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食べること

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おやつやモーニングなど、食にまつわるお話し。
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それは香り高い紅茶のような。贅沢なことばを味わうひととき。

ガラスのティーポットの中で、ふんわりと紅茶の茶葉がほどけ、ゆらぎながら広がっていくのをながめます。 ポットから注がれる、ほのかに紅を帯びた金色の細い流れがカップを満たしていき、豊かな香りが空気を染めていくのを楽しみつつ椅子に腰をおろせば、お茶の時間のはじまり。 お菓子は、フィナンシェを。 ひとくち食べると焦がしバターの香ばしさが口いっぱいに広がり、アーモンドの風味も共鳴する。 ほっと息をついて紅茶を口にふくめば、やわらかな渋さが、口に残る甘さと油分をさらりと流していくので

珈琲とモーニング。心の洗濯。

"今日は、どのお店のモーニングに行こうかな?" 数年前からコーヒーが大好きになり、時間を見つけては喫茶店やカフェに向かうようになりました。 特に、トーストやサンドイッチとの組み合わせが好きで、朝型の生活をしていることもあり、モーニングの時間帯に訪れることが多いです。 五時に起きて、あれこれと家事をしていると、十時過ぎにはおなかが空いてしまうのですよね。 喫茶店のモーニングに出会ったのは、十代後半の頃。 大分県から大阪府へ引っ越したばかりのある日、母親から、"今日は喫茶店で

おあげさんが無くて、味付け迷子になる夏

「最近、スーパーのお惣菜コーナーで、切干し大根とかひじきの炊いたのをみると、夏樹さんの顔が思い浮かぶんですよね」 以前、職場の同僚の方にそう言われたことがあります。 わたしがつくるお弁当のおかずには、決まって煮物が入っていたから。 切干し大根やひじき、あらめや菜っぱとお野菜を炊き合わせたものが好きで、お休みの日に多めにつくって、お弁当用に小分けして冷凍保存しておきます。(余った分は夜ごはんのおかずにします) 20代前半のころに、煮物をよくつくるという話を同世代の方にしたと

本ではなくても、読むこと、そして想像すること。

ケーキ屋さんでケーキを選ぶとき、プライスカードに添えられた文章を読むのが好きです。 作り手の方の思いやこだわり、素材の美味しさについて書かれているのを読むと、食べる前から楽しい気持ちになります。 自分が食べたことのないものが使われていると、興味をひかれてそのケーキを買ってみたり。 10年くらい前に、母親と母親の友人の方と一緒に神戸に遊びに行ったときに、ケーキが美味しいので有名なカフェに入りました。 「このロールケーキ、フルーツいっぱいでめっちゃかわいいなぁ!」「こっちのイ

お菓子づくり。心の手当て。

なんとなく心がざわざわして、眠れない日があります。 小説でも読もうかなぁ…、と思うのですが長いことばのつらなりが、すんなりと頭の中に入ってこない。 そんなときに決まって手にとるのが、午後さんの「眠れぬ夜はケーキを焼いて」です。 午後さんのイラストやことばにふれると、気持ちがやわらかくほどけていくような感じがします。 お菓子のレシピを参考にするため…というよりは、午後さんの心の動きをなぞりながら、自分の心と向き合うために読むことのほうが多いかもしれません。 過去の悲しかっ

炎天下での転職活動。そしてパン。

もうすぐお彼岸。 それにしては、暑すぎるなぁ…。 真夏並みの日差しの下で、何が悲しくて長袖のスーツなんか着てるんだろう、私。 仕事辞めたからだよね、今から面接やん? そう思いながら歩いていると、時折りスーツ姿のビジネスパーソンとすれ違うことがあり、思わず『同志の方ですね…。』とかけよりたくなりました。 (実際にはかけよっていませんが) 暑さと緊張でぐったり疲れていたのに、面接終了後、面接先の最寄り駅の近くのパン屋さん(前から行ってみたかったけど、普段利用することのない駅の

料理が好きになり始めた…かも。

皆さんは料理するのって好きですか? 私自身は苦手ではないけど、好きってほどでもないかなぁ、、ぐらいの感じだったのですが、最近それがちょっと変わってきたんです。 きっかけは仕事を辞めたこと。転職活動はしていたものの、毎日面接に出掛けるわけでもなく、家に居る時間が増えたんですね。 転職サイトをずうぅっと眺めるのもしんどくて、気分転換に料理本を見る→作ったことの無いものを作ってみたくなる→作ったら美味しかった!…ということを繰り返すうちに、料理の腕が上がりました(たぶん、です

ちょっと悲しくて、でも可笑しかったモーニングの思い出

喫茶店やカフェのモーニングセットが大好きで、毎食モーニングでも良いくらい(わりと本気で)なので、今回はモーニングへの愛を語ろうかなぁ…と文章を考えていたところ、数年前の旅行中に起きた出来事を思い出したので、それについて書いてみます。 岐阜県大垣市を、母と二人で訪れたときのこと。 大垣城など市内を散策し、お昼ごはんはお蕎麦を食べるつもりでいたのですが、お蕎麦屋さんの開店時刻まで少し時間があったので一休みする為に喫茶店に入店。 地元密着のお店といった趣きで、常連さんらしき方

お守りとしての、「おやつ」

このところ出勤するのがしんどい状態が続いていたので、ほんの少しでも明るい気持ちになれる方法は無いかなぁ、と考え続けていました。 そこで思いついたのは、お弁当と一緒におやつを持参すること。 われながら子どもみたい…と苦笑いしつつも、もともと甘いものが好きなこともあり、これが意外と有効だったのです。 ただ、自分の好きなものを何も考えずに、ゆっくりと食べるのはとても幸せを感じる時間。 もちろん仕事自体が辛くなくなるわけではないけど、 今日はあのお菓子が食べられるな、と考えると、

フルーツサンドを好きになったきっかけ

あまいものは好きなのですが、こどもの頃は乳製品が苦手だったこともあり、ショートケーキやバニラアイスやシュークリームなどのミルク感が全面に出ているものは敬遠しがちでした。 フルーツサンドもそのうちのひとつで、近年は専門店ができたり、インスタグラムを通して目にする機会が多くなったりして気になってはいたのですが、でも、自分の好きな味ではないしなぁ(フルーツは好きだけど、生クリームの甘さが苦手)…と思い、口にすることはありませんでした。 ところが、ある年の夏。 職場の同僚から、「

楽しみな休日の朝ごはん

朝、昼、夜ごはんのなかでいちばん好きなのが、朝ごはん。 なんなら毎食朝ごはんでも良いくらいです。 喫茶店のモーニングも好きですが、仕事が休みの日に家で食べる朝ごはんも楽しみ。 仕事の日は時間を気にして忙しない気持ちで食べてしまうのですが、休みの日はゆっくり食べても大丈夫という安心感があって、美味しく食べられるからです。 先日、ふと思い出したのですが、子供の頃に学校が休みの日は、祖母がふだんより少し手の込んだ朝ごはんを用意してくれていました。 なかでも大好きだったのがピザト