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大貴族の庶子に転生したので蓄財と趣味を極めてみた【橘俊綱の話】

藤原頼通(道長の嫡子)の次男、橘俊綱(たちばな の としつな)の話。
『今鏡』掲載のエピソードが元になっています。

【橘俊綱の話1】
【橘俊綱の話2】

俊綱の前世がお坊さんで、転生して生まれ変わったという話は『今鏡』以外の古典にも取り上げられています。
そんな話がまことしやかにささやかれるくらい、俊綱が印象的な存在だったということでしょうか。

『今鏡』は俊綱の境遇に対して、わりと同情的な書き方をしています。
支配者層の頂点にいる頼通の子として生まれたにもかかわらず、俊綱は他家に養子に出されてしまい、大臣や納言になるといった華々しい出世はできませんでした。
一方、同じ両親から生まれた末の弟の師実(もろざね)は、時の巡り合わせで、のちに摂関家を継ぎました。
兄弟なのに格差がありすぎる。かわいそうだと思われたのでしょう。

しかし『今鏡』に描かれる俊綱の姿は非常に生き生きとしたものです。
身分はさほどでなくても、実入りが多く、面倒な宮中のルールに縛られない受領生活は、俊綱の性に合っていたのではないでしょうか。
趣味にも打ち込み、自分の人生を前向きに、楽しんで過ごしていたように思えます。

ちなみにマンガで触れている日本最古の造園書は、『作庭記』というタイトルで、だれが書いたか正確にはわからないのですが、おそらく俊綱が著者であろうと推測されています。
こちらの本、わたしは未読ですが頼通のお邸を修復する際の指揮を著者が取ったという内容の記述があるそうで、もし『作庭記』の著者=俊綱であるなら、家を出されたあとも、父やきょうだいとの仲は良好だったようです。

『今鏡』では俊綱が橘家に養子に出されたのは母の懐妊中だったと書かれています。すみません、そこは読みこぼして作画してしまいました。
俊綱の邸宅を彼の弟(師実)が訪れたエピソードもきちんと描きたいし、師実にまつわる話で面白いものがほかにもあるので、それらもできたら今後マンガ化したいと思っています。

ご参考までに、下に頼通一家の系図を掲げます。
研子や教通、寛子などのエピソードで好きなものがいくつか。あと当然道長も。
全部描けたらいいのですが。


【藤原頼通の系図】

さて改めて、今回の記事の元になった古典は『今鏡』。
いわゆる「四鏡」(大鏡、今鏡、水鏡、増鏡の4つの歴史物語の総称)の2番目に当たる作品です。
取り扱っている時代は平安時代末期、後一条天皇から高倉天皇まで。
個人的には前半の天皇について書かれた部分はいまいちで、そのあとにくる藤原氏について書かれた部分が面白かったです。

だがしかし、『今鏡』全文が読める本は、現在まったくといっていいほど流通していません。
古本も高すぎて手が出ず、わたしはやむなく、図書館から講談社学術文庫の3巻本を借りて読みました。
『今鏡』ブームが来てほしい。講談社さん増刷して…!
図書館本のスキャンデータを手元に置いていますが、やっぱり紙のほうが内容が頭に入りやすいのですよね。アナログネイティブですから。

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