴きたくなる曲の一つだと思うのでサブスク解禁されると嬉しいな。
ブラス民が躍動する2曲
6曲目は最新EP『AWAiTiNG BEAR』から『あなたのトリコ~究極の愛~』。ティザーが出た時からブラス民が演奏してくれるのを心待ちにしていたので、本当に嬉しかったし激アツな演奏だった。イントロのリフとサビのベースみたいなブラス大好きです。
続いて個人的に大好きな曲『東海コンプライアンス』。特に「トーカイファイアー、なんて?」の後のインストパートが好きで、その最後を担うのがブラス民。CDのクレジットにもブラス民の記載はなく、2022年の鯱の大感謝祭(バンド編成のライブ)でもブラス民の演奏はなかったので、この曲をブラス民参加で聴けることは難しいと思っていただけにめちゃくちゃ嬉しかった。最高!
新旧始まりの曲
近年のEPからの曲の次には、チームしゃちほこ最初の曲『ごぶれい!しゃちほこでらックス』が続く。僕にとっては10周年記念公演のときのキラッキラに輝くパフォーマンスが記憶に新しいが、長くファンをしている人にとってはいろいろな思い出が蘇る曲なのかもしれない。重低音とサビのシンセがよく聞こえて10周年の時とはまた違った印象を受けた。
坂本遥奈のMCからスムーズにコールアンドレスポンスに繋げると、爽やかポップロックチューン『Wow Oh! Oh!』が始まる。野外で声が出せるようになった今だからやって欲しかった曲だ。
ライブはいつだって一期一会。今この瞬間を楽しむ演者と観客の気持ちを代弁するようなこの歌詞が好きだ。
そして10曲目『DREAMER』と続く。改名後の最初の曲でTEAM SHACHIの代表曲。ライブ終盤にやることが多い『DREAMER』『START』が早くも中盤で披露されることがライブの充実を物語っている。『DREAMER』は本当にいつ聴いても心が踊る。
ここでひと段落かと思ったら、初期の人気曲『トリプルセブン』で畳み掛ける。ベースラインかっけえ。みんなの振りコピがすごい。(座るところは諦めました。)
太陽が沈む中で
太陽が西に沈み始める中「静寂を裂いて」大黒柚姫の歌声が響く。12曲目は『かなた』だ。この日初めてのしっとりとした曲で、夕方になり涼しくなってきた風を感じながら聴き入った。
続いて『colors』へ。シャチサマといえば『colors』という人も多いのかもしれない。個人的にはここで『HONEY』も(が)聴きたいとも思った。
ちょうど日が沈み切った頃合いを見計らうかのように最新EP『AWAiTiNG BEAR』から『君にぴったりな歌』が始まる。暗い背景と光をイメージさせるこの曲にぴったりのタイミングだ。正直まだ消化できていない曲だけど、会場が大きくなればなるほど魅力的になる可能性があると思う。
続いて同EPからキャッチーなギターとメロディな『アサガオ』と続く。坂本遥奈考案のシンプルな振り付けが楽しい。僕はそんなに振りコピする方ではないが『アサガオ』は何も考えずに真似したくなる。まだリリースして間もないが、多くの人に愛され、ライブの定番曲になるに違いない。
そして16曲目の『ROSE FOGHTERS』。ローズはいつ来ても嬉しい。ブラス民がいれば尚更だ。2メロの「太陽沈んでも月が眩しいから眠ってらんない〜」のところ、ちょうど太陽が沈み月がステージ上に見えていて天才!と思った。自然を活かした演出は趣があるし、「眠ってらんない」はアゲ曲ブロックに向けて気合い入れてけというメッセージに感じられて益々やる気出た。
アゲパートからクライマックスへ
クライマックスへと続くアゲ曲ブロックの最初は『番狂わせてGODDESS』から。ギターとブラスのハードなイントロ、歌い出しの坂本遥奈「覚悟はもう決めた」のパートでテンション上がる曲。改名後の曲の中で一番観客の反応が良かった。
