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クトゥルフ神話TRPG翻訳のすゝめ



はじめに

 マールストロームと言う新興の未訳TRPGを取り扱う日本の出版社を知っているだろうか?
 その社長(?)がクトゥルフ神話TRPGの未訳に興味を示した初心者にとんでもないことを吹き込んだ。

販売がChaosiumになっていれば公式。表紙的には「The Miskatonic Repository」のロゴが入ってると同人。ケイオシアムのロゴが載ってれば公式。

https://twitter.com/Melolibur/status/1688448690237935616?s=20

 これは大きな誤りである。より正確に言えば蝶と蛾の違いを問うくらい例外が多く機能していない判断基準である。
 これが立場のない一般TRPGプレイヤーが言っているならまだしも、企業人としての名義がある垢で初心者に吹聴するのは頂けない。
 逆に未訳に関わる企業人でさえ、この認識なのだから初心者だけでなく、翻訳している人も含め海外におけるクトゥルフ神話TRPGの同人と公式の区別やオススメについて解説する必要があると思いこの記事を書くに至った。
 以下、公式wikiの閲覧が必要なので
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同人シナリオと公式シナリオを見分ける方法

 結論から述べると、画一的な方法は無い
 だが、判断することは可能である。

リストを確認しよう

 先程の誤った見分け方で出版社がケイオシアムであれば公式と言った方法がある。だが、ケイオシアムが出版社であるがリポジトリーのロゴがある作品が存在する。

https://www.yog-sothoth.com/wiki/index.php/CoC:Miskatonic_Repository

 このリンクがその一覧である。モノグラフと言う、ケイオシアム社を通したユーザー作品(これは公式作品扱い)が以前存在したが、それから漏れた作品がこれに該当する。中にはケイオシアムで現在クトゥルフ神話TRPGの編集長を務めるマーク・モリソンが他社雑誌で賞を獲得した(当時もケイオシアム所属ライター)シナリオである“The Saltwater Inheritance”も含まれている。
 このリストにあるものは公式に限りなく近いが、同人という扱いの作品たちである。

かつて公式シナリオだったもの

 ケイオシアムが発売しているのに同人が存在するならば、もちろんその逆、同人が販売しているのに公式シナリオも存在する
 先程、モノグラフの話をしたが、それがその最たる例だ。もちろん、モノグラフの制作はユーザーであり、現在は新規販売は7版しか認められていないので、制作者がコンバートしていない場合は再販されていない。
 また、この分類には現在はライセンシー契約が打ち切られているが企業や個人でコンバートした作品も含まれる。有名なところだと7版の制作者でもあり、かつて英国でクトゥルフ・ブリタニカや派生システムのLaundryを販売していたCubicle 7のライターであるポール・フリッカーの“My Little Sister”などがその代表例である。

https://www.yog-sothoth.com/wiki/index.php/CoC:MULA_Monographs

https://www.yog-sothoth.com/wiki/index.php/CoC:Scenarios

 この分類に関しては、気合でリストを覚えて貰うしか無い。翻訳を始めれば大体このリストを眺める日々が続くので作者名の方でピンと来て確認することが多くなるだろう。

ライセンシー、サードパーティが出版しているもの

 最後にケイオシアムが出版社でもなければ、リポジトリーのマークのない公式刊行物である。
 クトゥルフ神話TRPGは国内外で遊ばれている様に、各国の様々な企業がライセンスを獲得している。これは翻訳だけでなく、新たなサプリメントやシナリオの発売なども含まれている。有名所だとオスカー・リオスやケビン・ロス率いる“Golden Goblin Press”、自転車操業でキックスタートを追い出された“Stygian Fox”などである。
 他にも“Challenge Magazine”や“White Dwarf”などの雑誌がこれに当たる。
 これらの見分け方は上記のシナリオ一覧で企業がライセンスを持っているか確認することと今までと同じだが、注意点がある

 ライセンシー企業の中にはライセンスを獲得せず、なおかつリポジトリーでもなく海賊版の状態で発売し、売上が見込めてからライセンス契約を事後承認的に結んだ作品が存在する。
 有名なところだとポール・フリッカーがケイオシアムを去り80年クトゥルフへの回帰を謳い立ち上げた“The Good Friends of Jackson Elias: Cthulhu podcast”の『TOME』であったり、様々なお役立ちサプリで有名な“Sentinel Hill Press”の『The Arkham Gazette』がこれに当たる。
 これらは現在の刊行物はライセンスが付与されているが、過去の刊行物に関してはライセンスから漏れている扱いである。公式でありながら同人を孕んでいるので注意が必要だ。

https://www.yog-sothoth.com/wiki/index.php/Privately_Published_Material

 一応、個人出版のリストで内容を確認できないこともないが、日本の同人を把握するのが不可能なように、こちらの更新は止まっているので、その企業のTwitterやブログ、Discord鯖を確認し逐一調べるしか無い。上記同様、知ってるライターやサプリの会社ということでピンと来てチェックすると言った経験が求められる。

まとめ

 同人か公式かを見分ける画一的な方法は無いが、気合でリストを頭に叩き込めば何となく判断が付くようになるので怯まず翻訳をしよう

それでも翻訳をしたい人へ

 公式か同人かを見分けるのは難しい、これにケイオシアムが自社サイトで販売している同人シナリオとかもあり、翻訳してあとがきで判明したなんてこともある。

 それでも翻訳したい、海外のクトゥルフのシナリオが気になると思った人は、公式もあれば多くは同人だが、一応公式サイトということでレビューや傾向が確認でき、何より無料であることから

https://www.yog-sothoth.com/files/category/4-scenarios/?sortby=file_downloads&sortdirection=desc

 このリストからダウンロードして初めてみるのがオススメである。私が初めて翻訳したのもここからだ。


備考

 ここではモノグラフ作品を公式wikiの形式に則り、公式の刊行物と扱った。
 しかしながら、リポジトリーとはモノグラフの精神的な後継システムとケイオシアムも捉えている様に、モノグラフとリポジトリーでは手続きが違うだけで大きな差はない。一部のライターは金が早急に必要だったから、個人でサッと作品を書き上げ、モノグラフで出したとかまえがきに書くくらいだ。
 セッション運営に当たり、確かにモノグラフは公式刊行物であるからそのデータを使用するには説得力がある。一方、リポジトリーは同様のシステムでありながら同人なのでその説得力はない。だが、だからと言ってモノグラフの内容が手放しに称賛出来る質ということは少ない。逆にリポジトリーでも手放しに称賛できる様な素晴らしい作品は存在する。
 何より、ケイオシアムはリポジトリーの契約の中で、著作人格権の譲渡(その様な事はできないが)を記しており、卓越した作品は自社の作品として公式に昇華することを可能にしている。
 結局のところ、自身の勘と嗅覚で良さそうと思ったモノを同人、公式関係なく楽しく遊ぶのが正解であり、自分のセッションくらい好きに着飾るのが良いだろう。


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