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遅くて、退屈で、つまらない場所

SNSには書かない(書けない)ことを中心にnoteを月に4本更新します。中身は藝大院の話、プロジェクトの過程、アイデアの種、苦しんでいる葛藤の様子などを書き散らかしてます。
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修了作品解説論文「流されずに流されていく」 5章 おわりに:「流されずに流されていく」ということ

本記事は修了作品解説文の5章です。4章はこちら。 ここまで、自身の生い立ちや原体験、美術作家として活動をはじめる前の仕事を紹介しながら、どのような経緯と必然性を持って現在の表現手法に行き着いたのか。また、「歩行」という行為がどのような意味を持ち、この社会と自身の生き方に作用するのか、先行作品や事例を参照しながらこれまでの実践を紹介してきた。 つまるところ「流されずに流されていく」とは、どのような状態や態度を意味するのだろうか。

修了作品解説論文「流されずに流されていく」 4章 修了作品を構成する4つの作品と先行事例との接続

本記事は修了作品解説文の4章です。3章はこちら。 これまで論じてきた幼少期の原体験から時代背景、デジタルメディアにおける言語表現の限界性、そして歩行という実践の可能性は、修了作品「流されずに流されていく」として結実する。本作品は4つの独立した作品によって構成されているが、それらは全て「歩行」を中心に据えて展開されている。本章では、各作品の詳細な分析を行いながら、シチュアシオニストの実践や現代アーティストの先行作品との接続を試み、修了作品の同時代性と表現の必然性について論じて

2024年の振り返りについて

毎年ブログで1年の振り返りブログを書いていて、その時間が結構好きだったりする。しかし、今年はゆっくり書く時間がなさそうなので写真もなしに雑に振り返りたいと思う。 昨年12月はCAF賞のファイナリストに入り、パリから日本に一時帰国したものの負けて(入選止まり)、楽し悔しかったのだけれど、これはパリで修行して来いというメッセージと捉え年末にパリに戻る。 友人たちと年越しをして、初日の出を待っていた時に、能登の震災が起き、遠い国から地元にいる家族や友人たちの心配をしていた。20

最終候補者リスト

今月提出した修了作品の作品解説文(32,000文字)を公開しているところだが一旦ブレイク。気づけばあっという間に年末なので諸々の近況を綴りたいと思う。作品解説文は現在第三章まで公開していていて、自分で言うのもなんだが相当気合い入れて書いたし面白いと感じているのでぜひ読んでみて欲しい。 ちょうど1週間前に、藝大取手校地にて最終審査会が行われた。審査なのでいつものように講評はなかったが、おそらく先端芸術表現科の教授たち10名と顔を合わせる最後の日になったと思う。1年半ぶりに訪問

修了作品解説論文「流されずに流されていく」 3章 表現の転換点:デジタル空間から歩行/美術

本記事は修了作品解説文の3章です。2章はこちら。 前章では、「プロ無職」という独自の肩書きを選択するまでの過程を、1990年代の新自由主義的な時代背景とともに論じてきた。本章では、その「プロ無職」としての活動、すなわちデジタルメディアを用いた情報発信を通じて直面した課題と限界について検討する。特に、表現の言語化・数値化や、アテンションエコノミーにおけるコンテンツの消費という問題は、新たな表現の可能性を模索する契機となった。この章では、デジタル空間から距離を置き、美術表現、と

修了作品解説論文「流されずに流されていく」 2章 美術制作以前:新自由主義の時代における『プロ無職』という肩書きの選択

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修了作品解説文「流されずに流されていく」1章 はじめに

東京藝大修士課程の最終審査を控え、修了要件のひとつである「修了作品解説文」を執筆した。 修了作品は先月のコートヤードHIROOで開催した個展「流されずに流されていく」と同名の映像インスタレーション作品。 この作品と研究内容について解説するには、自分が美術をはじめる前の「プロ無職」としてネット上でバリバリ発信活動してたときや、さらには、なぜ「プロ無職」を名乗るに至ったのか幼少期の原体験や時代背景を論じる必要があると考えた。 そしたら、最低文字数の倍以上の分量になった。大変

今年最も気合いを入れた公募について

静岡県の富士市に2年ぶりに訪問し、《ホットサンドメーカーズクラブ》ワークショップを開催した。 短い時間ではあったが、ホットサンドを食べながら色んな人からルーツにまつわる話を聞けたり、最終的に輪になって話す時間があったりして、濃い時間を過ごせた。映像記録しているので、振り返りながらどのような方向性で今後制作を進めていくか考えたいと思う。 《ホットサンドメーカーズクラブ》は2月にメディア芸術クリエイター育成支援事業の成果発表イベントにて展示予定! 今は一旦修論の執筆と、修了

地震はシンプルに萎える

昨夜、22時47分ごろに地震が来た。 この日はなんだか気分が優れず、こういう時は大体サウナに行けば一発なのだが、大雨強風もあって外に出ることができなかった。というわけで今宵はもう何もしないことに決めていた。自宅の風呂で済ませ、前から気になっていた映画を観はじめるが、とてもイライラする内容だった。むしろ気分が悪化するなか映画を観続けていたら、緊急アラームと同時に地震がやってきた。 思えば、フランスから帰ってきて以降初の地震だった。2023年の5月にあった能登の地震ぶりだろう

アトリエを片付けることが自分にとって作ること

個展の搬出作業でぎっくり腰一歩手前みたいな状態になった。 というわけで、腰痛対策に早速スタンディングデスクを導入した。これでアトリエで作業する際に椅子に座っている時間を減らすことができる。 また、別の問題は家の寒さだ。日本の家屋は寒い。寒すぎる。去年は札幌より緯度が高いパリで冬を過ごしたが、ヨーロッパの建物は構造や内暖房がしっかりしていて、とても暖かく、快適に過ごせる。日本から持ち込んだヒートテックを全く着なかったほどだ(屋内に入ると汗をかく)(欧米の人がダウンの下に半袖

作家としての働き方を変える

開催されていた個展「流されずに流されていく」無事、閉幕!! Webサイトに発表した作品等をアップしましたのでこちらも覗いてみてください。 数回にわたって感じたことなどを書き綴るとして、とりあえず最初に言いたいのは、搬出作業中に腰をやってしまった。

完全新作‘Swept along, but not swept away’について

4年ぶりの個展「流されずに流されていく」がコートヤードHIROOで11月17日まで開催しております。 展示がはじまれば多少落ち着くと思いきや全くそんなことなくあちらこちらでてんやわんやしており、ようやくこのnoteを執筆するに至ってます。 そして明日10日16:00開催の森としんめいPとのトークセッションは上限30名となってしまして、残り4席です。無料ですので是非この機会にお越しください。 そして、この展覧会で発表した完全新作の‘Swept along, but not

最終追い込み:先行告知

たぶん搬入期間はじまったら更新する暇ないと思うのでマガジンメンバー限定で先出し公開します。

愛、リニューアル、即興:ティム・インゴルドが語る芸術の未来

金沢21世紀美術館で開催された文化人類学者ティム・インゴルドの講演会に行ってきた。予約は瞬殺だったらしい。 インゴルドと言えば、勝手な体感だが、日本では人類学を超えて幅広いジャンルの人たちに知られている印象がある。「大学生のときゼミで読んだわ〜」という人もよくいる。自分は2021年に藝大に行く前、通っていたアートトの授業で「ラインズ 線の文化史」を読んだのがきっかけで、まあ、影響は受けていると思う。 「Lines(ラインズ)—意識を流れに合わせる」という展覧会がまさか地元