続いて定番の『抱きしめてアンセム』。定番中の定番ゆえ、新鮮味がないなと思わないこともないが、いざ曲が始まると楽しいし、やっぱり客席が最も動いてるのがわかる。
『抱きしめてアンセム』が終わるとメンバーがセンターステージに移動し、照明が落ちる。「スナイパーくる?」と思ったら『乙女受験戦争』だった。シャチサマの一週前にフェス(SPARK)で5回連続で披露し物議を醸していたことが記憶に新しい中、「セッツ!」の掛け声が聞こえると待ってました!とばかり歓声が上がった。それに応えるかのように秋本帆華の冒頭「頑張って〜頑張って〜」のキーが上がる。
ライブで観たときに毎回同じことを思うのだが、曲が進むにつれて会場の熱が単調増加していくのが凄い。大サビの咲良菜緒の凛とした歌声は最高に痺れた。
そして、再びメンバーがセンターステージに集まり照明が落ちる。ステージの右側にはライトアップされた名古屋城天守閣が見える。客席の多くは「今度こそきた!」と心の中で叫んだだろう。
『恋人はスナイパー』のイントロとともに秋本帆華が「みてーあれは金ピカに光る私たちのシンボル、しゃちほこよー!」と叫ぶ。少し焦らされて始まったスナイパーはめちゃくちゃ盛り上がった。「うりゃおい」って言いたくなる気持ちが分かった瞬間だった。
アンコール
本編が終了しメンバーがサラッとステージからはける。明らかに予定されてるアンコールに向けて若干の義務感を感じながらシャチコール。衣装替えの時間が必要なのはわかるけど…もうちょっと笑。
ナポレオンジャケット風の衣装に着替えると『Rocket Queen feat. MCU』がスタート。メンバーは客席をまわりサインボールを投げたり発射したりする。
アンコール2曲目は『Today』だ。「ライブの最後にみんなで声を出して一体感を味わいたい、あったかい気持ちになって終わりたい」という気持ちで作られたこの曲が、初披露から3年以上の月日を経て、やっと声を出して歌うことができる。『Today』をみんなで歌えることがコロナ禍を乗り越えたことの象徴になる─そんな意図でこの曲だけ撮影可能になったのかと思った。
勲章
『Today』が終わってお知らせを挟む。ここで発表されたのは冬ツアーとなんとアルバム制作のお知らせ。後で詳しく書くがアルバム発表は本当に嬉しかった。
お知らせが終わると一人ずつライブの感想や今後の展望を語る。中でも秋本帆華の明確で力強い言葉は胸を打ち『勲章』の曲振りとしてこれ以上なかった。
最後の曲『勲章』は涙が止まらなかった。落ちサビの秋本帆華の歌唱、歌い切った瞬間の笑顔、その後の4人の誇らしげな表情は、言いようのない感動的なものだった。
『勲章』の最後に2回連続で「勲章です」と歌うパートがある。ここを4人とも主旋律を歌うのが好きだ。これまでのTEAM SAHCHIの歌割りだと大黒さんがハモるのが自然に感じられる(ローズの最後「始〜まる〜」のように)。でも、あえてハモらないことで、曲に込められたメッセージの真っ直ぐさが増しているように感じる。
『勲章』でライブは終了。風に飛ばされてしまった金のテープをスタッフさんから頂き、余韻に浸りながら帰路についた(飲みの会場へ向かった)。
ステージの低さを補う演出
『ピザです!』『Wow Oh! Oh!』『Rocket Queen feat.MCU』などメンバーがステージを降りて客席をまわった。客席近くに設置されたお立ち台から、水鉄砲や水風船を使用した水まきやサインボール投げといった夏らしいお祭り感のあるパフォーマンスで客席を楽しませた。
個人的にはいわゆる「客降り」は好みではない。もちろん、演者が近くに来てパフォーマンスしてくれたら嬉しいが、特に大きな会場のライブではステージ上だからできる表現を観たい気持ちの方が強い。
