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(2023/09/04/月)国指定史跡・蓮ヶ池横穴群の線刻壁画の拓本①後編


前編はこちらになります

国指定史跡「蓮ヶ池横穴群」53号墓の線刻壁画の解釈

 今日は、昨日紹介できなかった蓮ヶ池横穴群の線画を紹介したいと思います…。

 昨日、博物館にて職員の方に紹介して頂いた、この絵の解釈は、
『死者の魂を船に乗せて、冥界に運んでいる様子を表していると思われている。鳥は冥界への道案内をしている。と言う説が有る。』
と言う事を教えて頂きました。

 職員の方に教えて頂いた、装飾古墳に関する資料

 この墓室の装飾について、詳しく書かれた書籍を教えて頂きましたので、今後、図書館にてその資料を読んで調べてみたいと思います。

職員の方に教えて頂いた、装飾古墳に関する資料
装飾古墳の絵柄の研究について、おススメの資料を教えて頂いたので、備忘録を兼ねて、ここに残して置きたいと思います…。

熊本県装飾古墳 総合調査報告書 1984 熊本県教育委員会
 こちらは装飾古墳の資料の中でも、特に参考になる物だと教えて頂きました。今後、資料を入手した後、読み進めて行きたいと思います。


装飾古墳の壁画 原始美術の神秘そさぐる 佐賀県立博物館 1973
 こちらの資料も読み易く、解り易いと教えて頂きました。こちらも図書館等で読んでみたいと思います。

職員の方に教えて頂いた、装飾古墳に関する資料

 宮崎市役所が発行されている、蓮ヶ池横穴群の線画に関連する資料

 昨日はこの解釈を教えて頂いた後、帰宅して資料を集める作業を行っていた所、解り易い資料が有ったので、下記に紹介したいと思います。

宮崎市公式HP
市政情報2018年8月31日
市広報みやざき平成30年9月号 No.899(蓮ヶ池横穴群P13)
こちらのPDFは図解も有り、解り易く解説がされていますのでお勧めです。
(掲載されているのはP13の1ページのみです)

関連する個所を一分抜粋致します。

線刻壁画に見る7世紀の人々の死への思い
 七世紀前半に造られた53号横穴の線刻壁画には、亡き人をしのぶ身近な人々の思いが込められています。
 死者の魂が船に乗り、鳥に羨道されて他界へと旅立つ様子を見送る人々。
 当時の人が死をどの様に考えていたかを表現した壁画です。

宮崎市役所ホームページより

 上記の資料に掲載された線刻壁画の復元図を参考にして、昨日撮影した拓本に何が書かれているのかを、illustratorを使って解り易くしてみました。

※こちらの写真は私が現地で撮った物で、施設に許可を得て掲載しております。
こちらは昨日撮影した元々の線刻壁画の拓本です。
資料を参考に、考古学で解釈されている図柄をなぞって整理してみました。

 上記の参考にした他の資料にも、画面内の『大(青色)』と『Ж(黄色)』の線画が何を示しているのか?については、特に何も書かれていませんでした…。

 この『大(青色)』と『Ж(黄色)』の線画については、昨日、学芸員の方に質問したのですが、『何を表現しているのかは判らない』との事でした。

 確かに、詳しい資料も残っていない状況で正確な事を知る事は困難だと思われます…。

 現在では意味が良く判らなくなってしまった遺物に出会う度に、毎回思い出す資料……

 この様に、現在では意味が良く判らなくなってしまった遺物に出会う度に、以前読んだ岡本東三氏の書かれた『トロトロ石器考』の冒頭部分を思い出します。

人間・遺跡・遺物 わが考古学論集1
昭和58年7月10発行
編者 麻生 優
制作 株式会社 溪水社
販売 株式会社 文献出版
119pトロトロ石器考 岡本東三
 こちらの資料は、埋蔵文化財センターの方に教えて頂いた資料で、過去の用途不明な道具について、解り易いたとえを冒頭で行われています。
(下記は概略なので気になる方は図書館等で読んでみて下さい。)

 著者は有る日、用途不明なプラスチックパーツを自宅の中で拾うが、何なのか判らなかったので本棚の上に置いておいた。
 後でコタツのパーツだと判るが、最近の物でさえ、作った本人か関係者じゃないと即答なんてできない。
 最近の道具でもコレだから、昔の道具だったらさらに難しい。
 民俗例、土俗例・出土状況や組み合わせ・仕様痕跡からの類推等から推定したとしても、それが使われている状態で出土しない限り、正確な利用方法は解らない。
 正確な事を知る為には厳密に分析しなければならない。

人間・遺跡・遺物 わが考古学論集1より

 …確かに今でも、ちょっと前の流行や文化が解らなくなったりする事も有るので、この壁画が書かれた7世紀前半頃(約1300年程前)に書かれたアート作品の題材について判らない事が有っても当然だと思います。

 そう考えると、むしろ『死者の魂を船に乗せて、冥界に運んでいる様子を表していると思われている。鳥は冥界への道案内をしている。と言う説が有る。』と言う所まで予想されている事自体が、凄い事なのだなと思います。

 宮崎みんなのポータルサイト miten !様に掲載された東憲章様 ( 県教育庁文化財課 )の壁画に関する見解

 又、別のHPに、更に詳しい解釈がされていたので、こちらも参考として引用したいと思います。

宮崎みんなのポータルサイト miten !
(MRT宮崎放送グループ 株式会社デンサン様が運営されているHPより引用(一部抜粋)致しました) 

ミテン>ミテンの本棚 > みやざき考古楽>
No.26 最南端の横穴墓群 東憲章 様 ( 県教育庁文化財課 )

