遠く遠く、離れ行くディズニーライン。な件。
今「若者のディズニー離れ」が起きていると言われている。チケットが高すぎてディズニーリゾートに行けないというのだ。
確かにここ数年のディズニーチケットの値上がりは大きい。現在、パーク入場料金は一番安い平日で8400円、土日になると10900円と高額だ。また、一旦パークに入れば食事やお土産などでもお金が必要になる。二人で食事をすれば簡単に1万円を超えてくるだろう。学生さんがアルバイトで稼いだお金で行こうと思えば、かなり気合を入れなければ遊べない感覚だ。
今でもたまに「デート代は男が出すものだ」みたいな、昭和的なことを言う人がいるが、ディズニーデートで二人分も出していたら、学生や若い社会人さんは一気に貧乏になってしまう。割り勘でも大変だ。
確かにディズニーリゾートは戦略的に「顧客の選択」をしている。この方針自体は営利企業として考えれば決してネガティブではない。むしろ投資者側からしたらポジティブな情報となる。
ただ、この「投資家側にポジティブ」なことが、市民生活にもプラスかと言えば、残念ながらイコールなことは少ない。
ディズニーリゾートに限らず、多くの「レジャー、観光業」にとって「コロナ禍」は大きな転換期になった。それまでの大勢を集客し「薄利多売」的な経営ができなくなったインパクトは非常に大きく、企業側としては「厚利少売」へ舵を切らざるを得なかったのかもしれない。年間パスポート制度を廃止し、ディズニーマニアのパークへの「ちょい寄り」を、有無を言わさずぶった切ったことは、その象徴だろう。
今のディズニーリゾートは入場料だけではなく、追加の料金でアトラクションを並ばずに楽しめたり、新しいエリアに入ることが確約されたり「お金を支払えば、より快適にパークを楽しめる」作りになっている。より多くのお金を投下する人がより素敵な経験をすることができるのだ。方向性が「量より質へ」と変わっている。
そしてこの「量から質へ」といったシフトは何もディズニーリゾートに限ったことではない。西のテーマパークと言えば「USJ」だが、こちらも入場料はピーク時価格で10900円とほぼディズニーリゾートと同じ。こちらはまだ年間パスポートが存在しているが、混雑時なんかはエクスプレスパスを利用しなければ、十分にアトラクションを楽しむことが難しいレベルにまでなっている。もちろん、食事なんかも合わせればディズニーデートと同じくらいお金が必要になる。友人と楽しそうに「ホラーナイト」を楽しむCMが流れているが、親から「年間パスポート」を買ってもらうなどしなければ、到底気軽に学生さんが遊べるような料金ではない。パスポートを買ってもらえなくて仲間外れにされてしまうお子さんもいるのではないかとハラハラしてしまう。(あくまで私の想像です)
そして私が住んでいる愛知県のお隣三重県にある「西の絶叫遊園地」である「ナガシマリゾート」も年々料金が上がっている。今年のプールなんか人気のスライダーはどれも一律1000円で早く乗れる制度になっている。遊園地の一日パスポート券も5800円と、上記2大テーマパークと比較すると安く感じるものの、ここ数年でやはり値上がりしている。もちろん追加で料金を支払えば、待ち時間なくアトラクションに乗れるシステムもある。結果一日で使うお金の平均は上がっている。
つまり、この「量から質へ」はディズニーリゾートに限ってことではなく、レジャー観光産業全般にいえる現象なのである。
最近象徴的な出来事があった。USJをV字回復させた森岡毅氏がプロヂュースした「イマーシブ・フォート東京」のオープニングセレモニーの際、盛岡氏は、今までの多くのゲストを入場させて同じ体験をさせるテーマパークとは違い、イマーシブ・フォート東京は一人一人に違う体験をさせることを目指している、と述べている。ちなみにここで楽しめる「イマーシブ・シアター」はアトラクションに1人の参加者として入り込む形式のもので、客の反応や選択によって内容が変わる。だから「各々違う体験」となるわけである。ちなみに「江戸花魁奇譚」というショーでは、スタッフ15人に対し、ゲストは30人となっており、それだけでも「濃密な体験」ができる理由がうかがえる。その分料金も高くなり「プレミアム1デイパス」は9800円と元々高額だが「江戸花魁奇譚」を追加した1デイパスは14800円と腰が引けるくらい高額だ。
更に最近話題になっている「オーバーツーリズム」(観光客の増加に対し対応するスタッフの人数不足などで観光地の質が低下し、その悪影響が地域住民へも及ぶことなどを指す)もあり、対応するにはより多くのスタッフを雇う必要がある。人件費も上がるため、企業側としては料金を上げて対応せざるを得ない側面もある。
そう、「質」を向上させるには基本的に施設の利用料を上げるしかないのである。政府は「観光立国」なんてことを述べていたが、一人一人の消費額を上げるのであれば、当然商品やサービスの単価は上がっていく。
結果「お金のない人は遊びに来なくていい」という事になる。客層は「選択」されていくのだ。これを象徴的に表したものが「若者のディズニー離れ」である。
まあ、企業側からすれば「お金がある人がたくさん利用すれば利益は上がる」「経営側からしたら当たり前の考え」という意見もあるだろう。いや、その通りかもしれない。
だけど、本当にそれでいいのだろうか?
日本は治安の良い国だと言われている。そしてそれは「皆が等しく生活に苦労していない」、所謂「国民総中流意識」から生まれた副産物だ。当然ながら格差が広がり貧富の差が大きくなれば、外国のように犯罪は増えるだろう。
極端なことを言えば「ディズニーランドなんて金持ちしかいないから」とテロの標的になる可能性だってあるのだ。これからの日本人は「平和ボケ」
していてはだめだと思う。
しかし、こういったレジャーや観光業の「量から質へ」といった流れを止めることはできないだろう。若者がデートでディズニーリゾートへ行くのはどんどんハードルが高くなるだろう。もちろん、家族でディズニーリゾートを楽しむことも同じくハードルが上がる。
そんな未来って楽しいと言えるのだろうか?
質へのシフトでおそらくオリエンタルランドの株価も上がると思う。私はずいぶん昔から「オリエンタルランド株」を推奨してきた。しかしながら、今の私はオリエンタルランドの株を購入することを人には推めない。「みんなが楽しめる夢の国を運営する企業」ではなくて「利益を追求する普通の企業」になってしまった気がするからだ。
皆さんは、どう思いますか?
今日はここまで。
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