今回はステージが低かったこともあり、客降りの必要が高かったのだと思う。お立ち台は計四箇所設置されていて、ステージが見にくい席でも演者を近くに感じることができたり、客席移動中は間奏パートを長くしてメンバーが見えなくても気にならないよう工夫されていた。ステージ右側に設置された大きなモニターも、ステージの低さを補うのに一役買っていたと思う。
そうやって、客降りの楽しい部分をうまく使いつつ、マイナス面を減らして楽しませてくれたのだと思う。(ステージ高ければもっと嬉しかったけど。)
シャチサマというライブのかたち
今回のライブで、4人 + ブラス民という基本的な編成・新旧色々な曲あり・声出しあり・観客の近くにいって水を撒いたりする、といったシャチサマというライブの基本形ができたのではないかと思った。
シャチサマの開催が発表されてから当日まで、正直どんなライブになるか全然想像つかなかった。もう少しコンセプトなり情報を出して欲しいと思っていたけれども、来年はライブの輪郭をイメージできるようになったと思う。
自分が行くにしても誰かを誘うにしても、どんなライブかイメージできて初めてチケット買うハードルを超えられると思うので、ネタバレする勢いでたくさん情報を出してくれたら嬉しい。
『恋人はスナイパー』で感じた寂しさ
本公演の中でも最も盛り上がった『恋人はスナイパー』。僕もめちゃくちゃ楽しかったのだが、実は曲の後半には寂しさのような気持ちが頭の中の10%くらいを占めるようになっていた。
「ばんくる→アンセム→乙女→スナイパーで最高に盛り上がって楽しいんだけど、ひょっとしてこのままシャチ終わっちゃう?」とよぎったのだ。
ライブのコンセプト的に、例えば『江戸女』のような曲はやらずに、盛り上がる曲や懐かしい曲で固めていることは理解できる。そもそも、一番盛り上がる曲が古い曲というの自体珍しいことでも悪いことでもない。(例えば、2023年のArctic Monkeysの7thアルバムツアーのライブでも一番客席が沸いていたのは1stや2ndの曲だった。)
コロナ禍でシャチを知りここ2年ほど通って、改名前〜改名直後のTEAM SHACHIらしいライブがどんなものかはわかってきたつもりだ。この日のライブもめちゃくちゃ楽しかった。でも、今後のTEAM SHACHIのライブがどうなっていくのかはわからなかった。
だから、アンコール後に冬のアルバム制作が発表されたときは、嬉しいのはもちろん、希望の光を見つけて救われた気分にもなった。
またここから始めよう
シャチらしい音像ってなんだろう。2年前『AWAKE』にそれを感じた。個人的には『東海コンプライアンス』からも感じる。改名時に掲げた「ラウド・ポップ・ブラス」というコンセプトは生きているのか、死んでいるのか。よくわからない。
『勲章』の歌詞の大部分は過去形で書かれている。みなぎる闘志と期待を胸に走り出したのも、全力で打ち込んだ日々も、失敗を何度も繰り返したのも全て過去のことだ。
一方で『勲章』には現在形で書かれた箇所が二箇所ある。
この2行は希望だ。TEAM SHACHIは闘志を失っていない。
最後に秋元帆華のMCをふりかえる。
“また”とは、改名時の仕切り直しと同様に、今また新たな気持ちではじめるということだろう。
“ここ”とは、今回のシャチサマであり、今冬に発売されるプライベートレーベル「ワクワクレコーズ」の1stアルバムのことだろう。
改名後の1stアルバム『TEAM』は魅力的な曲が収録されていたが、コロナ禍にリリースしたシングルコレクションという側面もあり、アルバムを貫くコンセプトは打ち出しづらかったと思う。
それに比べると今冬のアルバムは制約がなく自由に作ることができる。シャチのことだから、思いもよらない、最高にアツくて面白い作品になることを期待している。