冬が過ぎたから
冬が過ぎたから、何をしようか。
そうだ、暖かさに包まれよう、シャツ一枚で地面に触れて。
そうだ、土の匂いを嗅ごう、アスファルトより暖かい柔らかさ。
そうだ、行ったことないところにいってみよう、私以外を知る旅路。
そうだ、写真を撮ろう、芽吹く前の武骨な命。
それこそがふさわしい。
どうしてか名残惜しい。
ここにはもう無いのか。
蒼く光る氷。
蒼鉛の山々。
金色の空。
生き死にの律動を奏でた木たち。
瞬間冷凍された花や草。
白い砂漠と、私どもの影絵。
一夜だけの灯を保持する雪の生きざまよ。見せかけの永遠性と乖離する、朝のすす。
凍った大地、何よりも冷たいアスファルト、マンホール、けど不思議と唯物的ではなかったよ。
氷点下のオリオン、沸騰間際のペテルギウス。
頭がぐちゃぐちゃになって帰った稽古帰りの情景。
足元にはガラス細工のような雪、雪。青紫の夜空に白く光る月、屈折して尖る色は赤、朱、紫、青。冬の天の川や、自身の重さで回転しているアンドロメダ銀河。星たちの衝突、爆発。そして辺り一面は遺骨だらけ。それを包み込む周りの星たち。まるで葬列。夢の中だから綺麗だった。
私のパロールとこれらエクリチュールを凍らせ、保持する冷たさよ。
これが私の冬。愛して止まない、冬。囚われてしまった、冬。
振りきることなどできようものか。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?