 53号墓は、径17メートルの円形墳丘(2号墳)を持ち、玄室面積は16㎡と群内最大規模を誇る。12号墓に続く中心的存在と推定される。
 遺体を納めた玄室の壁面には、ある情景を描いた線刻壁画が見られる。船に乗り黄泉(よみ)の国へ旅立つ人物、別れの歌を詠唱しながら見送る人々、そしてその重要な場面を邪悪なものから守るように、左右の目をつり上げ、大きく口を開いた鬼が、対面する位地に描かれている。左右には供の者を従えている。
 これは、鬼面を中心に左右に従者を配する、いわゆる三位一体(さんみいったい)の構図であり、三尊仏などに見られるように仏教の影響である。
 日本国内での鬼の表現は、瓦や装身具(ベルトのバックル)などに見られるが、少なくとも7世紀後半頃から出現する。すると、この蓮ヶ池の鬼は、国内で最も古い鬼の表現と言える。

宮崎みんなのポータルサイト miten !様より。

 なるほど。やはりこの線刻壁画は、当時の死生観を書いた壁画と解釈されている様です。

 …上記の文章を読んでいて、他にも拓本が有った事を思い出しました。
そちらの資料については、再度博物館に行って観覧したいと思います。
(写真を撮り忘れていました…)

 …しかし、やはりここにも画面内の『大(青色)』と『Ж(黄色)』の線画が何を示しているのか?については、何も書かれていませんでした…。

『大』の模様と似た模様

早稲田大学の文化・研究・教育を発信WASEDA ONLINE様に紹介されている、古代エジプトの墓や神殿の天井に描かれた模様と、蓮ヶ池横穴群53号墓の線刻壁画』に書かれた『大』のデザイン。

 でも、この『大(青色)』の形については以前、全く違う場所で見た事が有るので、参考として、ここで紹介したいと思います。

読売新聞オンライン
早稲田大学の文化・研究・教育を発信WASEDA ONLINE様より。
WASEDA ONLINEオピニオン教育文化

古代エジプトの天文学
近藤 二郎/早稲田大学文学学術院教授


 
こちらの記事は、文章が読み易くて解り易いので私は好きです。

 その中でも、『蓮ヶ池横穴群53号墓の線刻壁画』に書かれた『大』の模様と同じデザインの物が紹介されていたので、一部文章を抜粋して紹介したいと思います。

2.北天の星座、滅びない星々
 古代エジプトの墓や神殿の天井には、北天の星座が描かれています。
 これらの星々が、イケム・セク(滅びない星々)と呼ばれるのは、地平線下に没することのない「北天の周極星」を表すものと一般に考えられています。

 現存する最古の北天の星座を表現したものは、第1中間期(紀元前2145年~前2025年頃)のアシュート出土のイディという人物の木棺の蓋の裏にある雄牛の前脚で描かれたメスケティウという星座です。 

読売新聞オンライン早稲田大学の文化・研究・教育を発信WASEDA ONLINE様より。
上記のリンク先の画像と比較して頂く為、再度同じ画像を紹介致します…
こちらは昨日撮影した元々の線刻壁画の拓本です(2度目)
上記のリンク先の画像と比較して頂く為、再度同じ画像を紹介致します…
資料を参考に、考古学で解釈されている図柄をなぞって整理してた物(2度目)

 リンク先を見て頂くと判るのですが、『大』の文字と同じデザインの模様が壁画に書かれています。

 興味深い事に、この『大』の模様が描かれた、古代エジプトの壁画には、神や人物、船の絵も同じ画面に描かれています。

 蓮ヶ池横穴群53号墓の線刻壁画は、ビジュアル…と言うか、絵のクオリティーはエジプトの絵とは似ても似つかない物ですが、使われているモチーフが、人物・船・記号『大』と重なっている物が多い気がします…。

 古代日本と、中東との間に何らかの繋がりが有ったのでしょうか?
距離的な差と、年代的な差※が有るので、どの様な関係性が有るのか想像もできません。
※(エジプトで『大』のデザインが墓や神殿に書かれ始めたのは約4000年程前。いつまでエジプトで『大』のデザインが使われてれていたかは不明ですが、蓮ヶ池横穴群53号墓の線刻壁画が描かれたのは約1300年程前なので、両者には最大で約2700年の差が有ると思います)

 両者の文化的な関係性については良く判りませんが、この様なデザインや図案等を見付けると、面白くて資料を集めてしまいます…。

 そういえば以前、早稲田大学名誉教授の吉村作治教授が、福岡県の装飾古墳に描かれた船のデザイン(珍敷塚古墳に描かれた船の絵)が、エジプトの太陽の船そっくりで、その様な図柄は国内で幾つも見つかっていると言われていた様な…。
(記憶が曖昧なので、今後、図書館やHPで資料を探して読みたいと思います)

 デザインの意味については今後調べて行きたいと思います…。
又、この『大』のデザインは、今後作品を作る際に隠し味として使って行けたら良いな~と思います…。

 蓮ヶ池横穴群53号墓の線刻壁画の拓本に関する個人的な感想

 私はよく博物館や資料館等に行くのですが、こちらの拓本の展示物の様な、線刻壁画の拓本を常設展で展示されている施設を、こちらの博物館以外では見た事が有りませんでした。

 ですので、珍しさも有って、この展示物の正体が何なのかを知りたくなり、今回詳しく調べる事にしました。
(それ以外にも、気になっていた事は有りますが、今回は割愛します)

 結果として、作品製作に役立つ面白い情報と、創作の為のネタを沢山仕入れる事が出来たので良かったです。


 本日は文章が長くなってしまいましたが、最後まで読んで頂き、ありがとうございました。 

2023/09/04/??~2047


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るてる
最後まで読んでいただきありがとうございます。 作品製作をしているので、サポートいただけたら創作活動に関する費用にしたいと思います。

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