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旅の仲間

幻想水滸伝というゲームを知っているだろうか。
コナミから1995年~2006年に発売されたRPGのシリーズで、中国の大長編小説『水滸伝』にヒントを得てつくられた。主人公は過酷な運命(大切な人を亡くしたり、戦争に巻き込まれたり)を背負い、108人の仲間と協力をして、軍をつくり、敵となる国を倒すというストーリーだ。
ナンバリングタイトルとしては1~5まで出ているが、僕が好きなのは1~3である。

当時、RPGが大好きだった中学生1年生の僕は、中古のRPGを漁っていた。RPGオタクだったので、FFやドラクエなどの新作の主要タイトルはクリア済で、次にやるゲームを探していた。そこで出会ったのが、「幻想水滸伝1」だった。パッケージに載っているグラフィックは2Dでださいし、(当時すでに3Dが全盛だった)少し前のゲームだし、買うか迷った。でもストーリーは面白そうだし、キャラクターが魅力的だったので購入した。確かプラスティックのパッケージが割れた状態で3000円程度だったと思う。その10倍くらいの価値はあった、と今は思う。

ゲームを始めると、そのキャラクターの多さにびっくりした。そして操作性の良さに、すぐに引き込まれた。物語の序盤、主人公の親友が亡くなる場面で、このゲームが大傑作であることを予感する。主人公は親友から、呪われた紋章を引き継ぐ。紋章とは巨大な力を使える魔法のことである。強力な魔法が使える反面、紋章を持つ者は不老という呪いも受け取ることになる。(この二律背反性!)
雨のシーン、親友が亡くなり、主人公は自分の故郷から追われる。セリフがなくても、主人公の心情が伝わる。その後、敵軍に反対する組織である解放軍のリーダーになり、最終的には世界を平和に導く。
僕は、こんな面白いゲームがまだ眠っていたのかと衝撃を受けた。ドラクエやFF以外でこんなに夢中になれるゲームがあるとは、と思った。

その後、中学生2年生のときに幻想水滸伝2が発売されすぐに購入した。前作とは違い友情をテーマにしたストーリーは美しく、主人公の幼なじみであるキャラクターが少しずつ敵側になっていく話は、あまりにも切なかった。

そして、幻想水滸伝3。1、2とは違い、主人公が3人いて、複数の視点から戦争や歴史を描くというのがコンセプトだった。1、2に比べると、ドラマ性は弱まったが、そのリアルなストーリーの説得力は1、2をしのぐと思った。ぼくはこのゲームをやったあと、図書館で、『世界の歴史』の本を読んだ。一つの事件でも複数の視点からみるとまるで違う事件に見える。この気づきから『世界の歴史』の本を手に取ったのだ。

幻想水滸伝1~3には、ゲームとは思えない、リアルなストーリー展開がある。そして、一つの目的を共有し、協力しながら冒険する魅力的な仲間がいる。(敵でさえ魅力的に感じるのだ)

考えてみれば、僕らの実生活でそれほど多くの仲間ができるだろうか。人によるのかもしれないが、僕の場合は仲間と呼べる人はあまりいない。学生時代は少しいたが、社会人になってから関係は疎遠になり、ずっと一人旅をしている感じだ。幻想水滸伝のように108人の仲間とはほど遠い。まあ、僕自体良くも悪くも変わった人間だから仕方ない面はあるが、幻想水滸伝のように同じ目的を共有し、協力しあえる仲間がいたらいいなと思うときがある。

余談だが、幻想水滸伝1~3を手がけた村山吉隆さんが手がけたRPG『百英雄伝』が来年以降に発売される。今から楽しみである。

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