読書「羅生門」
10月5冊目は青空文庫の「羅生門」です。
短編小説「羅生門」とは
芥川龍之介の「羅生門」は、平安時代末期の京都を舞台に、ある下人が生き延びるために道徳を捨てて盗みを選ぶという短編小説です。荒廃した羅生門の上で、老婆との出会いを通じて人間のエゴと生存本能の葛藤が描かれます。
建築物の「羅生門」とは
羅城門(羅生門)は、平安京の南端に位置した都の正門で、都の内外を分ける象徴的な建造物でした。二重構造を持ち、朱雀大路の先に立つ壮大な門でしたが、816年と980年の暴風で倒壊し、その後再建されることはありませんでした。現在、京都市の公園内に石碑が建ち、その跡地として残っています。
羅生門のテーマ
この短編は、人間の倫理観や生き方について深い問いを投げかける作品です。
人間のエゴと道徳観
下人が老婆の行為を非難しつつも、最後に自らも盗みを選ぶという場面は、人間が状況次第でどれだけ簡単に道徳を曲げるかを象徴しています。生存と正義の狭間
物語では、生き延びるための行為が正当化されるかが暗示されています。下人も老婆も、それぞれ生き残るために道徳を捨てることを選びます。羅生門の象徴性
荒廃した羅生門は、当時の混乱した時代背景を反映し、同時に人間の心の中にある善悪の葛藤を象徴していると言えます。
感想
羅生門は人間の正義と悪の境界が簡単に揺らぐことを鮮烈に描いています。極限の状況では、正義が容易に覆されることを示唆しています。
さらに、条件が揃えば人は都合の良いように物事を解釈することを象徴しています。下人は「生きるため」という理由で盗みを正当化しますが、このような判断は道徳観が脆弱であることを浮き彫りにします。
このテーマは、現代のSNSでも見られる現象です。SNS上では、情報が断片的に広まる中、特定の文脈が強調され、正義や悪が都合良く解釈されるケースが多々あります。人々は自分に有利な解釈を選び、時には他者を攻撃することもためらいません。
『羅生門』が示すように、人間の倫理観や行動は、時代や環境に左右されやすく、その問題は現代でも変わらないことを痛感させられます。