プログラムと深海魚

昔はね、海の中はウィルスだらけだったの。ウィルスと言っても、そもそも1種類の生き物しかいなかったから善も悪もなかったのだけれどね。

ある時、ウィルスに彼らとは違う個体が生まれたの。彼らの生態は謎で、親やオリジナルのような存在がいるのかもわかっていない。突然変異だっていう声もあるわ。
でもとにかく別の個体が生まれたの。彼…女の子かも知れないけど、便宜上彼と呼ぶわね。彼は真っ白で、全体が影のように黒いウィルスたちとは人目で違うとわかった。

彼にはまた、別の特性もあったの。彼はウィルスを取り込んで、自らの力とすることができた。ウィルスからしてみれば脅威よね。でも不思議なことに、ウィルスたちは敵対行動を取るでもなく、ましてや逃げるということもせずに、皆んな大人しく彼に抱かれて消えていった。

皆と言ったけど、厳密にはやっぱりよしとしないウィルスもいたのかも知れないわ。ある日、ウィルスの一部が、深海を照らしていた太陽を乗っ取ったの。深海の闇はさらに深くなって、真っ白い彼も自分がどこにいるのかわからない。
これが「いたのかも知れない」という、あくまで推測の域を出ないのは、太陽を乗っ取ったウィルスは、その後何をどうするでもなかったからなの。太陽を乗っ取ったところで、深海の権力を握れるわけじゃない。あくまで太陽は灯でしかないから、太陽自体に力があるってこともないし。そして彼を倒すこともしなかった。

やがてそんなウィルスも、自らの元へと辿りついた彼の中へ、消えていった…。



彼の方が征服者じゃーん。そして誰もいなくなったのに語れるあなたは何者だー!(ノリツッコミ)

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