感情と経済的合理性から生命保険を考える。【後編】
〇保険会社の「感情教育」
先の述べたように経済的合理性では生命保険の加入意義を説明することは難しい。なので保険会社は新入社員に「感情」に訴えた研修をすることがほとんどだ。これは実際に死亡保険金が支払われた例を紹介し「お父さんのおかげで大学進学ができました。これからも頑張るから暖かく天国から見守ってください」的なメッセージの動画や手紙などを紹介するのである。涙もろい方はここで号泣していたりする。めちゃめちゃ感動的な作りになっているので、特にお子さんのいる人などはたまらないであろう。そこに「保険料もったいない」といった思想は一切示されない。そうして「万が一のための保障を進めることには意義がある」と使命感を燃やすのである。強い使命感を持った人に保険会社は営業を頑張ってもらうのだ。
私もこういった研修には参加したことがあるので使命感を燃やしてしまう気持ちはわかる。また、元保険営業マンで今はコンサル業をしている方に「私はこれだけのお客様にこれだけしっかりした保障を販売してきました!」といった研修にも参加をしたことがあるが、それも同じようなものである。ただ1点違ったのは「保険料」についても言及したことだ。その方は保険料について「掛け捨ては掛け捨てで終わってナンボです!お客様には『健康でよかったですね!何もなくてよかったですね!』と言いましょうと力強く語っていた。確かに一理あるが、私は「販売側に都合がいい詭弁だよな」とその時は思った。まあ、販売側にしている研修なので仕方がないといえばそうなのだが。
仮に25歳で保険料毎月2万円の保険に加入したとして65歳定年まで40年間、いくらの保険料を支払ったかと計算すると、、、40年間で960万円だ。960万円ですよ?高級車買えるし、子供一人分くらいの教育費になる。老後だって多少は余裕を持った気持ちになれるだろう。高額な保険料を支払って「何もなくてよかった」「掛け捨ては掛け捨てで終わったよかった」と言い切れるのは収入が多く、生活に余裕がある人に限られるのではないだろうか?多くの人は念の強弱はあれ「あーあ、もったいなかったな」と後悔するのではないだろうか?保険は実は高額な買い物なのだ。
確かに保険金を給付されてすごく助かった、という人もいる。収入の柱を失う影響は家族にとって大きなインパクトだ。保険で救われた人が多いのも事実。ただ、それだけをフォーカスして販売を行うことは、ある意味説明不足ではないかと思う。「感情」だけに焦点を当て高額な保険料を支払わせるというビジネスモデルは、もう今後無くなっていくだろう。以前は「一家の大黒柱」を失うデメリットは計り知れないほど大きかったかもしれない。ただ、今は女性の社会進出も進み、社会保障も増え「一家を支えるのはお父さん、お母さんは家庭を守る、大黒柱に何かあったら残された家族みんな路頭に迷う」と考える人は減っていると思う。加えて、昔と違い今の日本はとても「順調な経済成長」をしているとは言えない。経済規模は中国に抜かれ、あと数年でインドにも抜かれる。基幹産業の自動車も「化石燃料を燃やして走る」時代は終わり「電気で走る」時代に確実に変わる。その時に日本の自動車メーカーが今ほど存在感のある企業でいられるかは疑問だ。さらに、家庭の収入はこの20年間ほとんど増えていない。中国は言わずもがな、米国や欧州と比較してもその差は歴然だ。収入は変わらず、物価だけが高くなっている日本で、高額なお金を無駄にして後悔しないでいられる人はどれだけいるのだろう?リベンジ消費?お気楽に使わなかった分を気持ちよく消費に回せる人がどれだけいるのだろう?本当に甚だ不思議に思う。思わないですか?
だから、私は皆さんに無駄にお金を消費してほしくないので、この文章を書いている。よくわからんライフプランを提示されて「これだけの保障が必要です!」と高額な保険料を支払う羽目にならないように。勘違いしてほしくないのは、私は全く保険が無駄といっているわけではない。子供に万が一でも苦労をさせたくないからと、しっかりした保険に加入するのもアリだと思う。ただ、保険という転ばぬ先の杖が重すぎて生活の負担になったり、将来の後悔になってしまわないようにと思っているだけだ。
「感情」だけに流されず、「経済的合理性」だけで結論付けず、バランスを考えて生命保険の加入をしてほしいと思う。そしてバランスを考えるうえでもう一つ考えてほしいことは「生活様式」である。よく、経営者やインフルエンサーが言っている「いつ死んでもいいように、毎日を一生懸命に努力して生きる」こともその一つだと思う。しかしここで私が一番言いたいのは「毎日を気を付けて生きる」ことである。健康的な食事をすることや、適度な運動をすること、喫煙を控えたり過度な飲酒をしないなど健康に関することはもちろん、普段車の運転をする人は事故を起こさないように普段から注意をはらって運転する、定期的な健康チェックを行い大きな病気の早期発見に努めるなど、日々を気を付けて万が一のリスクを減らしていくことが大切だと思うのだ。そうすれば少しづつかもしれないが確実にリスクは下がる。生命保険会社が「健康診断を継続して受けていると保険料下げます」といった商品を出していることがその証拠といえるだろう。気を付けて生きていればリスクは軽減できるのだ。
毎日を気を付け、万が一のリスクを極力減らしながら、それでも予期できない事象のために公的保障も考慮し、生活が破綻しないよう最低限保険を掛ける。少しずつでも貯蓄をして、備えができたなら保険を減額し「もったいない」を減らしていく、、、。そういった形が理想なのではないかなと思う。無駄なお金を払って「まあいいか」と思えるほど環境に恵まれている人は少ないのが今の日本の現状だ。もちろん私もその一人である。そもそも保険は「万が一の時の十分なお金が足りない」人が加入するものなのだ。「お金持ちは掛け捨ての保険に全く興味がない」ことも私が経験した事実である。
▢考え方のまとめ
・保険を「経済的合理性」だけで考えない
・保険を「感情」だけで決定しない
・保険は「経済的合理性」と「感情」のバランスで考える
そして一番大切なのは・・・
一日一日を一生懸命に、そして十分な注意を払って用心深く、計画的に生きる
定期的に記事をあげていくので、スキとフォローしてもらえると嬉しい。
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