#7 コルトレーンという宇宙(チャーリー・ワッツ)
第一回目で、「無人島にストーンズのアルバムを1枚だけ持っていく程度の話ならば」なんぞ、あたかも、そんなもの書いても仕方なし!的なことを、のたまっておりましたが、ナントカモーターの幹部に連れられて、現在、無人島におります。漫画みたいな話ですが、残念ながら漫画は描けるようで描けません。ですから信じていただくしかございません。
結局のところ、「Exile on Main St.」と「Black And Blue」を選びました。はい、しれっと2枚持ってきちゃったんですけどね。食べ物や水の調達、住居の建築、道路の整備、風力発電所の建設などなど、インフラ関係のしんどい作業を炎天下の中しておりますと、「Some Girls」にしときゃと良かったなと思ったりもします。
結局、お魚も猪もゲットできずに、ウーバーにマックを持ってきてもらって海辺に座って、ペラいバーガーを食べておりましたら、波内際にキラキラと光るものが。
ジョン・コルトレーンの「A Love Supreme」だって。15の夜にボストンの郊外のCDショップでガメたものだが、どうにも理解不能で海に放したものじゃあないか。盤面には、なぐりがきで「未来のオイラへ、考えるな!感じれ!」と。
「ま、まさかだだろ!本当は『アルーデ・ベルチ』だと思っていたのに」
深い静寂、星々が煌めく夜空。「A Love Supreme」を流した。
曲が始まると僕の魂は、まるで宇宙の遠くへ、遠くへ漂っている気分に……。
「こ、これはJAZZなのか?いや、まぁJAZZか。いや確かにJAZZの括りに入っているはず…このスリリングな感覚は、何だろう『Monkey Man』のイントロが……いや、違う……ラリっているのか?」
目の前でストーンズが演奏しているじゃあないか。オイラの一番嫌いな夢オチじゃあないか。しかもライブ中に寝ているだなんて。あぁ、「Miss You」が流れていたんだっけな。そりゃ仕方ない。見回すと、やっぱり外人以外は欠伸しているじゃあないか。
ーーー
ハイハットの音を抜く奏法で有名な、チャーリ・ワッツの演奏は引いたり足したり。だから、だから、キースはいつもチャーリーを愛していた。お世辞なんかじゃあない。
「俺は、いつも自由にプレイできた。俺の音を、よりオーディエンスに届けてくれて、ありがとうよ!月でいてくれたのを感謝してんだぜ」
「あの時は『オレのドラマー』なんて言ってごめんよ。お前はストーンズの宇宙だと気がついていたからさ、嫉妬ばかりしていたんだ」
「昔の話じゃあないか。それに俺は宇宙なんかじゃないよ。ただただ時間は流れていくもんだ。だから早くパーティに戻れよ」
「あぁ、80歳になっちまって、思い出さないわけがないからな」
「らしくないじゃあないか、お前は、今のところ白人最強のブルースマンだよ……」
騒ぎが終わったら「これを聴いてみろよ」
彼はミックにコルトレーンの「Blue Train」を手渡した。
「あぁ、『Blue Train』かぁ。そう、そうなんだよ。俺たちはイギリス人。そして、やっぱり俺たちのルーツは確かに両刀だよな」
そういや、無人島で、そんな夢の続きの見たような気がしたんです。
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