- 内部監査の重要性 -
内部監査(Internal Audit)は上場企業にとって重要な業務・役割ですが、「なぜ重要なの?」「どこまで必要なの?」「どれくらい必要なの?」など、あまり知られていないようです。今回はその前段(introduction)をご紹介します。(3分程度でお読みいただけます。)
内部監査は、なぜ必要なの?
真っ先に思いつくのは「IPO(新規に企業の株式を証券取引所に上場させること)の準備段階/上場後で必要な業務・役割」ではないでしょうか。これは日本もアメリカでも同様です。(※アメリカの内部監査については、後日説明します。)
しかし、なぜ必要なのでしょうか?
監査要点として
実在性(本当にあるのか)
網羅性(すべて記録されているか)
権利と義務の帰属(会社のものか)
評価の妥当性(適切な価額か)
期間配分の適切性(正しい期間に計上されているか)
表示の妥当性(正確に開示されているか)
財務諸表監査の監査人はこれらを監査します。内部監査も同様の要点で監査を実施します。
(ここからは、私の考え・見解でお話しします)
会計監査人が行う財務諸表監査は、財務諸表に記されている数字(金額)を見ることに対して、内部監査は、実態(実務内容、財務諸表以外の記録書類の記録内容や保管状況、など)を調査していきます。
内部監査は前述のとおり「実態を調査」しますが、”間違い探し・不正検出だけ” を目的としていません。
内部監査人協会(通称:IIA)は、内部監査の使命を次のように定めています。
” The mission of internal audit is to enhance and protect organizational value by providing risk-based and objective assurance, advice, and insight. "
(参照先:IIAサイト https://www.theiia.org/en/standards/mission-of-internal-audit/ )
「内部監査の使命は、リスク・ベースで客観的、アシュアランス、助言および洞察を提供することにより、組織体の価値を高め、保全することである。」
つまり、
アシュアランス(保証)業務: その企業のリスクに従って、誤った業務運営、管理体制に対して客観的に「改善すべき」と指摘していくこと。
コンサルティング(助言)業務: その企業のリスクに従って、誤った業務運営、管理体制を「どのように改善していくか」について助言・助成(ファシリテーション)していくこと。 また現在の業務運営、管理体制について、さらに合理的・効果的な業務遂行ができるかを助言・助成していくこと。 (※助言・助成は、業務改善の遂行を部門/個別の業務に直接的に行うものではないことにご注意ください!)
これらを客観的に業務遂行することが重要なのです。
「間違いを指摘するだけの内部監査」では、企業の成長・業績向上には「絶対必要」とは言えません。内部監査の大目的は、その企業の事業が、リスクに従って合理的・効果的な業務遂行ができるかを助言・助成していくこと、なのです。
上記のように考えると、内部監査は「上場企業にとって重要な業務・役割」という理解ではなく、本来の内部監査の業務・役割は、かなり大きな目的と実効性を秘めているものであることがおわかりになっていただけると思います。
内部監査は、どこまで/どれくらい必要なの?
内部監査が、どこまで/どれくらい必要なのか? それは結論から言いますと「経営者のポリシー(政策、方針)」によります。よく聞かれるのは、企業の規模(売上高、人員数など)、事業内容や業界による・・・ですが、これは必ずしも正解とは言えないようです。理由は極めて簡単です。
企業の事業内容やこれに属する業界があることはもちろんですし、経営者のポリシーによって過去・現在・未来の企業の規模が形成されるわけですから、「企業の規模(売上高、人員数など)、事業内容や業界による」は必要です。しかし、経営者のポリシーの中に、
当社のリスクはどのような/どれくらいのものがあるのか? (*社内で周知・理解されているか?)
内部監査をどのような位置付けとして捉えるのか?
内部監査でどの程度の深度(深掘り)で企業の実態を捉えるのか?
これらが必要になります。(無ければ、内部監査は単なる「間違い探しの部門」になってしまいます。)
一般的に、内部監査部門のレポート先は、代表取締役・社長(または内部監査を所管する部門の長)ですので、この代表取締役・社長が、内部監査からどのようなレポートを受け取りたいのか?という要望・要求が無ければ、内部監査は業務として成立しないことになります。
そのため、内部監査が、どこまで/どれくらい必要なのか? の回答は、「経営者のポリシー(政策、方針)」となります。そして、IPOともなれば、まさにこの経営者のポリシーがその企業の「IPO準備・上場後」の命運を分けるにつながります。