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正負の対照表〜100%の苦境などない〜

災いというのはすべて、そこにふくまれる幸運と、今よりさらに不幸な結果とを、考慮に入れるべきではないか。
-デフォー『ロビンソン・クルーソー』

ダニエル・デフォー(著),鈴木恵(訳)『ロビンソン・クルーソー』(新潮文庫)P105


「悩みを紙に書き出そう」
「その日あった良いことを3つ日記に書こう」

誰もが一度は耳にした言葉だろう。
確かに力のあるアドバイスだが、一方、こう反論してしまうこともありそうだ。

「わざわざ悩みを書いたりなんかしたら余計にドツボにハマるのではないか」
「辛い時に良い出来事を考えるのなんて無理だ」

わざわざ悩みにハマることはないし、かといって無理にポジれとも言わない。
状況を冷静に観て、ニュートラルに引き戻そうよ、というのが今回の話。

具体的には、一度悩み・不満を吐き出す。
そして、各々の項目を裏返し、意外と何とかなっている点を探してみよう、と。

冒頭に掲げた不朽の名作の主人公・ロビンソンは航海中に難破、
たった1人流だけ無人島に漂着。
が、彼はそんな中、まさに上記の考え方を用いて、
"思っているほど状況は悪くない"と徐々に立ち直っていく。
 

…俺はまだましなほうではないかと、できるだけ心を慰めるようになり、帳簿の借方と貸方のように公平に、自分の享けている幸せと忍んでいる不幸せとを書き出してみた。
 
悪いこと
良いこと

恐ろしい孤島に漂着し、救出される見込みはまったくない。
だが生きており、他の乗組員は皆溺れ死んだ。
  (中略)
周囲には誰もおらず、ひとりぼっちで、人間社会から追放されている。
だがひもじくはないし、不毛の地で食べるものもなく死にかけているわけでもない。
 
身を包む衣服もない。
だがここの気候は暑く、衣服などあってもろくに着られない。 
  (中略)
全体としてみればこれは、惨めなだけの境遇などこの世にはまずないこと、どんな境遇にも負の面もあれば感謝すべき正の面もあることの、たしかな証になっている。
-デフォー『ロビンソン・クルーソー』

ダニエル・デフォー(著),鈴木恵(訳)『ロビンソン・クルーソー』(新潮文庫)p110-112

 
「あくまで物語だろう」と言ってしまえばそれまでかもしれない。 
が、そのような極端な状況からでも活路は見出し得る、
という例を見た方が、多少なりとも挑んでみやすくなるのではないだろうか?

最後に、2000年前から語り継がれれきた哲人の言葉を引いて締めようと思う。

どのような状況であっても「取っ手」は2つついている。
片方をつかめば物事をうまく運ぶことができ、もう片方をつかめば行き詰まる。
-エピクテトス『要録』

エピクテトス(著),アンソニー・A・ロング(編),天瀬いちか(訳)
『2000年前からローマの哲人は知っていた 自由を手に入れる方法』



※上記はあくまで筆者個人の見解であり、心理療法等の専門的見地に立つものではない点ご了承下さい。

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