紅茶詩篇『地図にない安らぎの場所』
地図にない場所で休みたいと思ったら
旅の果てに辿り着いたのは私自身の家だった
私は私の部屋で紅茶を淹れた
机に開いて置かれていた手帳には
暦の今日の部分の空白に
青い蛍光ペンで印がつけてあった
何かを書き込んだ記憶は無かったが
今日の欄には自分の名前で
お茶をする予定が書かれていた
まるで自分を相手に先約を入れたように
日常と疲労に溺れていたんだろうか
得体の知れない虚しさを抱えたまま
私は紅茶を啜った
どの地図にも詳しく書かれていない自分の家の中で
地図にない場所でなら
安心して落ち着いて過ごせると思っていた
眠っている間さえ泣いていたような心が
手頃な安全に震えていた
味気ない紅茶が美味しくて
美味しいという言葉がほどける
凍空の下で花開く冬薔薇のように
凍っていた心が溶け出したみたいに
雪解け水に角はなく
春の淡雪に寒さはない
美味しさの味に含まれるしあわせの鉄分の味が
かつての私の毒されて悲しすぎた味蕾では分からなかった
もう何処にも行きたくないよ
私は紅茶を啜る
此処にあるべき心の芯の中で
私の中の植物が気づいて毒を祓う
安らぎが分かる精神を
私はしっかりと守り通していたんだ
何処かへ行こうとばかりしていた私は
ずっと彷徨う心を追いかけていたのだろうか
私は紅茶を啜る
心臓を抱きしめながら心に鍵を掛ける
もう何処にも行かないで
できればいつも家に居て
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